えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】にっぽん徒然:貉にキュン (28/02/2024)

一昨日、2/26に、えげれすの長旅を終え、帰国。昨日は、雑務を片付ける。そして、本日、JR東日本が今年発売した「キュンパス」なる凄いフリー切符を使って、サクッと日本の旅に出る。日本の食を取り戻す旅に出る。

 

2月から3月の平日に限り、¥10000円で、乗り放題。新幹線自由席も乗り放題。在来線特急自由席も乗り放題。新幹線を含む特急の指定席も2回乗れる。さらに旧国鉄の三セクや、三陸鉄道なんかも乗り放題、という、まことに太っ腹な、恐ろしい切符が売り出された。「平日のみ」というのが良いじゃないの。この時期、平日は超閑散期のはずで、JRさんも、そこに目を付けた企画であろうと推察する。そして、平日の真昼間から、堂々と旅に出られるヤツなんて、世の中そんなに、いないに違いない。ニッポンを、ゆるりと、堪能するぜい♪

 

本日の予定は、「東京(上越新幹線)新潟(白新・羽越)秋田(奥羽)青森(青い森)八戸(東北新幹線)東京」、というもの。ポイントは、「在来線特急」と「旧国鉄」である。

 

ワイド周遊券が潰えてしまった現在、僕が旅に使うのは、基本的に「18きっぷ」である。通常料金で鉄道の長距離移動をすることはほとんどない。特急など、とてもとても、乗れませぬ。ましていわんや、新幹線、をや。しかし、かつてのワイド周遊券があった時代には、全国の特急に乗りまくり、あちらこちらに行きまくっていた。ワイド周遊券では、区間までの往復と、区間内移動に、特急自由席が使えた。現在では、多くの在来線特急がなくなってしまったが、新幹線が走っていない、しかしながら幹線区間には、未だ、在来線特急が健在である。羽越本線奥羽本線なんかは、その一例である。大昔に乗った、そしてそれ以来、恐らく30年以上乗っていない、これらの「特急」に、久しぶりに、乗りたい。

 

また、新幹線が開通し、多くの区間が三セクになってしまった。三セク区間は、「18きっぷ」では乗れないし、運賃も高い。東北本線の盛岡以北、特に、青森県区間は、仙台在住当時でも、仙台からは鬼のように遠いため、数回しか乗ったことがない。これまた恐らく35年くらいは乗っていない。これにも、久しぶりに、乗りたい。

 

「本日の予定」は、国鉄時代に培った僕の「肌感覚」では、日帰りなんぞ、到底不可能な行程である。しかし、上越新幹線と、東北新幹線の全通によって、なんと、オソロシイことに、日帰りが可能なのである。「はやぶさ」恐るべし。700km超を新幹線が貫く、ってのは、凄いことだな。

 

そんなわけで、東京駅6:08発「とき301号」(自由席)にて出発、新潟を目指す。

 

出発

 

2月の、平日のあさイチ新幹線、そんなもん、誰も乗らんやろ、と思っていたら、まあ、乗るわ乗るわ、一時はほぼ満席になったぞ。大宮でどっと乗る。しかし、高崎でまあまあ降りる。これは通勤ってことかね?そして越後湯沢でどっと降りる。こちらはスキーとボーダーの若者たちである。あとの残りは、新潟までの出張組と、そして・・・、恐らくは「同士」っぽい。服装を見ても、どう見ても、「働くおじさん」の姿ではない。あれ、しかし、長岡から結構乗ってきたぞ。再び、ほぼ、満員になった。長岡から新潟まで新幹線に乗るって、どういうこと?通勤客ってこと??

 

とき

 

E7系新幹線は、乗るのは初めてだな。内部の造りは、なかなか落ち着いているな。なんと、ウォッシュレットだぞ!(今頃気づく)そして、現代では当たり前なんだろうけど、コンセントと、WIFIが使えるのが良いねえ。旅人にとって、「この二つが必須」というのは、えげれすでも、マレーシアでも、しみじみ痛感した。首都圏の鉄道のWIFIサービスは、東京オリンピックのために各社が整備したけど、維持費が採算に見合わず、多くが廃止になっているという。あれ、外国人旅行者は大変だよなあと、「海外目線」で日本を眺める。しかし、天下の新幹線は、さすがに完備している。

