えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】にっぽん徒然:私小説 (08/08/2023)

僕は以前から、芸術的創作物(絵画でも彫刻でも音楽でも小説でも、あるいは「物」ではないが、演劇でも)というものの「創作」は、果たして、作者の「主体性」から完全に切り離された、つまり、「経験」に引き摺られない、全くの「自由創作」であり得るのか、ということを考えてきた。

 
初めてこのことを考えたきっかけは、僕の一番好きな小説家のひとりで、高校時代にその作品群を七割方読破した井上靖にある。彼は、「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」という三部作、あるいは「あすなろ物語」、などに代表される作品群によって、「私小説」というジャンルを確立した小説家、ということになっている。三部作における一連の主人公「洪作」のエピソードは、ほぼ、氏本人のエピソードである。

 
では、彼の、「じゃない方の」小説群には、彼自身の経験や、経験からくる価値観や、それらから派生した世界観などは、一切含まれていないのだろうか?小説が「自由な創作物」だとするならば、作者は、全く自由に、どんな世界でも、小説の中で描くことが可能だと言えるのだろうか?この疑問はその後も連綿と、僕の中を流れ続け、さまざまな芸術的創作者に出会うたびに、彼らにこの問いをぶつけてきた。

 
例えば「演劇」では、「ジブンを消して役になり切れる」、つまり、「どんな役でも演じられる」役者は、一般的には評価される。しかしながらそれは、「ジブンを消して」はいるかもしれないが、「役の解釈」はジブン流でしかできないだろうし、「解釈の表現の仕方」もまたジブン流にしかならないだろうし、だとすると、やはり、「ジブンは消えてはいない」ということになるのではないか。僕は人文科学系ではなく社会科学系なので、どうしても、「主客の連環」というものに囚われて、物事を考えてしまう。

 
獅子文六という明治の文士に惹かれたのは、彼の原作の映画化作品を多数観て以降のことである。「ゴールデンウィーク」「とんでもハップン」という言葉を生んだ「自由学校」をはじめ、「信子」「やっさもっさ」「青春怪談」「大番」「バナナ」「箱根山」と、これまでに七本の映画を観た。映画で興味が湧いたので、折好く復刊していた彼の著作を次々と読んでいるところである。読めば読むほど引き込まれていくのだが、小説としてのその「テーマ」とか、登場人物それぞれのイキイキとした「キャラ立ち」とか、奇想天外な「ストーリー」とか、それら全てが全く素晴らしい。よくぞこのような、柔軟な発想と展開と描写ができるものだと、ひたすら驚嘆している。

 
彼の小説はそのように、ユーモア溢れるものがほとんどなのだが、他方で、彼の随筆を読むと、なかなかに頑固で気難しい「明治生まれ」のオトコの顔が覗かれる(例えば、笠智衆は、小津安二郎が「泣き」の演出を求めても、「明治のオトコは泣くことだけはできません」と断り続けた。「明治のオトコ」にはそういう印象がある)。そのような、謂わば「カタブツ」なのにも関わらず、彼は、自身の個性や経験などには囚われず「自由」に、天衣無縫に、そのような「創作」を行えるのか?「無いもの」を生み出せるのか?だとしたら、本物の天才なのでは?

 
ところが、「娘と私」を読んでみて、深く納得するところがあった。これは完全なる私小説であり、小説というよりもむしろ、彼の人生の記録、と言っても良い作品である。彼と彼の娘との関係性をひとつの縦糸に、フランス人の最初の妻が娘を産んで亡くなった後、次に貰った妻との関係性を第二の縦糸に、さらに、娘と継母との関係性とそれをヤキモキしながら見守る彼自身の眼を第三の縦糸にしつつ、戦争という衝撃的事件や、青年から中年、そして老境に差し掛かるそれぞれの世代を象徴する彼自身の出来事、また、文士として次第に認められる過程とそれに伴う葛藤などを横軸に据えた、壮大なる人生譚なのである。そしてありがたいのは、その時その時に、彼が何の作品を著していたのかが記されている点である。評論家が、「作品」の背景を「考察する」というのはよくあるが、本人自らが、「作品」の背景を記す、というのは、案外、稀有なことなのではなかろうか。ただ、「作品」とその背景は、「娘と私」の中では、ひとつの「点景」に過ぎない。「作品解説」は、その主題なのではない。主題はあくまでも、三本の縦糸にある。そこが、また、良い。

 
と、なれば、作品を多数読んでいる僕としては、なるほどと思い当たる節がバンバン出てくる。「悦ちゃん」は、オトコやもめの父親が、悪戦苦闘しながら一人娘を育てる話だが、あれはまさに、彼の人生そのものではないか。しかも、オトコやもめの父親が最後に再婚する相手のキャラは、当時、まさに、同じ状況にあった獅子文六が、相手に求めるキャラであったという。彼は当時、娘を育てることにホトホト参っており、「母親」「妻」という役割を果たせる相手をシンから求めていた。特に「継母継子関係」のこじれがないような、こじれをうまないような、そういう優しい女性を求めていた。また、文士として、食えるか食えないまま終わるか、かなりキワの状況だったらしく、仕事に没頭できる環境にも渇望していた。結局、「ジブン」を持ちすぎる、自立心溢れる女性の方は断り、あまり見目麗しくはないものの優しい気持ちを持っている女性の方を選ぶ。その後の結婚生活では、「再婚」「継母継子」からどうしても生ずる多くの困難に見舞われたものの、それを克服していく過程が、第二の縦糸として、イキイキと描かれるのである。

 
「胡椒息子」に登場する「ばあや」にもモデルがいた。「信子」の登場人物の名前にも、戦前ならではの事情を反映した経緯があった。「海軍随筆」は、彼を破滅に追いやったかもしれない、戦後のパージの原因となった彼の小説「海軍」に関するこぼれ話である。「やっさもっさ」に出て来る、米兵とパンパン、そして産まれる混血児たちの事情も、それを取材した経緯が記されている。彼と娘と妻が、街でバナナが売られているのを発見し、娘は驚喜するが、彼と妻は「バナナ如きに」と冷静に捉える挿話も、戦後のバナナの輸入割当(と、ある種のブーム)を題材にした「バナナ」を彷彿とさせる。妻に先立たれて、一人娘の結婚を気に病んでいる老父が、なんとそこから、自身の再婚に踏み切ることをテーマにした「青春怪談」は、二番目の妻も喪い、娘の結婚が決まった時期の、老境に差し掛かった獅子文六の葛藤そのものだ。

 
そして、一連の小説の中で、ひときわ印象深かった「自由学校」は、戦前はバリバリ働いていたオトコが、戦後に心身を喪失し、腑抜けのようになる話である。獅子文六の小説なので、テーマはなかなか重たいものの、主人公の腑抜けさが実に剽げていて、全く暗くないどころか、おかしみさえ感じられる。しかし、戦争を全く知らない僕には、この主題は、やはり最後のところで、わからないのだ。「事実の推移」について、アタマで理解はできる。しかし、当然ながら、当事者感覚は伴わない。ところが、彼自身の背景と事実と、彼自身の感情を、「娘と私」で知った時、理解は一歩、深まったような気がした。運動とか思想とかではない、単純なる「母国を想う気持ち」や、美談や神話化ではない、しかし厳然たる「戦時下の各種事実」や、戦後の日本人の、「アメリカにおもねる変わり身の早さ」や、そして、戦争などまるでなかったかのように簡単に切り替えている、「アプレたちの姿」などを、一度に、短期間に、浴びることで、アタマが追いつかなくなる状況。自身が体験した訳ではないものの、この世代には色濃く伝わっていただろう、「幕末から明治へ」の社会的変遷と同様に、この時代の大きなウネリは、一方ではノスタルジー、他方では「新たなもの」への反感、という化学反応を起こしたのだろう。そして自家中毒をおこし、虚脱に陥ってしまったのだろう。永井荷風にも通じるこの「気難しさ」は、「明治のオトコ」の特徴であると同時に、一種の「自己防衛反応」なのかもしれない。

 
「自由な創作者」だと思っていた獅子文六は、実は、波瀾万丈の人生の持ち主であり、奇想天外な展開をもつ彼の小説群は、実はそれらを十分に反映させたものであるということがわかった。最初の問いに戻れば、やはり、「主体性から切り離された完全なる創作物」というのは困難であると言えるのかもしれない。ただし、「小説」は「小説」である。モチーフは自身の経験かもしれないが、構成や筆致など、その経験を「料理する腕」が、小説家としての真骨頂である。そう考えると、やはり、獅子文六は、素晴らしい腕をもった料理人だと言える。

 
…以上、ここまで書き終えたら、書き初めは浜松だったのに、もはや沼津に着いてしまった。退屈極まりない静岡が、こんなにも早く済むなんて!(18きっぷで、大阪→東京移動中)

【新】にっぽん徒然:台風回避 (02/06/2023)

学会で広島へ。大阪経由で向かう。

 
えげれすかよ。ダーラムからの帰りかよ。というような、traffic disruption に遭遇したが、原因は「水道管破裂」とかではなく「台風」なので、混乱も激甚である。…いや、激甚であろう、と、東京出発の時に思った。最悪、辿り着けないかも知れぬ。

 
成田から関空は飛行機、新大阪から広島はJTBの企画切符で「こだま」の指定席。早朝の出発時点では、東京は小雨、大阪は警報予告と計画運休予告が乱発されていてもはやカオスっぽい。大阪環状線も止まるかも知れないだと?これは、先ずは、飛行機が飛ぶのかどうか、そして関空に降りられるのかどうか、ここにかかっているな。その先は、関空島を脱出できるかどうか。多分新幹線は強いだろう。

 
成田に着くと、飛行機はどうやら飛ぶらしい。ただ、「成田に引き返す」又は「着陸を福岡に変更」という条件付きフライトだそうな。まあその二つなら良いか。なんなら福岡でも良いぞ(笑)。と、余裕をこく(ちなみにこの「条件付きフライト」の件は、僕が気づいた限りに於いては、空港内と機内の両方を通じて一回しかアナウンスがなかったぞ。怠惰なのか、それともその可能性が限りなく小さいからなのか。いずれにせよ、一回でもアナウンスしたならば、その顛末は報告するべきだと思うがな。やはりオレンジの方は、何かにつけて、紫の方より劣る)。

 
無事に離陸し、無事に関空に着陸した。着陸前に結構turbulence があったものの、まああれくらいは、普段でも起きるレベルである。

 
電波発信の許可と共に、すぐに鉄道の運行情報を見る。和歌山、奈良方面がやられつつある。大阪市内は大丈夫。新幹線もびくともしない。余裕こいて、関空のラウンジで休もうかと思ったけど、南からやられつつあることを考えると、やはりこの島からは早く脱出した方が良いだろう。関空は、橋がやられると全ての可能性が一気に消滅する。とりあえず対岸に渡るか。

 
南海に乗った時に運行情報を見ると、JR阪和線日根野以南がやられたとの報が来た。関空からのJRが分岐するのが日根野である。つまり、ついに、関空の危機も目前ということである。

 
南海難波に到着、運行情報を見る。JRだけでなく、南海も、本線、高野線共に、南がやられたらしい。関空の橋が陥落するのも時間の問題か。しかしワタクシは、差し当たりナンバにいる訳で、ここまで来ればあとはなんとでもなるでしょう。新幹線は不死身だろうし。
僕は余裕をこいて、今朝出る時から、今日の昼飯に決めていた、新大阪近くの店のステーキを楽しむ。久々、ウマー。

 
新大阪のとある拠点で、ちょこっと仕事をする。ちなみに山陽新幹線は微動だにせず、「通常運行」の頼もしい文字が光っている。

 
拠点で話を聞くと、この辺は少し前まで、めちゃくちゃ雨が降ったらしい。僕はここまで、全くの小雨にしか遭っていなかったから、ん?と思ったけど、試しに「運行情報」ではなく「警報」の方を見てみたら…和歌山、奈良はおろか、大阪も、東部南部が真っ赤っか、ところどころは紫になっていた!そして愛知とか静岡とかも凄いことになっていた。そして、運行情報を見たら、東海道線もやられつつあった。豊橋岡崎が14時以降に運休だと?熱海あたりもやられつつあるだと?これ、陸路で来ていたら完全にやられたパターンだ。ちょうど良い具合に空路で「跨いだ」格好だな、これは。

 
仕事を終わらせて、新大阪駅に向かう。久方ぶりに運行情報を見る。すると、あなや!盤石だったはずの新幹線サンが、なんと、「乱れ」になっているではないか。東海道新幹線は止まっているではないか。だがしかし、山陽新幹線サンは「影響はほぼ無し」とある。素晴らしい。

 
僕は、指定席を取ってある「こだま」の発車30分くらい前に新大阪駅に着いた。構内に入ると、自販機前のスペースに、くたびれ果てたように座り込む、修学旅行と思しき集団がいる。あれ?この難民たち、さっき、ステーキ帰りにここ通った時からいたぞ?まだいるの?なんで?