 

なかなか落ち着いた佇まい

 

左には富士山

8:10新潟着。8:22発「いなほ1号」(指定席)に乗り換える。

 

ピンクかい

 

「とき→いなほ」の乗り換えは、一種の「黄金パターン」なんだろうな。新幹線車内でも、降車ホームでも、乗換案内が繰り返される。東京から下越地方へ向かうダイヤの始発なので、それなりに需要があるんだろう。しかし、本日は、やはり超閑散期のためか、「本来の需要」に当てはまる「ビジネス客」は、殆ど見当たらない。乗り換え客のほとんどは、見る限り、「我が同好の士」ばかりと思われる。「働かないおじさん」たちである。朝の通勤ラッシュの新潟駅構内は、「正常のニオイ」を放っている、健全なる、真面目に労働に勤しんでいる、「通勤通学客」でごった返している。その中を、「独特のニオイ」を纏っている、全く謎の、平日朝から何処で何をしてんねんという、「同好の士」、言い換えれば、「同じ穴の狢たち」が、彼らの人流を横切り、「いなほ1号」のホームへと、急いでいる。

 

車内は、ムジナたちで、まあまあの混み具合、自由席指定席共に、乗車率は45%くらいかな。この特急は秋田行で、秋田までは3時間35分かかる。ビジネス客がいるのであれば、彼らは様々な駅で、ぱらぱらと下車するに違いない。客の入れ替えも、まずまず、あるに違いない。しかし、残念、そこはムジナ、である。彼らが降りるのは、ほぼ間違いなく、「他路線との接続駅」になる。それ自体が観光地である駅も可能性はあるが、この先、そういう雰囲気の駅はほぼない。ということは、新発田信越線)、坂町(米坂線)、余目(陸羽西線)、羽後本荘由利高原鉄道)、くらいしかない。あとは、観光地ではある酒田くらいか。・・・これ、「全員が秋田」パターンじゃないか。「全員が終着駅まで乗り通す」パターンじゃないのか。密度、濃すぎw

 

まあまあ混んでいる

 

新潟、というか、長岡以西の「日本海縦貫線北陸線信越線)」は、大阪の帰りに寄り道したりして、何度も通ってはいる。しかし、新潟以東の「日本海縦貫線(白新・羽越線)」は、とにかく久しぶりである。思えば、大学入学で、仙台から大阪へ乗り込んだあの時も、仙台からわざわざ青森まで行き、そこから、当時の日本最長昼行特急「白鳥(青森~大阪)」に乗って、大阪まで行ったんだった。大阪時代も、寝台特急日本海」で函館に行ったりしたもんだった。「日本海縦貫線」は、関東地区からは、なかなか行きにくい。しかし大阪だと、馴染みがあるし、乗りやすい。北前船は江戸は関係ないしね。

 

新潟セット

 

村上のデッドセクションを越えて交流区間に入ると、間もなく、日本海が見える。村上も一度は呑みたい街なんだよなあ。三面川は鮭の遡上の南限で、町は「鮭」で栄えている。鮭料理を出す店が多い。そういえば、えげれすで泊まったインヴァネスも「鮭の町」だったなあ。羽越線は、ここから暫くは、日本海沿いを進む。それを見たいがために、海側の指定席を取ってある。

 

笹川流れ」のあたり

 

そういえば羽越線というのは、単線区間と複線区間とが入り混じり、ダイヤを組む「スジ屋」泣かせだということだけど、それは今でもそうなのかな。三面川の話も、羽越線の話も、「大事なことは、すべて、宮脇俊三から学んだ」ワタクシであるが、それは僕が中学生の時のこと。現代では、その時ほど、在来線特急は走っていないし、急行は全廃だから、退避や追い抜きは、さほど必要ない。とはいえ、単副混在は相変わらずなのかな。海側は進行方向左側であるため、右側の状況は確認できない。

 

通路を挟んだ席にいた、明らかにムジナーと思しきおっちゃんが、府屋、なる小駅で下車した。彼は完全にムジナーだと思ったんだけどな。地元なのかな。

 