 
進むにつれて、あちらこちらに座り込む難民集団が増えてくる。窓口には「ドルヲタですか」って言うくらいの長蛇の列が出来ていて、僅かにいる「フリーの」駅員さんの前には「握手会ですか」って言うくらいの「質問者列」が出来ている。売買払戻系はドルヲタ、とりあえず教えて系は握手会、という棲み分けらしい。握手会の方が列は短い。

 
しかし僕は落ち着き払っていた。まだ余裕ぶっこいていた。何故ならばワタクシは、「東海道新幹線ではなく山陽新幹線」「東向きではなく西向き」「自由席ではなく指定席」「のぞみではなくこだま」、つまり、この難民たちとは明らかに異なる人間であろう筈だからだ。ただ一つ、ダーラムのことが頭をよぎった。乗れたとしても、席まで辿り着けないほど混んでいたら?しかし、まあ、山陽新幹線のこだまでそれはないでしょう。大丈夫でしょう。僕はひとまず、指定席券売機で「オレのこだま」の混雑状況を確認することにした。オレの席の隣に人がいたら、指定席をやめて自由席に移ろうかな。何号車が空いているかな。…まあこれも、余裕の行動である。

 

 
オレのこだまが…表示されない。
なんだ、それ?どういうことだ?

 
慌てて、初めてJR西の、山陽新幹線専用の運行情報を見る。そこには、混乱をキチンと反映させた、「現時点での発着情報」が載っていた。すると…オレのこだまはそこにも載っていない。ということは、「運休」だ。なんということでしょう。

 
こういう状況では、「通常の切符」が最強であり、「企画切符」は最弱である。例えば18切符とて、何かあった時の振替輸送の対象にはならない。付帯条件があればあるほど、「何か」に対して弱くなる。ワタクシの企画切符は、「何がどうあれ、発駅も着駅も変更できないよ。ちょこっとでもズレたら即無効よ」って強めに書いてある。

 
さてどうするか。「オレは梃子でも動かねえ」系のクレームオヤジになるか?はたまた、「理路整然とコトワリを述べる」系のロジカルヤクザになるか?

 
ここがもしえげれすならば、却って心配はしない。何故ならえげれすでは、こういう場合には、先ず間違いなく、現実的な解決策が取られる筈であり、それは文句が出るシロモノではない筈だからである。「社会」というものの実力が発揮されるのは、まさに極限状態において、である。

 
これが途上国ならば、クレームオヤジの面とロジカルヤクザの面の両方が必要となる。何故なら途上国では、こういう場合には、先ず間違いなく、精魂尽きた方が敗れ去るからである。僕はケニアの空港でそれを痛感した。「ヤカラでいること」は時として、社会的な意味をもつ。

 
パンパンここジャパン©︎レッド吉田。さて、どうなるか。僕はひとまず「握手会」に並んだ。進み方を見ると、10分くらいで順番が回ってきそうである(ドルヲタの方は多分一時間はかかる)。
順番が来たので、企画切符を見せて、とりあえず「どうしたら良いですか?」と聞く。駅員氏は「うーむ」と言うので、「こんな時だし、どれに乗っても良いですかね」と聞くと、「そうですね」と言う。「ちなみにのぞみでもひかりでも?」と言うと、「そうですね」と言う。

 
そうなのか(笑)

 
結局、予定のこだまより早く出発するのぞみに乗り、それは臨時だったのでやたらに空いており、広島には、予定時刻よりも早く着いた。

 
今回のdisruption は、僕は奇跡的に回避できたらしい。

 
今夜の宿は、なぜか「夕食無料」というサービスがある。しかし予定のこだまだと、その提供時間に間に合わない筈だった。のぞみのおかげで、無料夕食にも間に合った。…しかし、ごはんのおかわりにカネを取るって、謎のセコさじゃないか?これだけ小鉢とか付けて、しかも一食一食のサーブはおばちゃんの手作業でやってるのに。セルフにして、ごはん食べ放題の方が、経費減になると思うんだがなあ。

 
しかし、まあ、文句は言うまい。本日は上出来でしょう。

【新】えげれす通信2023_おまけ:過去から現在へ編 (28/02/2023)

最後に、2007年6月27日、ダーラム大聖堂における「Congregation Ceremony」の様子を。

 

その日の宿も、パブの二階だった

 

その日の朝飯も、迫力満点だった

 

その日のダーラム大聖堂も、威風堂々だった

 

卒業生たちがわらわらと集まる

 

わらわらと集まる

 

 

最後は本物のDJ Flat Eric。

・・・ん?本物?・・・いや、やっぱり本物と言っても良いでしょう。DJでレコードをキュッキュとスクラッチしていた奴と一応は同じだから。しかしうちの子どもたちの遊びで、彼は完全なる「悪役」だったらしく、ポケモンたちに毎回コテンパンにされていたらしく、最期は見るも無残な姿に変わり果てていたらしい。これはまだ、彼らがちいちゃい時の、2012年当時の、まだ綺麗な時の姿。撮っておいてよかったw。

 

www.youtube.com

 

 

うむ。なかなかに、いろいろと、感慨深いもんだ。

エリックで気分がグイっとなった。せっかくここまで作ったので、過去作を、多少推敲しながら、上げていこうかなとも思ったりして。別にコメント禁止じゃないので、なんでも書いてください。

 

まだ続くかも、です。

 

 

【新】えげれす通信2023_vol14:シンガポールファイナル編 (27/02/2023)

2023年2月27日(月)。
 
事前に情報を入れることなく、なるべくフラットな気持ちでシンガポールを見てきた。いろいろと感じるところもありつつ、今から出国する。ただいまチャンギ空港。そこで、wikiで改めてシンガポールの項を見てみると、なるほどと思わせられることが多かった。

 
この国の、とかく、人工的な感じ。建物、街並み、交通、どれをとっても、よく言えば、「整っている」「秩序がある」「統制されている」、しかし悪く言えば、「人間味が無い」「無機質」「本音が感じられない」。ミテクレばかり綺麗にしているが、本当なのか?という疑問が浮かんでしまう。人間というものを「程々なもの」に見ているえげれすと比べると、確かに共通点はあるものの、本質的には違うのではないかと思ってしまう。それは、昨日、町外れの原生林みたいなものを見た時に閃いたことであった。
 
「自然」というものは、フランス重農主義が指摘したように、「それ自体としての秩序」をもっている。同時にそれは、人間の生活にとっては、ポジティブなところとネガティブなところの両方を含む、混沌としたものでもある。人間は自らのより良い生活のために、自然の恩恵を享受しつつ、自らの都合に合わせて自然という対象を「制圧」し、「管理下におこう」とする。ただしここまでは、文明社会にとっては、ある程度共通なところである。
 
しかし、シンガポールでは、この種の「管理主義」が極端なように思われる。人間は如何なる対象でも、完璧に「統制」し、「管理」し、「秩序を作り出すことができる」と信じているかの如くである。熱帯の自然は手強いだろうし、そこには、並々ならぬ苦労があったことは想像できる。しかし、そこには、些か、「過信」のようなものが見えてならない。
 
そして彼らの「管理」の対象は、熱帯の手強い自然だけではなく、「国民」にも向かっているのではないか。市民社会の出発点は、人間の合理的思考であり、その秩序の原点は、ホッブズの言う「自然法」やアダムスミスの言う「公平無私なる観察人」である。そしてそれらの思想を産んだえげれすでは、社会の奥深いところで、人間というものに対する、相互の、やわらかな信頼感のようなものがある。人間というヤツは、時として、ダメダメなものだ。時にはヤラカシをするものだ。しかし、最後の最後は、「考えれば、人間なんだから、わかるやろ」という信頼感がある。だから、あれこれ、うるさく言わない。公的空間(社会)に対する直接的迷惑には断固とした処断が下されるが、それ以外については、あーだこーだ、いちいち言わない。言わずとも「秩序」は得られる。内生的に、得られる。いちいち指図されずとも、得られる。少なくとも「得られるもの」とされている。これが、毎度毎度僕が、「えげれすは大人な社会だ」と感嘆するところなのだ。
 
翻って、シンガポールである。有名な、「タバコポイ捨て罰金」以外にも、wikiによると、「痰吐き罰金」「道路横断罰金」「バス地下鉄飲食罰金」、そして、「トイレの水流し忘れ罰金」などというシロモノまであるそうだ(「Have a FINE day」のTシャツがあるらしく、黒いジョークTシャツのコレクターである僕としては、見つけたら絶対買おうと思っていた。しかし、見つからず。ちなみに「fine」 には罰金の意味もある)。また、シンガポールの水道水には、虫歯防止のため、フッ素が添加されているらしい。これは、良く言えば「面倒見が良い」「親切」かもしれないが、実のところは、市民を含めた全てを「管理」しようとしていることなのではないか。「管理しなければ、秩序は生まれない」と考えられているのではないか。そしてこれはつまり、人間というものに対する信頼が無い、ということを意味するのではないか。

 

このあたりまではフツーだけど

 

罰金S$500! 罰金S$1000!! 罰金S$5000!!!

 
こういった、ある種の管理主義は、えげれすを含む欧州では、多分、受け入れられない。というか、こんな体制が、生まれるはずがない。市民革命以来獲得した個人の自由とは、完全に相反する価値観だろう。コロナ禍でのマスクにしても、国や政府から強制されそうになるとあれ程の反発を見せた欧州である。少なくとも、英仏を代表とする欧州の価値観とは整合性がない。
 
シンガポールは、えげれすの子分である。「秩序」を求める方向性をもつのは理解できる。しかしこの方向性は、一体何処からきているのだろうか?何故そこまで「秩序」を追求する?
 
この方向性を実行に移す、という実際的観点からすれば、これはひとえに、シンガポールの政体によると言える。僕も知らなかったことで、Wikiを見て初めて知ったことなのだが、シンガポールは長らく、一党独裁なのだそうだ。例えば、人種間対立に関する言論は統制されているらしい。罰金や鞭打ち刑などの、ある種の強権政治の体制があるからこそ、こうした管理主義は実現するのであろう。逆に言えば、ホンネの部分は、表面上、見えにくいものになるだろう。たとえ、混沌としたホンネの部分が存在していたとしても。
 
しかし、実際的な「方法」という観点ではなく、国家としてのメンタリティのようなもの、この方向性を導く価値観というものは、どのようにして生まれてきたのか。僕はそこが一番気になる。その中で、ひとつ思ったのが、「評価」に対する内容の違いである。
 
西洋における「評価」は、言い換えれば、「プライド」である。これは、「自己に対する自己の評価」である。だから、他者の目は気にせず、自信をもてる自己の形成に気をつかう。個々人がこれを行えば、それらの集合である「社会」にも、自ずと秩序がもたらされるだろう。
 
他方、東洋における「評価」は、言い換えれば、「メンツ」である。これは、「自己に対する他者の評価」である。だから、他者に如何に見られるかを気にして、見られても恥ずかしくない自己の形成に気をつかう。個々人がこれを行えば、やはり、「社会」の秩序がもたらされるだろう。
 
どちらが良い悪い、ということではない。ただ、違う、ということである。
 
公共性の重視、多文化主義と異文化への寛容性、法治主義などは、西洋由来の価値観である。仮に、「それらを兼ね揃えていることが、国家としての品格を意味するのだ」というような前提があるとして、そうした「見た目」を実現することこそが、国家としての絶対命題だとするならば、おそらくシンガポールは、その実現を、「管理」によって行おうとしているのだろう。西洋では、長い歴史と、それなりの背景とがあって、内生的にそれらが育まれてきた。他方、シンガポールには、浅い歴史(近代シンガポールの始まりは東インド会社)と、植民地時代の経験と、その後の多民族国家としての歩みがある。彼らはそれらを、外生的に(つまり徹底した管理主義によって)、意図して作り出そうとしてきたのではないか。そして、表面上は、強烈な秩序がさも実在しているかのように見えるものの、一皮剥けば、東洋の顔も垣間見えるという、なんとも奇妙な状態が生まれているのではないか。僕の浅い経験では、人々の振る舞い、態度、社交、気遣い、などの点で、えげれすのようなオトナ感を感じることはなかった。彼らは流暢に英語を話すものの、行為に滲み出る人間の本質は、良くも悪くも、懐かしい東洋のそれであった。
 
つまり、西洋的な秩序を外生的かつ権力的に「創り出す」ことによって、対外的なメンツを保とうとするというような、東西折衷の、半魚人的状態が生まれているのではないかと思う。そしてその混淆は、植民地主義の、ひとつの置き土産なのかもしれない。
 
現在は、経済的成功によって、華々しい地位を獲得しているシンガポールである。GDPを含む各種指数も世界でトップクラスである。国民はそれなりに満足しているため、「一皮剥けばそこにあるホンネ」のグズグズは、潜在化したままの状態を保てるのかもしれない。しかし、国民統合は、喧伝されるほど完璧なものでもないような気がする。対立、とまではいかないにせよ、薄い壁のようなものがあるとすれば、それは、言論統制によって表面化していないだけかもしれない。
 
また、全人口の4割弱が外国籍の移民労働者であることも、サッカーワールドカップで問題が顕在化したドバイなどの中東各国と同じく、さまざまな問題の存在を予想させる。
 
しかしながら、対外的な「メンツ」という、強烈に東洋的な価値観によって、それらはある意味隠され、実に「シュッとしている」ように見えているだけなのかもしれない。
 
以上は、文献に基づく考察ではなく、短期間の滞在経験における僕の個人的印象である。間違いや誤解はあるかもしれない。しかし、何を見ても、何処に行っても、なんとなく感じる違和感の正体が、ぼんやりわかった気がした。
 
一党独裁による強烈な管理主義は、当然ながら、社会主義と親和性がある。シンガポールは「明るい北朝鮮」とも揶揄されるらしい(Wiki)。シンガポールのマジョリティは中国系住民である。この辺を考えるに、オリンピックの時に、環境破壊でボロボロになった森林を緑に塗ったあの国と、なんとなく似たものを感じる。どちらにも共通しているのは、「臭いものには蓋をする」という「メンツ」である。
 
そんな訳で、シンガポールには、あまり肯定的にはなれなかった。そして、翻って、やはり、えげれす!
 
えげれすはオトナだ。
えげれすは素敵だ。
・・・たとえ水道管が破裂しようとも(まだ言う)。
 
さて、そんなことを思いながら、空港地下のフードコート的なところで最後のメシを食べる。そして6時間強のフライトを経て、戻ってまいりました、ニッポン。

 

空港地下にもやはりフードコート的なところあり

 

最後メシはやはりダックラーメン(もういっこの「ヤムライス」はいまいち)←ヤムライスって何だ?!ヤム芋と米の合わせ技??

 

機内食はまずまず

 
入国審査前の陰性チェックのスタッフさんよー、スマホ画面を遠目で確認するだけで、文字情報とか読まないのね。だったらクイーンマザーもすり抜けられたんじゃないの(呆)
 
税関さんよー、QRコードにしたら、前の有人体制の時より時間かかってるじゃないの(怒)。
 
羽田からの京急、こんな遅い時間なのに超満員って、なんなんだよ(怒)。
 
ブツブツ言いながらも、ニッポンを感じます。
 
そして、明けて、2/28。いつものように職場から夕日を眺め、定食をむさぼる。

 

 

生姜焼き定食、キターーー
米でおかずをガシガシ、キターーー
おまけのカレーも、キターーー


 
これですよ、これ。
ごはんでおかず!
 
日常が戻ってまいりました。
さあ、再びのえげれすは、いつになるのか。
ではでは。

【新】えげれす通信2023_vol13:シンガポールに思う編 (26/02/2023)

シンガポールで丸一日フリー。皆さんがキャーキャー言わはる場所には興味がないのでw、例によってバスで適当に周遊する。意図せず、結果としては、昨日は下町っぽいところ、今日は、キャーキャーエリアと、団地っぽいエリアなど、多様なところを見ることができた。はっきり地図で確かめたわけではないけど、なんとなく、島をざっくり一周しているっぽい。

 

Wifiについて。今回は、特別何も用意せず、基本的に「野良Wifi」をキャッチしてしのいできた。フィジーの場合は、野良どころか、ホテルにさえ、Wifiがないことも多く、通信には苦労した。えげれすの場合には、駅や、スーパー、カフェ、銀行など、野良Wifiを捕まえるのに、さほど苦労はしなかった。ただ、緊急の場合には、それらはすぐに捕まえられるとは限らないので、今回は一度だけ、ドコモの24時間¥980のプランを使った。シンガポールは、えげれすよりは捕まえにくいかなという印象。特にバスに乗るときは、土地鑑がないし、地理も知らないから、自分がどこにいてどこへ向かっているのかが全くわからなかった。Googleマップは必要だろうな。ただ、バスの案内がしっかりしているので、迷うことはないのは、さすが、えげれす親分ゆずりである。

 

シンガポールの民族別人口構成比率は、Wikiによれば、中国系74%、マレー系14%、インド系7.9%であり、複合民族国家である。異民族集団の統合については、フィジーをはじめとして、僕の研究分野の一つでもあるんだけど、シンガポールの事例は、少しだけ、講義で扱ったこともある。世界には数々の、複合民族国家があり、それぞれの背景と、それぞれの方針と、それぞれの政策と、そして、それぞれの実情とがあるわけだが、シンガポールは、「うまくいっている」方に分類されることが多い。

 

わずか数日の滞在では、何も深いところはわからないけど、ローカルバスに乗って、人々の日常の光景を眺めていると、言語に対する興味がわいてきた。そもそもホテルで見たテレビは、結構はっきりと、民族別のチャンネルになっている。中華系のメディアでは、中国語のみだし、インド系もしかり。マンダリン中国語、マレー語、タミル語公用語であり、それらを結びつける英語を含めて、四つが公用語として、平等に扱われているということだが、だからといって、皆が、英語のみを、日常的に使用しているわけではないと感じた。テレビチャンネルには英語のものもあるそうだが(なぜかうちのホテルでは映らず)、英語ではない、それぞれのエスニックチャンネルが独立して存在しているということは、やはり分かちがたい壁のようなものが存在している、ということなのかどうか。

 

バスでは様々な市民の姿を見た。友人、家族、さまざまな組み合わせの乗客がいた。しかし、エスニックグループの横断的な構成(つまり、異民族混合グループ)は、あまり、見なかった気がする。異民族間の婚姻も、あまり見なかった気がする。「国民統合」は、多民族国家の大きな課題だが、その根本は、「同グループでの集住の解消」と「異民族間婚姻の推進」にある。中南米のメスチソのようになれば、もはや「統合」はなされたも同然だろうが、なかなかそこまではいかない現状がある。フィジーにおけるインド系とフィジー系などは、完全に「分断」の状態である。その中で、「うまくいっている」方のシンガポールは、さて、どうなんだ?と興味があったが、数日の滞在では何も言えないにしても、思ったほどには、統合が進んでいるとは言えないなと感じた。

 

特に言語、ね。同民族グループ同士の人々は、いったい何語でしゃべるのか。仕事ではなく、私的な関係性の中で、私的な会話はいかになされるのか。僕はバスの中で、結構、耳をそばだてていた。

 

ここで、英語がチョイスされるならば、少なくても言語に関しては、自言語ではなく英語が、「主要」な位置を占めていると言える。自言語がチョイスされるならば、英語は「外出着」「仕事着」みたいな位置づけだと言える。ちなみにフィジーでは、英語のポジションが「主要」とはいいがたい。

 

これもまた、数日の滞在で、確かなことは言えないのだが、ざっくり見たところ、やはり自言語で話している人が多いかなと思った。特に、マレー系とインド系は、そうだった。一方で、中国系は、自言語で話している人が多い中で、一定程度、英語を使用している人たちも見受けられた。今日は日曜日で、プライベートなおでかけユニットが多かったが、その中には当然、家族で、子ども連れでのユニットもいた。そして親が、ガキンチョに対して、自言語ではなく、英語で、受け答えをしている割合は、中国系のユニットが多かった。子どもに英語を習慣づけさせようとする親の方針というのは、もしかしたら、そのまま、社会的なある種の階層性へとつながっていくのかもしれない。これはやはり面白い問題である。

 

さて、以下は、とりとめなく写真など。

 

ラッフルズホテル

古くてかっこよい建物だなあと車窓から見ていたら、「シンガポールスリング」発祥の、あのホテルだった。慌てて写真を撮る。

 

かっこよろしい建物①

 

かっこよろしい建物②

 

かっこよろしい建物③

 

かっこよろしい建物④

 

親分と似ている道路標識①

 

親分と似ている道路標識②

 

どんどんと開発が進む

 

パーク&ライドの施設かね?

 

例のやつ

マリーナベイサンズ。あべのハルカスみたいなもんでしょ。ハルカスに上りたい人たちのように、ここにも上りたい人たちが列を作っていたけど、軽やかにスルー。

 

そしてセントーサに向かう海岸沿いは、なんというか、大阪の南港のようである。

 

南港も、かつては、建設ラッシュだった時期があったね。

 

南港にも、こういうモール施設がにぎわってた時期があったね。

 

そうか。セントーサ島ってのは南港だったのか!(違) 

単なる島の癖に、入るのに入場料を取るらしい。ケーブルの乗車料金と加えて、往復、S$35(約¥3500)だとさ。アホくさ。こういう人工の客寄せパンダ施設には、ピクリとも、興味がわかないねえ。

 

ドンキって、「ドムドムドンキ」って言うんか。

 

バス乗り換えのターミナル。

 

たぶん、公営住宅

いわゆる「Council Flat(えげれすの公営住宅シンガポールでそう呼ぶかどうかはわからない。これがそうなのかどうかもわからない)」じゃないかと思うんだが。なんとなくの雰囲気と、類似の様式の集合住宅がやたらと見つかり、それぞれ棟番号が書いてあるから、おそらくそうじゃないかと。僕にはこちらの方がよっぽど面白い。シンガポールでは、エスニックグループの統合政策として、公営住宅にわざと異グループの人々を混ぜて住まわせるって聞いたことがあるんだけど、本当にそうなんだろうか。こういう団地にも、マーケットみたいなものや、コミュニティセンターみたいなものがあったので、本当はそのあたりをぶらぶらしてみたかった。それから面白いのは、この「物干し」ね。この写真の建物は低層だけど、もっと高層の建物でも、この、垂直に「グン!」と突き出しているかのような物干しがあって、見ているだけでスリリングだった、干すのも、取り込むのも、なかなか緊張するよねえ。落とす奴、絶対いるよねえ。落としたら、落ちる場所が広範囲すぎるよねえ(笑)。あと、「洗濯物を、人に見えるところには干さない」文化の欧州(えげれす)から来たので、ガンガン干している光景は、なんか、久しぶりで、おかしかった。

 

Motorway

道路標識が、ほぼ、えげれすのものと共通なので、僕にはわかりやすい。そして結構な広さのM道路(高速道路だけど無料)が何本もあった。遠くに都心の高層ビル群を望む。

垣間見える自然。

シンガポールは、良くも悪くも、「人工の街」という気がする。都心部は超近代的に整備され、街路樹が整然と並んでいる。人間が自然をコントロールし、ある意味、「制圧」を試みている土地なんだなあと感じる。しかし、ふと横を見てみると、ガチの自然が存在している。この木々は、決して「植林」したものではなく、自然そのもの。そういう時、ここが「熱帯」だったことを思い出す(暑さを除けば、普段は、それを感じることがない)。きっと、人間の手入れがなくなれば、瞬く間に、こういった熱帯雨林の木々が彼らの植生を取り戻し、ジャングルと化すんだろうねえ。

 

ローカルな商店

オサレな地区だけではなく、こういう、「ローカル色あふれる街並み」や「商店」もある。このツラガマエを見ると、フィジーにも似ているし、親分のえげれすにも、当然似ている。改めて、シンガポールもフィジーも、子分なんだと思う。

 

これらもおそらく、公営住宅

 

ダブルデッカーのバス。

 

漢字漫画

隣に座っていた、中国系のガキンチョが漫画を読んでいたので、こっそり撮る。吹き出しが全部漢字ってw・・・そりゃ、そうか。

 

たぶんフリーマーケット

ホテルの近所のショッピングモールでは、何かをやってた。たぶん、これは、フリーマーケット的なもの?しかし、さっき、久々にヤフーニュース読んだんだけど(ヤフーは欧州では使用不可)、「バスの、運転席のすぐ後ろの席が、運転手の安全のために使用不可になっているが、それは今後も続けるべきなのかどうか」というニュースがあった。・・・海外風を吹かせるわけではなくて、僕はもともとそういう考えだったんだけど(敢えて表明はしなかったが)、はっきり言いたい。「まだそんなこと言ってるのか!」。見なさいよ、この密を。いつまでマスクマスク言ってるの?個人の判断に任せなさいよ、まったく。同調圧力と、個人の埋没が甚だしい日本。その点だけは、まったく肯定できない。

 

フードコート的な

そして、またまた、フードコート的なところにやってきた。シンガポールってフードコート、好きね。ていうか、ショッピングモール、大好きね。日本にもあるから、その感覚はわかるけど、ショッピングモールがある「頻度」が半端ない。どこを歩いてもすぐあるし、必ずそこにはフードコート的なものがあるぞ。これは本当に、旅行者にはありがたい。暖かいものを持ち帰りできるからねえ。

 

韓国系の店

韓国系の店があったので、魚っぽいものを頼む。ちなみにひとつ上のところも、ここも、現金のみで、カードが不可だった。今回の旅行でカードが不可だったのは、この二か所のみ。つまり、えげれすも、シンガポールも、現金はほとんど必要なかった。

 

最後の晩餐。

最後の晩餐。ドラゴンフルーツ、オレンジ。サラダ。昨日に続き、割引シールの刺身。韓国の魚料理は、ごはんがついてきてしまった(おかずだけにしたかった)。何らかの韓国風魚料理だと思って期待したら、ただのサバの焼き魚だった。だが、それが良い。もう一つのフードコートでは、おなじみの「持ち帰り用容器」に、三種類くらいのよくわからない料理が混ざっている。「あれちょうだい。これも」ってやっていくと、日本なら、容器を分けるよね。しかし、親分えげれすも、その子分たち(シンガポールもフィジーも、たぶんケニアも)も、とにかく容器は一つで、そこにごちゃごちゃと強引に入れていく。重なろうが、混ざろうが。

 

よし、旅の最後にもう一度、言っておこう。

 

Never Mind(どれも食べ物だからね)

 

さて、明日は、いよいよ帰国します。何を喰おうかな。もうそればっかりw

【新】えげれす通信2023_pics⑤ (25/02/2023)

おまけの写真です。

 

これはDistrictラインのモケット

 

これはPiccadillyラインのモケット

 

さらば、ヒースロー

 

シンガポール上空①

 

シンガポール上空②

 

トイレの・・・

 

「標的」が、なんだ、これ?ハエ?何かの害虫?