改めて見回すと、ムジナーたちの属性は、僕と同じ、オサーン系が多い。同じ「乗り放題」でも、「18キッパー」と大きく違うのは、昨今の「18キッパー」を構成する若い学生諸君の姿が皆無だということである。近年では、「18キッパー」の裾野が広がり、昔は考えられなかった、若いネエチャンや、爺さん婆さんなんかも増えてきている。しかし、ネエチャンたちは、テーマパークに行くとかライブに行くとか、何らかの「目的」のための移動っぽい。爺さん婆さんたちもまた、山登りかなんかの「目的」のための移動が多い印象である。しかるに「キュンパサー系ムジナ」たちは、ほぼ、オサーンである。そして、「目的」は、「タダ、ノルコト、のみ」っぽい。要は、「乗り放題切符ユーザー」本来の、生まれたままの、姿ということである。

 

まあ、考えてみれば、平日の真昼間に、ぼやっと日本海を眺めている、眺めに来る、みたいなことは、勤勉なる学生諸君たちには出来ないわな。学校あるよな。しかしながら、オサーンたちだって、仕事があるはずだよな。リタイヤしている年齢には見えないから、社会の中堅を占め、経済の根幹を担う人たちであるはずだ。・・・なんで?なんで働いていないの?なんで可能なの?何やってるの?

 

・・・いや、人のことは言えない(笑)

 

「ジジババ」「団体」の構成比が多ければ、確実に下車する人が多いであろう「あつみ温泉」駅でも、我が「特急ムジナ1号」の乗客は、ピクリともしない。全く動じない。空気は全く入れ替わらない。

 

秋田到着。結局、車内の空気の入れ替えはほぼ、なかった。さあ、ここからの展開や如何に、である。

 

選択肢はいくつかある。①秋田新幹線に乗る。②奥羽本線で南下する。③奥羽本線で北上する。④男鹿線に乗る。⑤秋田観光をする。さあ、オマエら、どこへ行く?僕は、③秋田12:40発、奥羽本線の特急「つがる3号」(自由席)で青森へ行く。できればゆったり、2月の超閑散期の旅をゆったりと、楽しみたい。乗り換え時間を利用して、駅そばを喰い、次で呑む酒と摘みを仕入れ、土産を物色したい。

 

しかし、「いなほ」を降りようとするムジナーたちの会話からは、

 

「・・・いなほに乗れただけでよかった」
「つがるはどこだ?」
「次は2時間ちょいか」

 

という台詞が漏れ出てくる。僕は嫌な予感がした。

 

到着ホームのちょうど横に、「つがる3号」が停車していた。しかも、発車までまだずいぶんあるのに、ドアは開いていた。「いなほ1号」の到着と同時に、ダッシュして「つがる3号」の自由席車に乗り込み、席取りをしなければならない。僕はそれを考えていた。しかし、雰囲気からして、ムジナーたちの思考回路は、互いに酷似しているらしい。オレが考えていることを、ヤツらは同じく、やってくるらしい。コイツら、完全に、③だろ。①とかないだろ。⑤もあり得ないだろ。「いなほ」に乗りたい、それが目的ってことは、次は確実に「つがる」だろ。やはりヤツらは、「在来線特急に乗りたい」だけだろ。つまり、ワタクシと同じなのだ。

 

つがる

 

同じ行動パターンをとる人たち

 

「つがる」の席を無事に取り、トイレに行き、いったん改札を出る。次に目指すは駅そばだ。しかし!そこには、驚愕の光景が広がっていた。駅そばで、たかが駅そばで、凄い行列ができている!食券を渡して番号札を貰う。番号が呼ばれたら、蕎麦を受け取る。これは「通常」のオペレーションである。しかし、目の前では、「食券を渡す」ための、列の整理がなされていた。つまり、ある種の入場制限である。地元のサラリーマンたちは、「一体、何事だ?!」と驚き、途方に暮れている。そら、そうだよな。こんな非日常の光景、吃驚するわな。「リーマンショック」だわな。

 

この背後に、驚愕の人数が待機している

 

見渡すと、そこを占拠しているのは、やはりムジナーどもである。考えることが、完全に同じなんだよな。全く、イヤになるわ(オマエモナー)。

 

「蕎麦」「つゆ」「葱」は良かった。「かき揚げ」はイマイチ。

 