 

チャンギ

 

チャンギ

 

バスの二階から

 

スーパーの魚

 

日本製品も結構ある

 

アメリカで流行ってるらしいハイチュウ

 

カップ麺も充実(上段の紫のトムヤンクンは辛かった!)

 

ワインはちょっと高いね。最低でも¥1500くらい。(S$に100をかけると大体の日本円)

 

そしてオマエは・・・ここにもおるんかいw

 

もしかして、オレらが知らないだけで、世界のスーパーモデルとかが、「Oh!昆布茶!」とか言って騒いでたりするの??

【新】えげれす通信2023_vol12:再びシンガポール編 (25/02/2023)

2/25、現地時間7:50、シンガポールチャンギ空港に到着。

 

ヒースローで、ラスト朝飯(アップルパイと牛乳)を取る。もうね、毎日の買い食いメシには、バリエーションの無さと値段の高さとで、ヒーヒー言わされている訳ですよ。なにせ、選択肢が無い。スーパーに電子レンジでもあれば多少は選択肢も広がるけど、そんな利器は備えていないので、在住者ではなく旅行者には、この「選択肢無し攻撃」が強めにヒットする。

 

ラスト朝飯

 

買い食いメシの条件としては、

・まず安い
・冷たくてもなんとか喰える
・味的になんとか喰える

 

というところ。フルイにかけると、残るのは、

 

・クロワッサンかアップルパイ(ひとつ¥200くらい)
・サンドイッチ(ひとつ¥300円くらい)
パスティ(ひとつ¥400円くらい)

 

もう、この3択が全てである。これで飲み物など買おうものならば、こんな素朴な、もとい、しょーもないセットで、¥600は超えてしまう。

 

しかし、その中で、「牛乳」は、実に優れものである。安い(¥140くらい)。美味い(えげれす牛乳はとても美味い)。持ち運び可能(蓋が閉まる)。下手な飲料買うなら、絶対に、牛乳なのだ。

 

なので、ラスト朝飯に牛乳をチョイスして、えげれすを無事に出国しました。機材は再び、総二階建てのエアバスA380

 

とにかくでかい

 

シンガポール航空のメシは相変わらず美味い。晩飯は、牛肉とキノコの甘辛煮みたいなヤツとごはん。朝飯は、牛肉ヌードル。ごはんがパサパサでも、ヌードルが茹ですぎで歯ごたえ?何それ?!状態でも、パン→サンドイッチ→パスティ、の無限回転地獄からすれば、感動を覚えるレベルである。今回のアテンダントが無愛想で、ちょっとムカついたけど、まずまずのフライトでございました。

 

晩飯

 

朝飯

 

空港でしばらくスマホ充電をしつつ、朝飯を売店で買うことにする。すると、

 

感動の

 

嗚呼、おにぎりだ。
嗚呼、甘くないお茶だ。

 

さすがアジア。そこら辺にある売店に、おにぎりが売っているよ。ひとつ¥250だから日本よりはもちろん高いし、ごはんも硬いけど、えげれすで¥500したのと比べれば、全く問題ない。「チキン昆布」「テリヤキサーモン」という、若干の怪しさを感じる具だけど、全く問題ない。そして甘くないお茶ね。ロンドンで買ったバッタもんの甘いお茶と違って、POKKAだもんねえ。めちゃくちゃ美味いよ。

 

ホテルに向かう。

 

地下鉄のアナウンスはおそらく3カ国語で、英語、中国語、あと、マレー語なのかタミール語なのかわからないやつ。駅に着くたびに最後に必ず言うのが、なんとも耳に残る。

 

バット ハピハピ イグワン プラットホーム

 

みたいなヤツ。この「ハピハピ♪」がやたらに耳につく。

 

ホテルのチェックインは14時かららしいが、もしかしたらアーリーチェックインができるかなと思い、12時頃に行ってみた。フロントには、コメディアン兼俳優の「でんでん」みたいなオヤジがいる。

 

「アーリーチェックインできますかね?」
「ちょっと確認するから待ってね」
(何処ぞに電話)
「ごめんなさいね。まだだそうです。荷物預かりましょうか?」
「お願いします」
「それまで、何処か、セントーサ島でも行ってきなよ」
「うーん、まあとにかく、14時に戻ってきますよ」

 

するとでんでんはニヤリとして、

 

「いや、15時くらいの方が安全かな」

 

ぅおい!
シンガポールはきっちりしてるんじゃなかったのかよ。
アーリーどころか、遅れるってどういうことよ?

 

しかし、まるで予定の無い僕は、こうなれば別に何時でも良い。ただ早くシャワー浴びて横になりたいとは思うけど。

 

でんでんと別れ、ぶらぶらする。…いや、ぶらぶらは暑いので、ロンドンと同じ、「テキトーにバス旅」をする。

 

さすが、えげれすの子分だけあって、バス網のきめ細かさと、その案内の出し方は実に優秀である。ただしロンドンと違って、僕は、シンガポールの地理も、地名や駅名も、全く知らないので、完全に「行き当たりばったり」である。きたヤツに乗る。二階建ての二階前面が空いてるヤツに乗る。これだけである。

僕の乗ったバスは、どうやら、チャンギの方向に向かっているらしい。どんどん、郊外の雰囲気が出てくる。でも、まあ良いか。あてがあるわけでも無いし。終点まで行き、今度は別の系統に乗ると、やっと、中心っぽいところにやってきた。ここが何処なのか、さっぱりわからんけど、降りてみよう。何やらショッピングモール的なものがある。

 

シンガポールってスーパーマーケットがあんまり無いのね。。。そう思っていたら、地下にスーパーがあった。

 

行く時は、シンガポールの物価って高いのね、って思ったけど、えげれす帰りなので、安く感じる。ざっくり、値段の比較は、

 

果物(えげれすが高い)
ビール(えげれすが安い)
ワイン(えげれすが安い)
牛乳(えげれすが安い)
サラダ(えげれすが安い)
飲み物(えげれすが高い)
カップ麺(えげれすが高い)

 

こんなところかな。あと、日本製品がかなり揃っている。

 

さらにぶらぶらすると、フードコート的なところがあった。腹も減っているし、なんか食べるか。

 

行きのシンガポールでは、フードコートでさえ高いと思ったけど、えげれす体験後なので、全く高くないと感じる。しかも美味そうだ。パン→サンドイッチ→パスティの無限地獄から見れば、どれでもいけるでしょう。

 

僕は、海外に行くときには、沢木耕太郎の「深夜特急」を持っていくことが多いんだけど、今回はシンガポールなので、前半の3冊のみを持ってきた。タイだったか、シンガポールだったかで、彼が食べた、「薄く切った生の魚の上に煮えたぎった粥をかけたもの」の描写が印象深く、「絶妙の加熱加減」というくだりがめちゃくちゃ美味そうだなと思っていた。すると、フードコートのひとつの店のメニューに、粥ではなくて麺だけど、なんとなくそれを彷彿とさせるようなものがあるぞ。一杯¥550ほどである。

 

フードコート的な場所

 

むちゃくちゃ美味い

美味い。
泣きそう。
なんともこの絶妙な味わい。

 

感動しながら全部平らげた。スープがとても良い。薄味の中にしっかり旨味があって、とても奥深い。野菜の歯ごたえもちゃんとしている。…そう、texture ね。硬い(生)か、柔らかい(ぐにゃぐにゃ)の、両極のtexture しかない国からやってきたので、アタリマエのことに泣けてくる。

 

さて、ホテルに戻った。時間は15:30過ぎ。でんでんが長めに取った掃除時間を過ぎている。

 

「ただいま」
「おっと、待ってね、今確かめるから」
(慌てて何処ぞに電話)
「クリーニング中だって!」
「いやいやいや」
「五分待って!」
「わかったよ」

 

でんでん、エエ加減にせえよ。

 

例によって、ホテル予約サイトでけちょんけちょんに酷評されている当ホテル。曰く「掃除がなってない」だの、曰く「狭すぎる」だの、曰く「シャワーの水が漏れる」だの、前回と同じだ。

 

確かに掃除は「なってない」。ただしそれは、「行き届いていない」ということではなく、「でんでんの指示系統がなってない」ということである。窓のサンなどには確かに埃は溜まっているけど、このレベルのホテルにそこまで求めるのは酷というものよ。「狭すぎる」?ロンドンの部屋の方が狭かった(メシを並べるところがなく、立食していたw)。「水浸し」は、前のところよりはマシです。でんでんは、僕が出かけたり帰ってきたりする時も、ニヤリとして挨拶してくれるし、悪くないですよ。

 

一休みした後、晩飯を買いに行く。近くにまたまたショッピングモールがあり、またまたフードコート的なものと、スーパーマーケットがある。フードコートで持ち帰りかなと思ったが、スーパーを覗くと、

 

寿司!(しかも割引シール)
刺身!(しかも割引シール)
ローストダック!(しかも割引シール)

 

この三点セットが割引シールとくれば、即決、スーパーから持ち帰りにしよう。

 

スーパーで、

 

・高くない
・すぐ(温めなくても)喰える
・ツマミになる

 

このラインナップは、実は、えげれすよりも少なかった。えげれすにあって、シンガポールに無かったものは、

 

・オリーブやドライドトマトなどイタリア系ツマミ(昨夜のような)
・生ハム
・フムス(homas)やクラブパテなどのディップ類
・鯖の燻製(実はえげれすではこいつは超メジャーで、超良い仕事をする)
・鰊の酢漬け(同上)
・小エビのカクテル
・マッシュドポテト
などなど

 

…あれ?えげれすの勝ちか?
だけど、刺身と寿司(しかも美味そうな)とローストダックの三点盛りの段階で、今日はシンガポールの圧勝ですな。

 

部屋はまあまあ広いが、ブツを並べて喰える体勢の構築が難しかったので、ポジションバラバラに、ウタゲ開始です。

 

刺身

 

いつもの

 

キムチも久しぶり

 

ローストダック

 

おまけ

 

おまけ

 

ビール

 

明日は丸一日、シンガポールを堪能します(ただし、セントーサとか、マリーナベイサンズとか、そういうところは行かない。なので、何処で何を堪能すべきなのか、全くわからない)。

【新】えげれす通信2023_pics④ (24/02/2023)

今日(2/24)は出発の日です。ここまでの写真を。

 

LTM(London Transport Museam)

ここ、ずっと来たかったんだよね。混んでたので中には入らずw、ショップだけを覗く。

 

実に実にシャレてるグッズたち

 

Tubeのモケットシートのグッズ

 

クッション

これ、今回気づいた。Tubeは路線によって、座席のモケットデザインが違うのね。ピカデリーに乗っているときに気が付いた。そしてこのセンスは好きだなあ。路線ごとのデザインのグッズ。くすぐられるわあ。

 

Covent Garden

イライザ(ヘップバーン@マイフェアレディ)が花を売ってたっけなあ。



Charing Cross St

 

チャリクロはあんまりここからは乗ったことがないけど、LSE時代、通学で毎日横を通ってた

 

好きな通りの一つ、Jermyn St

 

個性的でおもしろい店が並ぶ

 

時々行ってたチーズ屋さん

 

前に日本に買って持ち帰ったことがあるけど、カビてた。

 

おみやげで買って帰ったら、かびてたんだけど、チーズってかびるものだよね?大丈夫じゃない?って、とりあえず言ってあげたw(喰って良い奴と、悪い奴があるよな)

 

Burlington Arcade

 

オサレですなあ

 

手袋なのに洒落てる

 

靴磨きなのに洒落てる

 

僕がいたころ、ロイヤルワラント(王室御用達マーク)は4種類、クイーン、クイーンマザー、旦那のフィリップ殿下、息子のチャールズ、だった。体制が変わった今は、どうなってるんだろう?

 

例の場所①

 

例の場所①

 

例の場所①

 

例の場所②

 

例の場所②

 

パブめしを喰いに

 

ステーキパイwithグレービー、マッシュ

ここは美味かった。

 

Twickenham Stadium

バスに乗ってたら、偶然、ラグビーの聖地の横を通った。

 

イングランドワールドカップの時、見に来たんだよなあ

 

良いですねえ

 

Kew Gardensの近くにあるパブ

Botanistなんだ、やっぱり

 

ここからは食べ物コーナー。

 

F&Mにも置いてあった、例の謎飲料

これだけは、ついに、試す気がせなんだ。

 

ハロッズの寿司

・・・って、おい!エノキ載せるなよ!しかもたぶん、生

 

ハロッズの寿司

・・・って、おい!赤かぶ載せるなよ!生なら、なんでもええもん、ちゃうぞ。

 

Full English Breakfast

安定の。

 

朝っぱらから揚げパン



毎朝、種類を変えて飲んでいるやつ。結局「Tomato &Basil」が一番うまかった

 

そして昨夜の「最後の晩餐」

 

最後なので豪勢に

最後なので、豪華に行こうと思い、美味いものをチョイスしたら、必然的に「えげれす色」が消失し、「イタリア色」で染まってしまったw。本当はセルフリッジのデパ地下(1Fだけど)で、大好物の「ザリガニ」を買うつもりだったんだけど、時間がなくて断念。オックスフォードstのM&Sは、一階が服とかあって、地下はどでかいFood Hallになってた。小さいM&Sにはないものも揃ってた。

 

さて、これからチェックアウトし、ヒースローに向かいます。長時間フライトの次は、再びのシンガポール

【新】えげれす通信2023_vol11:乗りかかった舟編 (23/02/2023)

2/23。ロンドン最終日。

 

明日の朝ヒースローに行くのに、定石通りピカデリーラインで行くか、それともバスで行くか、まだ決めかねていて、万が一バスで行く時のための、ルートと乗り換えの下見を兼ねて、ヒースローに行ってみる。

 

と、空港で、ひとり旅の日本人女性に声をかけられた。彼女はトルコ航空で日本に帰ろうとしているのだが、何やら困っているらしい。あまり英語もできないらしい。

 

どうやらワクチン接種をしておらず、陰性証明を出してくれと、トルコ航空のカウンターで言われたそうだ。見るとカウンターには、宮川大助・花子の花子みたいな、ちょっとキツめのおばちゃんが、こちらを見て「うんうん」と頷いている。

 

今回の旅行準備で、僕が、細心の注意を払って、何度も複数のサイトで確認したのが、日本を含めた今回の旅行関連国のコロナ水際対策条件である。まー、それぞれ違うし、めんどくさい。面倒なだけじゃなく、コロコロ変わるから、その情報の日付も確認しなければならない。しかし、これに引っかかると、入国できないし、出国できない。「ターミナル」のトムハンクス状態になってしまう。僕には壁塗りのスキルはないので、空港に閉じ込められては、暮らしていけそうにない。

 

シンガポールはちょい面倒(政府アプリで登録するのだが、そのアプリがあまりにポンコツすぎる)。

 

えげれすは…何も無し(笑)。こういうところが潔いんだよな。この段階までくれば、あとは個々人の判断に委ねる、という徹底さだね。ひとりもマスクしている人なんていないしね。

 

そして日本。日本も実はアプリで手続きするのである。そして、現時点(2023年2月23日)での入国条件は、

 

①ワクチン3回以上接種済
→接種証明があればそれをアプリで登録
②接種無し
→出発前72時間以内のPCR陰性証明必要

 

となっている。ただし、非常に紛らわしいことに、タイトルに太字で、

 

気軽に海外へ!日本帰国時の陰性証明が不要に!

 

とある。細かい文章を読まない人は、「そうか。要らなくなったのか」と思ってしまうよね。

 

彼女は、

 

「要らなくなったって書いてありました」

 

と言うので、僕もその時点では、少しあやふやだったから、花子に尋ねた。ちなみにその時点で、我々の元には、トルコ航空男性おっちゃんスタッフがもうひとり増えていた。彼は大助に似ていて…といけばビンゴなんだけど、ヌーボーとした感じは大助っぽくもあるが、どちらかというと蛭子さんみたいな感じだ。

 

「陰性証明必要なんでしたっけ?」

 

花子は早口でまくし立てる。

 

「そうです!QRコードが要ります!それがないと搭乗できません!」

 

トルコ人はおおむね、オトコもオンナも、顔が濃い。国民全員が平井堅とか阿部寛クラスの彫りの深さである。行けども行けども、搔きわけても掻きわけても、堅と寛が出てくる。いち堅去って、またいち寛。そして、ただでさえ、出だしがイカついのに、トルコ人はおおむね、笑わない。堅と寛が、笑わずに、髭で、四方から迫ってくるのだ。女性だって、うっすら、でさえある。子どもは泣き出すレベルの圧である。

 

そして、イカつくて笑わないのに、加えて、花子の早口である。これは、ただでさえ打ちのめされている彼女の懐を、絶望的にえぐってくる業である。こりゃあんまりだなと思っていたら、蛭子さんが、無類の優しさを出してきた。

 

「残念ですが、このままじゃ搭乗できません。 PCR を受けて陰性反応なら搭乗できます。ただし、PCR センターがいつから開くかはわからないし、反応が出るまでどれくらいかかるかもわかりません。そしてこのカウンターは、あと一時間くらいで閉まります。PCR センターはターミナル3にあります」

 

すごいやん、さすが蛭子さん。
花子と違って、yes/noだけじゃなくて、付随情報を教えてくれてるやん。

 

海外ではいろんなことが起きる。しかし、こういう人がいると、すごくありがたいんだよなあ。僕もかつて、ニュージーランドから出国できない事態になった時、空港のあるスタッフに親身になってもらって救われたもんなあ。

 

おい、花子。
ちょっとは優しくしろや。
ちょっとは髭剃って笑顔でしゃべれや。

 

ちなみにえげれす入国時は何も要求されなかった。念のためそれを言うと、花子は、

 

「でもあなたは必要です!!ないと乗れません!!」

 

キイキイ言うとるなあと思っていると、にこやかな蛭子さんがまたも補足してくれる。

 

「これは国のポリシーです。日本のです。だから必ず必要なんですよー」

 

蛭子さん、なんて優しいんだ。しかし、この段階で、僕も、この「日本のポリシー」を再確認したところだった。確かにそう書いてある。紛らわしいところをきちんと解読すれば、ではあるが。モジヲヨメバ、ではあるが。

 

つまり、これは全面的に、彼女の落ち度ということになる。確かに紛らわしいけれども、きちんと読めば、そう書いてある。出入国マターは、細心の注意を払わねばならないポイントである。ヤラカシは許されない。

 

彼女は、少しばかり、ヤラカシプリンセスなのかもしれない。

 

この時点で、プリンセスのフライト出発の二時間前を切っていた。国際線の常識からすると、残念ながら、この便への搭乗は100%不可能だろうと僕は思っていた。しかし、初の「海外ひとり旅」だというプリンセスは、どうもそこのところが、あまりわかっていないっぽい。時間的にまだなんとかなるかなと考えている風だったので、僕は「介錯」をせざるを得なかった。

 

PCRが必須ということは、この先どうするにせよ、まずはとにかく、PCRを受けましょう。それをクリアしないと、日本に上陸できません。そしてそれには三時間以上かかります」

 

しかしプリンセスは、脇の甘さを見せてくる。

 

「黙って隠していけたりはしませんかね?」

 

甘い。
甘いよ。
えげれすのカップケーキくらい甘いよ!

 

「…いや、日本の国のポリシーだとすると、パスポートと情報が紐づいていて、すり抜けはできないでしょう」

 

決してアタマの弱い子とかではなく、全般的に、好感のもてる子なんだけど、経験の浅さから来るのか、はたまた、もって生まれたキャラから来るのか、恐らくはその両方なんだろうけれども、少しヤラカシ癖があるようだ。

 

ヤラカシクイーン

 

一つ、昇進させてあげよう。

 

乗りかかった舟だ。ほったらかしにもできないし、もう少し助けてあげることにした。

 

ここからの方針は、

 

①まずは必須のPCRを受ける
②結果が出る時間を聞き、トルコ航空のカウンターで再び相談
③ダメな場合には新たに航空券を購入

 

しかし、100%こちらの落ち度なので、会社側には補償する責務は全くない。おそらく②は無理だろう。ということは、あまりにかわいそうだけど、新規でチケットを買う羽目になるだろう。

 

それを告げると、クイーンは、深いショックを受けていた。

 

気を取り直し、ターミナル3のPCRセンターへ向かう。クイーンは自ら入室して行った(「どうしよう」ばかり言って何も行動できないヤツも多い中、クイーンは行動力はあるので、だからこそ助けてあげようかと思う)。

 

1分後、戻って来て曰く、

 

「予約しないとダメみたいなんです」

 

ま、そういうこともあるだろうな。サイトの英語が読めないというので、一緒に進めましょう。

 

最後に「料金」が出る。…あれ?タダじゃないの?

 

£129(¥21414)

 

なんてこった!高すぎるだろ!

 

でも必須だから、やらねばならない。クイーンにしたら、新規チケットと検査代で、ものすごい額が吹っ飛ぶことになる。ヤラカシの代償はエゲツないことになってしまったね。

 

金額を知って、クイーンはさらにまた、落ち込んでしまった。

 

でも、頑張れ。
海外ではいろんなことが起こるのだよ。

 

Things happen 
(ヤラカせばヤラカすほど、傷は深まる)
Never mind 
(そうやってみんな逞しくなるんだ)

 

クイーンの持ってる楽天カードが決済に通らず(日本発行カードはそういうこともある)、他のカードはないというから、僕のカードで立て替えて、とにかくも、検査を終えた。4時間くらいで結果が来るらしい。良かった良かった。

 

待っている間にクイーンは、チケットサイトで航空券探しをしていた。ここで、くよくよ、さめざめと泣いて、何も行動しないタイプだと、僕はここまで肩入れしないんだけど、なかなかポジティブかつアクティブで良いじゃないの。これなら、ここからなんとか、道を切り拓いていけそうかな。

 

僕にとっても本日は、えげれす最終日、大事な日である。この辺で、お別れしましょうかね。

 

…と、クイーンが曰く、

 

「今から4時間後に出発のチケットが安いんですが、取っても良いでしょうか?」

 

いやいやいやいや。
いやいやいやいや。いやいやいやいやー!
駄目ですよ。
万が一、陽性だったら、また紙屑になっちゃいますよ。

 

ここで急いでも仕方ないです。結果を確認してから、購入した方が良いです。こういう時には、人間は、「経済合理性」というやつを働かせて、行為を選択しなければならないのです。多少高いけど、ジャルアナ(JAL ANA)の方が、「何かあった場合(ヤラカシた場合、とも言う)」には安心かもしれませんね。とにかく、一つ一つ、クリアしていきましょう。

 

「わかりました」

 

殊勝な態度で、クイーンが頷く。僕は、えげれすでの連絡先を渡し、「困ったらいつでも連絡してください」と言って、クイーンの幸運を願いながら、ヒースローを後にした。

 

-----------------

 

僕が、Harrodsを冷やかしていると、クイーンからメールが来た。

 

「無事、陰性証明が来ました!そして、無事、ANAのチケットが取れました!本当にありがとうございました!」

 

いやはや、よかったよかった。終わり良ければ全て良し。シェークスピアの言葉を送ろうじゃないか。僕も、だいぶ時間を割いて助けた甲斐がありましたよ。どうか気をつけてお帰りください。このフライトでは、きっと良いことがありますように。

 

-----------------

 

僕が、Harvey Nicholsをぶらついていると、クイーンからメールが来た。ちなみに、HarrodsとHarvey Nicholsは隣である。

 

 

 

 

件名: ヘルプです!
本文要約: 
チケットの名字を間違えてしまいました…。ヘルプデスクに電話したのですが、何を言っているのかわからなくて、切れてしまいます。どうしたら良いでしょうか?

 

 

 

 

ヤラカシクイーンマザー

 

昇進?なのか?わからんけど、おそらくアナタは、そのポジションに相応しい人物なのでしょう。(ちなみに航空券の名前がパスポートの名前と一字でも違うと、もうおしまい)

 

ぜひ、この調子でヤラカシを積み上げて、ロイヤルワラントのコンプリートを目指してください。

 

【新】えげれす通信2023_vol10:思い出の場所写真で一言その3編 (21/02/2023)

前日に引き続き本日もまた、思い出の場所をめぐります。よって、写真ベースです。

 

我が学び舎その2、LSE(London School of Economics and Political Science)

 

LSEはビル群なので、SOASのような「キャンパス」というものがほとんどない

 

ここは昔からえげれすの大学っぽくなく、なんというか、アメリカっぽい。ロゴもスタイリッシュだし、グッズもいけてる。えげれすの大学は、そうあってはならないw

 

昔も、例えば講義教室案内なんかも、モニターで、スマートに行っていた。えげれすの大学は、そうあってはならないw

 

王立裁判所(Royal Courts of Justice)。後ろに中世風のカツラの店が並んでる通りがあるんだけど、見つけられなかった(裁判するとき本当にかぶるらしい)。

 

ここから「CITY」。ロンドン市は独立の行政区だったらしく、王様といえども、市長の許可なくエリアに立ち入ることはできなかったのだとか(たぶん形式的には今でも?)。

 

リヴァプールストリート駅(Liverpool St)

もれなく観光スポットを通過してくれる、知る人ぞ知る路線バスNO11。二階最前部をとるために始発から乗る。

 

ダイアナさんが結婚式を挙げたというStポール大聖堂。

 

ウェストミンスター大聖堂。国教会だと思っていたけど、カトリックの本山らしい。

 

おなじみの。

 

おなじみの。

 

広場にあるトイレに行ったら有料だったので、ナショナルギャラリーに、トイレのためだけに寄りました(笑)

 

中華街、こんなに派手だったっけ?