店主のおっちゃんは、やたらテキパキと、ムジナーたちを捌いていく。小気味の良いこと、甚だし。恐らく、平日の毎日、この「いなほ1号到着時間」に、同じことが展開されているのだろう。キュンパスの使用開始間もない頃は、このおっちゃんも、右往左往したに違いない。しかし、使用開始から既に二週間弱が経ち、毎日毎日、「ムジナ処理」に明け暮れた挙句、恐ろしく合理的な「ムジナシステム」が確立されたに違いない。

 

これ、秋田の佐竹知事の、「例のヤツ」からの、タナボタ的展開だよなw

www.sankei.com

 

僕は、ムジナーの中では、比較的遅い方の入店だった。最速集団は、ダッシュで喰いに来ていたらしい。僕が喰い終わるころには、「入場制限」は自動的に解かれていた。しかし、これって、

 

・・・イナゴ

 

じゃないのか。大群で襲ってきて食い物を喰いつくし、終われば次の現場に羽ばたいていく。蝗じゃないか。

 

僕の「プラン」は、次は、駅ビルの土産屋で、酒と摘み、そして土産を買うことである。駅ビルの店を覗くと、果たして・・・いた。イナゴたちが、いた。そして、漁っているものは、やはり、酒と摘みであった。

 

いや、もう、うんざりよ。
なんなん、これ。同じ思考パターンのヤツ、ばっかりなんだよ(モナー)。

 

「つがる」の先頭で写真を撮る(イナゴのほぼ全員)。駅スタンプを押すのに順番待ち(イナゴの過半数くらい)。そして、イナゴの中にも、「最速プロイナゴ」もいれば、「出遅れ初級イナゴ」も、混在していることがわかってくる(言うまでもなく、僕は、プロイナゴである)。「初級イナゴ」たちは、「列車の入線時刻に細心の注意を払う」「先に席取りをしてから他の行動をする」という鉄則を知らないヤツが多いらしい。発車まで40分以上もあるので、蕎麦を喰い、土産を仕留め、スタンプを押し、写メを撮って、そのあとで悠々と「つがる」にやってきたと思しき「初級イナゴ」たちが大勢いる。彼らは、自由席の、あまりの混雑ぶりに、呆然としている。発車10分前には、自由席車の窓際座席はすべて埋まっていたのである。乗車率は、自由席車で、70%くらいか。

 

混みまくり

 

「つがる」が発車してすぐに、車掌の検札があった。そして、やはりヤツらは、ムジナーだったことが判明した。車掌は客のひとりひとりに行先を聞いている。客の99%が「キュンパス持ち」で、80%が「青森まで」行くと答えている。観光するヤツなど一人もおらぬ。ただただ、乗るだけ。しかも、在来線特急に、だ。在来線特急で酒を飲む、これぞ、ムジナーの極意であった。うんざりするほど、考えが同じであった。

 

僕の前の座席に座っている、おっちゃんムジナー二人組が話している。

 

「つがるは三両編成って、短すぎるよな」

 

いやいやいやいや。普段はそんなことはないんだってば。これは特需なんだよ。アンタらのせいなんだよ。

 

「あの蕎麦屋、混みすぎだよな」

 

いやいやいやいやいや。普段はそんなことないんだよ。アンタらのせいなんだよ。ていうか、やっぱり、アンタらも、あそこで喰ってたんかい。

 

秋田セット

 

「いなほ」と同じく、車内の空気は微動だにせず、入れ替わる気配が全くない。東能代駅に着いた時には、ここは五能線の乗り換え駅だし、五能線は「乗る価値のある線」だから、少しくらい降りるかなと思った。しかし、ピクリともしない。

 

しかし、弘前駅では、予想とは異なる事態が起きた。どうやら、「弘前-青森」は、「つがる」本来の需要がある区間らしい。我々とは明らかに別種の、「今日もきちんと働いている人たち」の面々が、大勢、ホームで、「つがる」を待っていた。彼らは、「なんじゃこら?!」という、怪訝さ全開の顔つきで、「異常事態つがる」を眺めている。「俺たちのつがるを返せ」と言っているようでもある。彼らは、微動だにしない我々の車内に大勢突入し、なんと、超閑散期の特急「つがる」の乗車率は120%くらいになってしまった。そして、漸く、本当に漸く、車内に方言が聞こえるようになった。なにせ、ここまでは、聞こえてくるのは東京コトバばかり。「とき」→「いなほ」→「つがる」と、全く入れ替えがない状態で、ここまで来ているからね。