 

そして、ジャパンセンター(通称:ジャパセン)。外国に住むということは、異なる価値観をいかにして自らに取り込むか、という経験の積み重ねなわけだが、えてして人は、極端になりがちなものである。両極とは、「えげれす最高!(日本なんかダメダメ)」と、「やっぱり日本が世界一(えげれすなんか大嫌い)」ということであり、本来は双方を相対化しなければならないのだが、残念ながら偏ってしまう人も多くいる。これはワタクシの超偏見だが、ジャパセンに来ると、その前者(えげれす肯定、日本否定)のニホンジンに多く出くわす。言ってみれば「気取った、ヤなやつ」が多い。しかし今回は、そういう人は見かけなかった。ていうか、ロンドンに日本人の姿が全然見当たらないんだけど、なんで?観光客も、学生も、さっぱりいないんだけど。あと、ジャパセン、場所変わったよね?クラシファイドコーナー(売ります買います)はなくなったのか??・・・と思ったけど、よく考えたら、もはやネットなんだろうな。売りたい人が商品説明と自分の連絡先を小さく書いて、それをちぎれるようにしておいて、買いたい人がそれをみて、ちぎって持ち帰って、売りたい人に連絡とって交渉する、という原始的なシステム。

 

品ぞろえがものすごいことになってる

 

なんで茅乃舎までおいてるんだよ

 

弁当はありがたいねえ

 

LSEの帰りにサーモン刺身買って帰って、日本酒を飲んだっけなあ。

 

ダーラム時代はロンドンに買い出しにきて、一升瓶三本くらい買って、背負って帰ったっけなあ。

 

今回の初パブ

 

ぬるくて、気が抜けてて、のど越しさわやかじゃなくて、サイコー

 

予想はしていたけど・・・パブの支払いもカードが使えるようになっていた。考えられぬ。

 

リージェントStを北上し、

 

リージェントStのファサードになじむようなデザインのユニクロロゴwを右折すると、そこは、

 

日本人街のBrewer St。しかし、インドにしても、中国にしても、アラブにしても、ジャマイカにしても、移民ってみんな集住するんだけど、日本人ってそれしないよね。「多いエリア」ってのは確かにあるけど。「日本人街」って呼ぶほどのものは、形成されてないのが不思議である。。

 

らいすわいん。入ったらガイジンの店員さんに「いらっしゃいませー」って言われたw 昔、ここの店長と友達で、家に呼んでもらって鍋をご馳走になったのも良い思い出。

 

クルクル寿司!まだあったんだ!この近所にカラオケあったよね。あと古本屋もあった。「地球の歩き方」が僅か£1で投げ売りされていたので、大量に買って日本に運んで売れば、小遣い稼ぎができるなと思ったのは内緒だw

 

「ありがとう」ってここじゃなかったっけ?なくなったのは知ってた。

 

やけにコジャレたお菓子屋さんだなと思ったら・・・

 

すげー。なんだ、この、めっちゃきれいなセンスあふれるお菓子は。

 

きみたちの作るケーキって言ったら、緑とか赤とかの原色系砂糖コーティングの、まったくいけてない奴が定番だったろ。こんなこと、できるようになったのか!・・・いや、でも、えげれすの会社じゃないよね、絶対。

 

Oxford Stからちょっとそれたところにあったフィッシュ&チップス屋

 

洗練されております

 

安定のコッドとハドック

 

まったく違和感の「エリザベスラインのボンドストリート駅」の前でいただきます

 

なんか、油吸い紙とか敷いてるし、箱はオサレだし、とめるシールとか貼ってくれるし。タイムズやガーディアンの、新聞紙のインクの味を食べ比べたかった!

 

セルフリッジ

 

セルフリッジ

 

セルフリッジ

 

セルフリッジ

 

セルフリッジ

 

セルフリッジ

 

セルフリッジにトンコツなるラーメン屋があった。ガイジンおやじがねじり鉢巻きして頑張ってたけど・・・なんかはき違えてない??ここは寿司屋じゃないよ?

 

明日は、買い物関係の店を回る予定。

【新】えげれす通信2023_vol09:思い出の場所写真で一言その2編 (20/02/2023)

本日は遂に、我々の学び舎を攻めることにした。SOASである。

 

僕は一年目、ここ、Russell SQから、生活を始めた。その後、いくつか場所を変えたけど、やはり「揺籃の地」には思い入れがある。

 

というわけで、今回も、写真メインでございます。

 

ラッセルスクエア

 

ラッセルスクエア駅を望む

 

あれ?ここ、wasabiになってる

 

ここって旅行代理店だったような・・・

 

なんていったっけ?あの、緑色っぽいコンビニ(よくピザを買った)

 

ラッセルスクエア駅

 

Brunswickショッピングセンター

 

オサレになったよねえ。昔、この一角のクリーニング屋にシャツをだして、その後引き取りに行ったら店がつぶれていて、店内にはシャツがいっぱいぶらさがっていた。もちろん回収不能

 

ここは変わらないけど

 

一角にはオリエンタルスーパーもできてた(ロンドン市内で増えてる)

 

かつてのSafeway、その後確かSainsbury'sの時代があって、今はWaitrose

 

よく行ってた「ウサギと亀」

 

絶品だった「Roast duck with soup noodle」は今はなく、中途半端な、似非ジャパニーズになっちゃった

 

Renoir Cinemaだったよね?

 

キターーー

 

オレたちの

 

インターナショナルホール!!(一年目に住んだ学生寮

 

こんな板があったの初めて知った

 

隣にピーターパン作者がいたのも知らなかった。こんなブループラーク、あったっけ?

 

やってきました、オレたちのSOAS

 

懐かしい!

 

そしてここが、オレたちのIFCOS(あれ?どっかに移転した?扉、緑だったよね?)

 

SOASのゲート

 

SOASのユニオン

 

ブルネイの王子だか王女だかが留学したのを記念して、王様が小遣いでサクッと建ててプレゼントしてくれたという「ブルネイギャラリー」。オレはトイレはいつもここに行ってたw

 

ロンドン大学のシンボル、セナートハウス

 

SOAS図書館

 

そしてここが、我々が昼休みに蜷局を巻いていた、通称「エデュケーションのパブ」

 

初期、僕を含む三人の「高齢者」(註:所属していたコースは、多くは、学部卒業後の「若い」学生たちが来るところ。しかし我々のように、修士を日本で終えた「高齢者」も何人かいた)が、昼休みにはメシを食うのではなくビールを飲むという習慣を始めた。昼は「何かを喰う」のではなく、毅然と、泰然と、ビールのみを飲む!その後次第に同調者が増加していき、オサレなランチを他のカフェなんかで食べていたワカモノたちも、このオサーン昼飲みの場に加わるようになってきた。そして年度末には結構な大所帯になった。・・・なんだけど・・・

 

なんと!入るのにIDカードが必要という、なんとも世知辛い仕様になってしまっていた!なんだよ、それ。パブの精神(Public House)を忘れたのかよ!大学の精神(皆に開かれている)を忘れたのかよ!先ほどのユニオンもやはり入れなかった。なんか、えげれす、ダメな方にいってないか?それとも時代なのか?

むかつくので、大英博物館の裏口から入って、近道して通り抜けようと思ったら

 

こちらも入れてくれない。

 

仕方ないので正面へ。

 

展示を見るのも良いけど、抜け道として優秀だったのに。

 

というわけで、なんだかえげれすは、「らしくない方向」へ向かっているようだ。

 

明日は、ワタクシの次の大学「LSE」を偵察してきます。こちらはSOASと違い、思い入れはほとんどない(笑)。

【新】えげれす通信2023_vol08:思い出の場所写真で一言その1編 (19/02/2023)

本日は、西部から南部をぐるりと周りました。まだ中心部には行かない予定でしたが、ビッグベンが見えてしまったので、ついに核心部へ足を踏み入れてしまった。ただ、まだ、歩いてないw。あと、大学にはまだ行ってない。というわけで、本日は写真メインで。

 

夜のオサレなPaddington St

 

GWR(Great Western Railways)

 

彼は相変わらずらしい

Victoria Coach Station

 

Waterloo駅

 

かつてのユーロスター発着ホーム

えげれすって、駅とか路線とかをあっさり廃止するじゃないですか。僕は「abandoned tube stations」っていう本を持っているけど、それをみると、びっくりするほど彼方此方に「廃止された駅跡」とか「廃止された路線跡」とかがあるんだよね。LSEの近くにあるストランド駅(オルドウィッチ駅)なんて、当時の駅名板までちゃんと残っているらしい。ジュビリーラインのチャリングクロス駅なんて、僕はまさにそれで通学していたのに、経路変更であっさり廃止になった。そうした「鉄道遺産」がきちんと残されているのは結構なんだけど、その前に、経路変更の予定があるなら、それを見越して作らなきゃ良いんじゃないの?っていつも思う。


ウォータールーだって、将来はユーロスタースコットランド方面に繋げる計画があったわけで、その際、ターミナルが、セントパンクラスに変更になるってわかってた訳でしょ?それならなんで、こんな仰々しい、どデカいターミナルを建設するかなぁ。短距離便がチマチマ発着する設備には勿体なさすぎる(笑)。

 

ふむ

 

定期運用からは引退したらしいけど、やっぱこれだよねえ

 

走行中でも自由に飛び乗り飛び降りができて最高w

 

ちなみに今のバスは後部にも階段があるやつがある!

 

まあ、一応ね。いわゆるモノ①

 

ヴィクトリア時代には、この窓からウンをテムズ川に投げ捨ててたらしい(笑)

 

いわゆるモノ②

 

いわゆるモノ③

 

いわゆるモノ④

 

ナショナルギャラリーは工事中か?

 

シャープも三越もなくなっちまった・・・

 

リージェントStのファサードはいつ見てもきれいだねえ

おいおい、リージェントStに出店するなよw

 

オックスフォードサーカスにやってまいりました

 

セルフリッジは後日改めて訪問予定

 

ところでバス車内には、まずまずでかい犬と・・・

 

えげつなくでかい犬がいた

 

Euston駅

 

Eustonの中

そして、おまけ。

 

アジアのカップ麺はうまいよねえ

 

真打の、えげれすの恐るべきカップ麺「Pot Noodle」は、購入済みなのでそのうち食います

 

世話になったよなあ、錦

 

これは・・・ホンモノでしょうか?!

 

えげれすの牛乳ってうまいよね

 

!!!

 

これ、今のところ、インパクト一位ですわ。昆布茶にラズベリーってどういうことだよ?恐ろしすぎて、さすがに手を出せなかった。。。

 

明日からもたぶん、名所旧跡編になると思われます。

【新】えげれす通信2023_vol07:ロンドン北部バス旅編 (18/02/2023)

ロンドン本格的上陸初日の本日2/18、何から始めようかなぁ。いろいろやりたいこと行きたいところがあるけど、まだまだ先は長い。勿体ない気もする。とりあえず、適当にバスに乗ることにした。

 

ロンドンは、やはり、バスだよねえ。縦横無尽に走りまくるバス網は、実に実に、よくできていて、しかも、地図を含め、「案内」が実にわかりやすい。バス停ってのは、例えば同じ系統でも、「行き」と「帰り」とでは、基本的には車線のトイメンにある。しかし、交差点を曲がる場合はどうなるか?トイメンじゃなくなることもある訳だ。三叉路の場合は?ややこしいよね。そして、えげれすを含めヨーロッパの「道」というやつは、長安以来の「タテタテヨコヨコ」の「直角交差点」に慣れた我々にはさっぱりわからない、

 

気が向いたからここで分岐してみたよ

 

みたいなシロモノである。当然それは、直角ではなく、曲がりに曲がっている。しかもロンドンは鬼のように一方通行が多いので、同じ系統の逆向きバス停がいったいどこにあるのか、まったくのラビリンスになるのである。いわんや、乗り換えようとするバスの停留所、をや。

 

しかし、ロンドンバスさんは、そこを見事に表示してくれる。バス停には、「そのバス停にくる系統番号」が明示され、周辺の関連する系統のバス停が、アルファベットをふられた上で、わかりやすく地図上に示されている。これを見ればサルでもわかるレベルだ。

 

まったく、地下鉄マップといい、この手の仕事は、えげれす、得意だよねえ。地下鉄マップなんて、歴史的に、少しずつ少しずつ、路線と駅が、増えたり減ったりしているのに(駅も路線も結構廃止されている=地下鉄廃駅とかいっぱいある)、その細かい変化を、「地図のテイストを変えずに」、持続的に表しているのは大したもんだ。デザインが変わると、人間の理解度が落ちるでしょう?ナントカいう人が始めた「テイスト」らしいけど(前に博物館で知った)、その「テイスト」を100年だか150年だか以上も変えないってのは、なかなかですよ。

 

さしあたり、パディントンから北に向かうバスに乗る。このテキトーに乗ってもなんとかなる、ってのがロンドンバスの良いところであり(乗り放題だし何処で降りても複数選択肢がある)、だからこそ、かなり面白いのだ。二階の最前部に座れれば文句なし。

 

Edgware Rd。ふむ。アラブやな。
St. John’s Wood。おお、この並木道は?
そして、Kilburn。マジか。

 

St John's Woodの並木道

 

Kilburn駅。ここでよく乗り換えた。

 

ここはかつて、オレが住んでたエリアではないか。この道は、北に向かうA5じゃないか。そして、そういえば、さっきからすれ違う「16」系統は、オレがLSE時代にチャリングクロスに通学していたバスじゃないか。

 

ぎゃあー、懐かしい!

 

そして我がバスは、僕の住んでいたCricklewoodに差し掛かった。なんだか、道が水浸しだけど、家への道は忘れたけど、確かにこの辺、見覚えがあるぞ。

 

ぎゃあー、懐かしい!

 

そしてこのA5は、北上すると、Colindaleを通る。当時、僕は、週に一回、確か水曜日を「Colindaleの日」にしていた。

 

Colindaleに何があるか。僕が留学したのは1998年。その少し前まで、日本のスーパー「ヤオハン」がその地に君臨していたのだ。その後ヤオハンは撤退し、次は多分中国系の店になったのだが、まだ存分に「ヤオハンテイスト」、つまり、「日本テイスト」が残っていた。旭屋書店もあったし、日本酒も買えたし、刺身も売ってた。ピカデリーサーカスの、「ジャパンセンター(通称「ジャパセン」)」の、あのイヤーな雰囲気に塗れることなく、素晴らしき「刺身&日本酒」を入手できるのである(イヤーについては、近日中に多分書くでしょう)。そう、水曜日は僕の「刺身&日本酒」デーだったのである。

 

その時、LSEからどうやってColindaleまで行っていたか。地下鉄のNorthernラインの時もあったけど、バスでも行っていたんだよなあ。すると、だんだんと記憶が蘇ってきた。さっきまでは「16」系統ばかりすれ違っていたけど、今は「32」系統ともすれ違うようになった。そうか。「32」はKilburn始発で、「16」ルートを引き継いで北上して、Colindaleまで行くやつだ。オレは、チャリクロからキルバーンまで戻り、そこで「32」を捕まえて、コリンデールに買い出しに行ってたんだな。

 

僕はコーフンして、「32」に乗り換えた。そして到着。コリンデール。

 

むう。変わり果てている。

 

建物自体が建て替えられているね、これ。

 

ただ、一応、スーパーとフードコートはあるみたい。面影はゼロだけど。というわけで、若干の淋しさを覚えつつ、中に入ってみた。

 

きれいだけど、狭くなったなあ

 

スーパー部門は、かつての広大な迫力は失せ、近代的ではあるものの、面積が小さい。刺身も日本酒も無くなってた。ただ、相変わらずの「Demae Ramen(出前一丁)」の恐ろしき強さと(我々が思う以上に、出前一丁は、海外で活躍している)、今回気づいた、「ハタ鉱泉」のラムネの普及度合いは、なかなかに感動した。ハタは名門だけど、日本ではマイナーでしょう?でも意外と海外で活躍している例は多いんだよね。

 

安定の破壊力。このすさまじいラインナップを見よ。

 

ハタ鉱泉が健闘していた

 

スーパー部門ではアヤシゲな「緑茶」を買った。あまりに甘い飲料しかなく、あとは水しかない。「お茶」が欲しくなるのよ。で、福建省製造の「おーいお茶」ちっくなブツを買って飲む。

 

ぅぉい!甘いじゃねーか。

 

よく見たら、「砂糖入り」「ジャスミン茶風味」「茶は粉です」と、うっすら書いてある。マジか!バッタモンの極みか!

 

さて、フードコートに行ってみる。いわゆる、の、フードコートだな。で、一周してみる。

 

まさに「いわゆる」、のやつ

 

ここまで、えげれすは六日目だ。だんだんと物価がわかってきた。そもそも高いし、昨今はインフレなので、もうね、毎日、大出血なわけですよ。

 

外食だと、酒なしで、一食でだいたい£10-15(¥1600-¥2400)。外食でビールを飲むとだいたい£5(¥800)。店から何らかを買い食いするとだいたい£5-10(¥800-1600)。スーパーで何らかを買うと、サンドイッチが£1.50-4.00(¥240-640)、水の500mlペットボトルは£1.00-1.50(¥160-240)、ちょっとした飲料だと、£2-3(¥320-480)と、めちゃめちゃ高い。そろそろ、食パンにバターという食生活に切り替える頃合いかな。

 

くだんのフードコートも、だいたい何処も、一食、£10-15だな。昼飯に、毎日そんなに出せるのかってことですよ。ただ、逆に、日本がどんだけデフレだったのか、最近いろいろかまびすしいけれども、それを考えざるを得ない。本田圭佑が日本のラーメンのことを「安すぎる」と言ってたけど、あれはやはり正しいのかもしれない。一食¥500ちょいでなんとかなるってのは、ありがたいけど、経済学的には、やはり、いかんよなあ。

 

食う気はなかった。だけど、僕の大好きな「Roast Duck with Soup Noodles」を見つけてしまった。これは、喰わねばならぬ。

 

これよ、これ。

美味い!

 

次はBrent Crossに向かう。どデカいショッピングセンターがバスのインターチェンジになっており、次のバスへ乗り換える。

 

なかなかに壮観だ

 

次のバスはFinsbury Park行き、途中、Hampstead Heathを通る。ここはロンドン北部の丘陵地帯で、見てみたいと前から思っていた。初めて来たけど、ロンドン街区を見下ろす、素敵なところやねえー。すぐ近くにこんなところがあるんやねえ。

 

眼下にロンドンの街衢を見下ろす

 

Finsbury Park到着。ここは、かのアーセナルのスタジアムの近くである。あ、ちなみに、ニューカッスルユナイテッドの本拠地「セントジェームズパーク」も見に行こうと思っていたんだけど、時間がなくて今回はパスでした。さて、この後どうするか。この近所だと、知ってるのはカムデンのマーケット。カムデンでも覗いてみるか。

 

カムデンはねえ、えげれすにやってきたずいぶん初期に散策したところで、いろいろ買った思い出深いところでもある。期待したんだけど、あまりに人が多すぎるし、地下鉄が止まっているらしく、なんだかカオスになってる。そうか、今日は土曜日か。とりあえず今日行くのはやめて、おとなしく帰ることにする。

 

「27」でカムデンからパディントンに帰る。ちなみにこの「27」は、パディントンからヒースローに行くのに、地下鉄ではなくバスで行くとしたら、乗るやつである。

 

カムデンには人が溢れている。そして「27」にも、人がどっと押し寄せる。バスはほぼ満員らしい。僕は二階の前から二番目に座った。と、そこで、バスの電光掲示板を見て、思い出した。そうか、二階は立つの禁止だったよな。

 

二階に立ってる客を確認したらしく「下に降りてください」の表示

 

思うに、運転席には、いくつか、セリフを表示させるボタンかなんかがあって、二階に立ってる奴がいたりすると、運転手がそのボタンをポチッとするんかな。

 

この電光掲示板、当然、我々の頃はなかった。「次のバス停は…」なんてさ、ちゃんちゃらおかしいんだよ。そんなのは、オノレの才覚で、なんとかするもんなんだよ。

 

ただ、こんにち、ロンドンバスは、完璧なまでの手助けをしてくれる。サルでもわかる元々のベースなのに、その上に、ずいぶんなオカワリまでしてくれる。こんなに生温くて良いの?えげれすを生き抜くって、そんなに易しかった?安心しちゃって良いの?

 

そんなことをうつらうつら考えていたら、突然、電光掲示板に異変が生じた。今まで、我々乗客を生暖かく包んでくれていた電光掲示板が、突然、変なことを言い始めた。曰く、

 

「次のバス停は…いや、次はね、…、迂回になるよ(on diversion)」

 

今まで、忠実に、律儀に、ルート通りに、「次のバス停は…」とやってきたのに、突然、トチ狂ってしまった。そして、いったい、何なんだ?

 

あとで調べてみたら、

 

「…緊急破裂した給水本管の修理作業のため、運行ルートが変わり、いくつかのバス停はclosedになります」

 

サクッと破裂

 

いやさ。
いくつかツッコミ入れさせてよ。

 

なんでルートが変わるのよ。ルートを勝手に変えたらいかんやろ。

なんであっさりバス停閉じるのよ。勝手に閉じたらいかんやろ。

 

いや、そこじゃない。

ちがう、ちがう、そ こ じゃなーいー。

 

水道管が破裂するなよ

 

なんで水道管があっさり、破裂するのよ。日常的に起きる出来事じゃないでしょう。あ、でも、そう言えば、Cricklewoodでも道が水浸しだったな。

 

やはりな。
毎日言ってるな。

 

Things happen (水道管だって、破裂することもあるわな)
Never Mind (破裂するときはするし、気にしない)

 

しかし、僕にとっては、いささか問題である。つまり、パディントンからヒースローに向かう際に、乗るかもしれない「27」が関係しており、乗る予定だったバス停は、「水道管破裂」のために「closed」なのだ。代替手段を考えねばならぬ。

 

…オレ、なんか、毎日、何かしらの「代替手段」を考えさせられる状況にいるよね。

 

しかし、それがえげれす。
もう何も起こらないなんて、言えないよ、ぜったいー♪(気に入っちゃった)

 

【新】えげれす通信2023_vol06:オトナ社会えげれす編 (17/02/2023)

朝、僕の部屋のドアがギーっと開いた。なんだと思ったら犬のフローラが、わざわざ三階まで上がってきたらしい。ナニ、オレ、懐かれてる?!

 

もう犬なんて怖いなんて言わないよ絶対~♪(えげれすの犬に限る)


今朝のダーラムは暴風が吹き荒れ、なんだか恐ろしく寒そうだ。昨日も書いたように、えげれすの家はとにかく寒い。そして師匠邸は、「ダーラムの歴史1000年」みたいな本にも登場するくらい歴史的なモノらしい。建築は1843年だとか。

それは良いんだけど(良くないけど)、だから色々と隙間風が入ってきたりする。僕は布団にくるまって過ごしていた。

またドアがノックされたのでフローラかなと思ったら、師匠だった。曰く、「暴風の影響で電車が止まるかもしれない」とのこと。なんてこった。

本日はダーラム1440発ロンドンキンクロ1740着の電車を予約してある。確かに昨日の天気予報では暴風警報的なものがでるかもよ、みたいなことを言っていた。「何かあったら迅速に避難して命を守れ」的なことを言っていた。

…信じるか?
…いや、信じない

ここはえげれすよ?情報は常に疑ってかからねばならない。
 
そう思っていたんだけど、師匠曰く、電車は本当に止まっているらしい。

布団から飛び出し、パソコンで調べてみる。キンクロからダーラムを経てエディンバラへ向かう電車の運行会社はLNER(London North East Railway)という。詳しくは知らないけど、たぶん民営化以降、いわゆる「上下分離方式」になっていて、「上」、つまり、鉄道を運行する会社がそれぞれ決まっているわけだ。同じ区間でも、運行会社が違うということがあるわけだ。ただし、ダーラムからキンクロに行く便はたぶん100%、LNERが運行する。

LNERのHPには、かなり仰々しいアナウンスがあり、

・ヨーク(York)とエディンバラEdinburgh)の間で酷い混乱(Disruption)が見られます
・運休もたくさんあります
・理由は「厳しい気候(severe weather)」です
・架線に問題があるため電車が使用できません

などと載っている。

さあ困ったぞ。しかし、何度も言うように、

Things happen (いろんなことがあるわけよ)
Never mind(そんなもんよ)

なので、冷静に対応策を練る。

やはり問題は、事実確認と見込みの整理なわけだが、何度も言うように、ここはえげれすなので、

「何をどこまで信用するか」

ここが一番大事になる。僕の中で、「信用した奴が負ける国」のトップ3はイタリア、スペイン、ポルトガルであり、えげれすはこれらに比べればかなり負けないで済む国だけど、日本と比べれば雲泥の差がある。できるだけたくさん素材を集め、あとはそれらの信憑性を自ら吟味しなければならない。情報というのは「正しいもの」ではなく、それを基にして「正しさ」を判断するためのひとつの「材料」に過ぎない。情報が不正確でブーブーいう日本人たちよ。えげれすで暮らしてみなさい。「メディアリテラシー」とかを教えるらしい、「情報」科目の教員たちよ、学生たちを一週間、えげれすに放置してみなさい。彼らは一週間後、おそらく非常にたくましく、精悍な顔つきになり、おそらくこう言うだろう。

 

Things happen(いろんなことがあるさ)

Never mind(それが人間)


LNERのサイトで、ダーラム発ロンドンキンクロ行きの「現在の運行情報」があった。着目したのは、「運休」がある一方で、「遅延」もあり、「定時」もあるという点。バラバラということはつまり、便ごとに細かく情報を出しているわけであり、全部一緒にざっくりお知らせ、ということではないらしい。

 

こんな細かい芸当ができるようになったのかい


僕の予約便は「定時」となっている。少なくとも走ってはいるらしい。ということは、少なくともロンドンには辿り着けるということか。ただ、

「やっぱり途中で走るのやめとくわ。みんな一旦降りてね」

などという信じがたいことも、ヨーロッパでは、あまりもあっさりと、呆気なく襲ってくる。僕はかつて、アムステルダムからブリュッセルに向かう時、途中のわけわからん、絶望的な田舎の駅で突然降ろされたことがある。気は抜けない。

さらにサイトを良く見ると、それぞれの便ごとに、現在地と、それぞれの駅の発着時間履歴が示されており、しかもそれが、刻々とアップデートされている。

どうしたえげれす?
いつの間にこんな「できる子」になったんだ?