 

つがる~へいや に~♪

 

ゆぎふ~る~♪

 

ころは よぉ~♪

 

新青森駅到着。さて、ここは、観察のしどころだ。時間はまだ16時前である。東京行き最終新幹線までにはだいぶ時間がある。さて、ムジナたちは、どういう進路を取るのか?新青森で降りれば、それは「新幹線乗車」を意味する。もう一つ先の「青森」まで行けば、・・・さて、それは?ちなみに僕は、青森まで行き、そこから、旧「国鉄東北本線」、現「青い森鉄道」に乗ろうと思っている。もし、ヤツらがここまでも、オレに付いてきたら・・・?この、ある種の「東京の団体客」然とした大人数が、「特急」ではなく「ローカル線普通列車」に突入してきたら・・・?その混雑度はエゲツないレベルになること請け合いだ。18キッパーにも侵されたことのない「青い森鉄道」である。史上初めての事態が起きるかもしれない。「俺たちの青い森を返せ」と、「ムジナ排斥運動」が起きるかもしれない。

 

しかし、それは杞憂に終わった。東京からの団体客「ムジナ御一行様」は、青い森には乗らなかった。では、どこへ向かったのか?青森で、新たなイナゴと化したのか?それを確認できなかったのは無念だが、僕は漸く初めて、ローカルな空気の中で、車窓を楽しむことができた。やれやれ。

 

漸く通常モード

 

本当は、青森駅をもう少しじっくり見たかった。名物の「長いホーム」も、じっくり見たかった。さゆりも唄っている、「連絡船への乗り換えのために、先へ先へと歩く」あのホームも、堪能したかった。なんなら駅の外に出て、町の散策もしたかった。乗り換え時間は僅かだったので、その余裕はなかったが、仮に、「御一行様」が青い森へ突入しそうであれば、この列車をやめて、一本遅らせることも考えていた。しかし、大丈夫そうだったので、予定通り乗ってしまった。青森駅は、全く、見られず。

 

ながーいホーム

 

あとは、東北新幹線で帰るだけだが、このまま帰るのは、早すぎる。何処かで、何かを、することができる。「何か」とは、「一杯」と、相場は決まっている。そうすると、問題は「何処で」になる。僕は八戸を考えていた。時間的にも丁度良いし、飲みたい街でもある。八戸の飲み屋街は、八戸駅ではなく本八戸駅周辺なので、本当はそちらに行きたいのだが、移動の時間がもったいない。それで、選択肢は少ないものの、八戸駅周辺を攻めようと思う。

 

野辺地から対岸の下北半島の付け根を望む

 

八戸駅到着

 

八戸駅前の居酒屋へ。開店直後にも関わらず、「御一行様離脱組」と思しき東京コトバのオヤジ四人組と、本日ばかりは「御一行様」の陰に隠れて目立たなかった中国人観光客三人組が、既に陣取っている。しかし、よかった。最悪、「御一行」で店が占拠される事態を想像していたので。

 

漁師がやっている店だそうで、メニューはまことに魅惑的である。つぼ鯛刺身にマツカワカレイ刺し、ホタテ味噌貝焼に、八戸ツブ煮付け。酒は、八仙、豊盃に田酒。ただし、ちと、高いな。まあ、えげれすの外食を考えたら、枝豆¥800を考えたら、こんなものかもしれないけれども。

 

好物の短冊メニュー

 

最初の酒は八仙から。そして、種市の「日本一のホヤ塩辛」が残念ながら品切れだったので、「めかぶ」「長芋短冊ねぶた漬け」を皮切りに、「ドンコのたたき」なる破壊力抜群メニューを頼む。するとおかみさんから「キンキン刺し」を勧められた。

 

キンキン刺し、だと…!