それによると、僕の予約便は、先程、二つ前の駅バーウィックアポントゥウィードを出たところらしい。ここまで来ると、この情報は「信用して良い」ものだろう。

師匠と別れ、駅に入る。駅にはさらに詳しい情報が、掲示板に示されていた。僕の予約便はこの時点で10分遅れになっていたが、その「遅れ時間」も、細かくアップデートされているらしい。

 

出木杉くん①

 

出木杉くん②

これで大丈夫かな。乗れば、ロンドンには着けるかな。

乗れば、着けるかな。
乗れば、ね。
…いや、乗れない!

入線してきた予約便は通路まで人が立つほど混んでいた。この列車はエディンバラ始発、長距離客ばかりなので、僕も含めて、皆、荷物がでかい。トランク置きも網棚も、完全にパンパンで、皆、床に置いてある。

しかし、日本人の僕の感覚では、ダーラムで乗り込む人の数と、車内の混み具合から判断するに、詰めればまあ、全員乗り込める感じではある。

詰めれば、乗り込める。
詰めれば、ね。
…いや、詰めない!

そうだ、ここはえげれすだった。「他者との物理的距離を必要以上に縮めるのはよろしくないという感覚」が共有されているえげれすだった。(因みにこれこそが「social distance」であって、日本人がコロナで使っているのは「physical distance in society」だろうといつも思う)。

えげれす人にとって、日本の「満員電車」なんてものは、全く信じがたいことである。あんなにベタベタ、他者に触れてしまいそうな状況は、完全にあり得ないことである。だから例えば、通勤ラッシュ時、ピカデリーラインを待っていても、来たやつが混んでいれば、無理矢理乗り込まず、次を待つ。これがえげれすだった。日本じゃ、次を待ったところで事態は何も変わらないから、ゴリゴリ乗り込むわけだが、えげれすの場合は、案外、次のは空いていたりする。人々の「感覚」と鉄道の「実状」とが相俟って、こういう「日常」は成立している。

しかし、今は、「日常」ではない。「酷い混乱」の最中だし、地下鉄ほど頻繁に列車が来る訳ではない。そして何より、もうちょい詰めれば、あるいは、目の前にある程度隙間がある訳だからそこに進んでいきさえすれば、みんな乗り込めそうなんだがなぁ。

…でも、それはやはり、しないんだなぁ。そして、未だホームにいる客たちも、別に殺気だっているわけではなく、やはりアノ顔をしている。オレには聞こえる。彼らは確実に、心の中で呟いている。

Never mind.
(気にしない)

 

…いや、さすがに少しは気にしろよ!
動じなさすぎだろ。
信玄かよ。


僕はデッキにスペースを見つけてギリギリなんとか乗り込めた。僕はこの列車の座席を予約していたので、乗り込みさえすれば、座れる筈だと思っていた。しかし、荷物置場はパンパンで、でかいトランクを転がして席まで辿り着く余裕はない。ここが日本ならギリギリ行けそうな感じだけど、ここはえげれす、ワタクシもえげれす人だし(笑)、そういう無理はしない。ロンドンキンクロまで三時間。デッキで立ちっぱなしかぁ。

 

微妙な隙間


ただ僕も、この段階まで、情報収集を怠ってはいなかった。駅のWiFiで、ロンドンまでの代替手段をあれこれ考えていた。

「酷い混乱」の区間エディンバラーヨークである。つまり、

EdinburghーNewcastleーDurhamーYorkーDoncasterーLondon Kings X

という位置関係になる。

仮に、「酷い混乱区間」で完全運休していた場合、最初に考えたのは、

・バスでニューカッスル
ニューカッスルからカーライル経由でロンドンへ

このルートであった。なんというか、例えば、仙台から福島に行くのに、東北新幹線の仙台福島間が不通なので、一旦山形に行き、そこから山形新幹線に乗る、みたいなイメージ。

そしてこの逆パターンは、前回ダーラムに来た、ワタクシの「ちゃんちゃんこ祝い(congregation)」の時、ロンドンからダーラムに行く際にキワキワで選択したルートでもある。この時は、ヨークあたりで「洪水(flood)」があり、鉄道が完全運休していた。僕は翌日にちゃんちゃんこを着なければならなかったので、なんとしても、ロンドンからダーラムにたどり着かねばならなかった。キンクロで完全運休を知った僕は、咄嗟の機転で隣のロンドンユーストン駅まで移り、そこからマンチェスター経由でカーライルまで行き、無事にダーラムに到着したのであった。

さて、今は、さしあたり列車に乗ることはできた。あとはこの「三時間立ちっぱなし」をどうするか、である。僕の考えた代替手段は以下。

①ヨークで降りて、リーズ経由でマンチェスターに向かい、そこからロンドンユーストンへ。
ドンカスターで降りて、スコットランドではない別方面から来るLNERに乗り換える

 

代替ルート

 

①は、大阪から東京に在来線で帰る時、東海道線が「酷い混乱」なので、名古屋で中央本線に乗り換えて塩尻経由で帰る、みたいな感じ。東京駅ではなく新宿駅に着く、みたいなイメージ。

②は小山から上野に帰る時、宇都宮から来る電車が「酷い混乱」なので、大宮で一旦降りて、高崎から来る電車に乗り換える、みたいなイメージ。

上下分離方式」のため、通常、僕のチケットでは、LNERの運行便にしか乗れない。ただ今回は「酷い混乱」のため、日本でいう「振替輸送」をやっているとLNERのHPに出てた。僕のチケットでも他会社運行便にタダで乗れる、ということらしい。ただ、全ての他会社、という訳でもないらしい。

①は、マンチェスターまでは、その振替輸送で行けそうだが、その後のロンドンユーストンまでの便は、振替輸送の他会社便を捕まえられかどうか、若干のリスクがあるっぽい。

他方、②は、安全である。ハル方面から来るLNER便がドンカスターで合流するので、それに乗れば良い。「酷い混乱」はスコットランド方面からの便なので、ハルからのやつはいつものように空いている筈だ。

以上の情報収集と推測を、僕は、満員のデッキで行った。LNERのWiFiは、使用者が多すぎて速度が低下していたので、急遽、docomoの海外パケットパックを契約して乗り切った。

満員のデッキだが、顔ぶれが安定してくると、そこには奇妙な連帯感が醸成されてきた。皆が等しくこの困難な状況を理解し、共有し、享受しなければならない。利己的態度は、最も慎まねばならない。

例えばトイレに行くおばちゃんがきた。すると、皆それぞれが、身体を寄せ、床のトランクを動かしてスペースを作る。自分が立つ場所とトランクを置く場所とスペース。色々な形と大きさの荷物たち。必ずしも自分の所有物でなくとも、「管理」に適したポジションにいる人間が、その対象物を的確に動かし、周囲の人間も手助けする。何度か繰り返すうちに、なんとなくの「最適解」が生まれてきたようだ。

何度目かのタスクを終えた時、僕の前のおっちゃんがボソッとつぶやいたので、僕もボソッと返事をした。

「チームワークですな」
「パズルみたいなもので」

決して殺気立たず、歪まず、穏やかで、社交性を絶やさない。まさに「社会の成熟」を感じる。えげれすのこういうところが素晴らしく大好きだ!

車内アナウンスが、

「次はドンカスターです。後続のLNERサービスがすぐ来ています。ただしそれはスコットランドからの便なので、(もうほんまにどんぐらいっちゅうくらい)めちゃくちゃ混んでます。ただ、ハル方面からの便もあるので、乗り換えの方はどうぞ」

と、言った。「めちゃくちゃ混んでいる(extremely busy )」と言った時、我々の「デッキチーム」はみんな一斉に笑った。笑いはさらなる連帯感を強める。下車支度をする僕に、皆、

「降りるんですか?」
「気をつけて!」
「幸運を」

笑顔で見送ってくれたとさ。

戻って参りました、ロンドン!本日から一週間、パディントン駅近くの宿に泊まります。

いやあ、部屋、狭いなあ。これなら最初の、アールズコートの宿の方が良かったなあ。シンガポールの宿より狭いじゃねぇか。

残るは晩飯をどうするか。パディントン駅の中に、スーパーの「セインズベリー」と「マークス&スペンサー」があるので、そこで適当に買うか。…と思ったら、駅の中に異様な店を見つけた。

WASABI

おお。そういや何か知ってるぞ。僕が留学から帰国するあたりにできた店なんじゃなかったっけ?

「異様」というのは、ここには「bento」つまり「弁当」が並んでいるからである。この愛すべき日本の食文化のありがたさは、海外ではしみじみ感じるものである。主菜と副菜が一体化した、持ち運び可能な形態は、異国、特にヨーロッパではまず無い(アジアにはある)。えげれすで「買い食い」をしようとすれば、パンを買い、サラダを買い、副菜を買い、というふうに、個々別々に揃えなければならない。しかも副菜はせいぜい、ハム、ベーコン、チーズ、パテ、の類しかない。面倒だから、結局、パスティとかサンドウィッチとかになってしまう。バリエーションが無さすぎて、すぐに飽きる。

WASABIのbentoは、さすがに種類が豊富だった。ごはんか焼きそば。チキンカツに、酢豚に、コリアンバーベキュー。値段も£7-8(¥1100-1300)と、許容範囲である(因みに前夜の、師匠と行ったトルコ料理は、二人で約¥16000)。えげれすは、元より物価は高く、今はインフレでさらにエゲツなく、外食はそうそうできないのだ。なので、この弁当は、これか一週間、世話になるかもしれない。

買ったのは「チキンカツ焼きそば」。組み合わせには疑問が残るが、味はまずまず。

 

えげれすで何故かカツが流行ってると聞いたことがあるが、本当らしい


さて明日からは、ロンドン散策に勤しみます。


【新】えげれす通信2023_pics③ (16/02/2023)

トーストラックって最適土産だと思う(toast rack as a good souvenir)

 

学生生協(Student Union)

 

卒業式もここでやる(Congregation is held here)

 

有料?だけど寄付だって(You make us pay?! But it's donation)

 

懐かしい店たち(nostalgic shops)

 

英語版ハードカバー。コンプしたい!(Wow!)

 

シュウもびっくり(This is SHU)

 

ここのフィッシュ&チップスが絶品(Good Fish&Chips restaurant)

 

マーケットの魚屋(fish shop in market)

 

怪しげな蒟蒻(curious product)

 

北海道のゼリーを吸う(strange product!)

 

ルバーブだ!(This is Rhubarb!)

 

バスステーションが建築中(new bus station is under construction)

 

ロンドン以外のバスは赤くない(regional buses not red)

 

最高の集落名。仏語由来の当て字だそうな(Pity Me?!)

 

ニューカッスルのモニュメント(Monument in New Castle Upon Tyne)

 

1906年建造のcentral arcade(Central Arcade built in 1906)

 

これが絶品の肴なのです(my favorite)

 

自動改札できちゃったよ(gates have been installed)

 

あっさりキャンセルするのは変わらず(Don't cancel train too easily)

 

日立が作ったらしい(made by HITACHI)

 

ダーラム大学の本部(University's HQ)

バケットサンドイッチがうまい店は健在だった(my favorite sandwich bought here)

 

最後の夜は師匠にトルコ料理をご馳走する(last dinner with my supervisor)