 

「キンキン」と呼んだり、「キンキ」と呼んだり、宮城では「吉次」と呼ぶこの高級魚は、通常は、塩焼きか煮付けで食べる。釧路あたりでは「お湯で茹でる」食べ方がある。僕はこの魚が大好きで、これまで様々、食べてきたが、「刺し」は初めて見たぞ。僕には、「珍しい魚」に出逢うとテンションが上がる特性があるが、同時に、「珍しい食い方」に出逢うと、さらにコーフンする習性もある。そして、「刺しで喰わない魚を刺しで喰う可能性」に出逢うと、血湧き肉躍るテンションになってしまう。だって、「喰わない」ってのは、何かしら、その理由がある訳でしょ?アナゴみたいに、処理に手間がかかる、というものから、鯖みたいに、鮮度の劣化が早い、というものまで、様々な背景がある訳だ。「喰えない」なら仕方ないが、「喰えるけど、喰うのが難しい」という魚の、「でも、喰えますよ」に出逢うと、どうしたって、自動的にコーフンする。

 

キンキン刺し、コリコリして、ウマー♪

 

嗚呼、しかし。えげれすは大好きだけど、やっぱりやっぱり、食は貧困だよなあ。マレーシアは、流石のアジア、何処で何を喰っても、全て標準以上、全て美味かったけれども。しかし、ニッポンの、この、食の繊細な愉しみ方よ。多様な調理方法よ。潤沢な、魚介のラインナップよ。帰国二日後だけに、いつにもまして、沁み渡るわぁ。

 

ニッポン、ウマー

 

「キンキン」は、最後、こうなる

 

日本酒はちと高いので、焼酎に切り替える。面白いのは、「ニンニク焼酎どでん」、青森の田子は「ニンニクの町」だからねえ。試しに頼むと、なかなかの衝撃だ。ガツンと、ニンニクが来る。ただし、旨い。

 

メニューがなんでも美味そうに見えて困る。えげれすからのギャップでショック死しそう。「水タコわさび」。絶対に豊盃に合う。「八戸ナメタガレイ煮付」。ナメタガレイの、あの濃厚な味わいも良いなあ。。そして、「八戸前沖真鱈のフライ」。タラのフライは旨いよな・・・。

 

・・・いや、違う。「cod」のフライはあかん。チップスは付いてこないだろうが、ビネガーびちょびちょにはならないだろうが、これだけはあかん。フラフラと、引き寄せられそうになったが、これでは、「えげれすリハビリ」にならぬ。

 

でも、なあ。結局、今回のえげれすでは、正統な「コッド&チップス」を、喰えていないんだよなあ。

 

オーダー間違いのバーガーのリベンジ?
えげれすのタラ無念を八戸で?
江戸の仇を長崎で打つ?

 

最終はやぶさまで、あと1時間半。どうする、どうなる、仇問題。

 

東京まで、ほぼ、睡眠

 

【新】えげれす通信2024_vol.14:帰国編 (25-26/02/2024)

旅もいよいよ最終日だ。本日2/25は、昼12時にホテルをチェックアウトして空港へ移動、その後、23:35のフライトまで、なんとかして時間をつぶすw

 

朝食を食べに行く。だいたい、昨日と同じラインナップかな。あの旨い麺もある。帰って調べたところ、あれは「Laksa」というものらしい。地域ごとに特色がある、マレーシアの郷土料理的な位置づけらしい。ホテルで出たヤツは、「サラワ・ラクサ」で、「カレー粉は使われておらず、スパイスと、サンバルベラカンという調味料が使われていて、ココナツミルクが入ってクリーミーな味わい」とのこと。確かに若干のねっとり感があったが、あれは、ココナツミルクだったのか。麺は「米麺」、湯葉的なものは「卵の千切り」らしい。

 

Laksaウマー

 

空港へ向かう。到着したのは13:45くらい。まずは、空港内を散策する。すると、KLIAでは、過去二回は発見できなかった「フードコート」を、今回は見つけた。中を見ると、カウンターに充電設備がある。ここなら、居座れそうだし、時間つぶしには良いかもしれない。ただし、誰でも侵入可能なので、落ち着きはなく、「雑踏」という感じである。

 

混んでる

 

麺屋がある。メニューを見ると、「Wantan Mee」というのがあって、旨そうだ。塩味のあっさりしたスープで、ワンタンが乗っかっているんかな。荷物をもってウロウロしたくないので、まだあまり腹が減ってはいないが、それを食べることにする。

 

この麵はインスタントぽっかったな

 

これまた後から調べたところによると、「Wantan Mee」は、「鶏肉と茹でた青梗菜が乗った醤油ベースの麺で、チリソースをかけて食べる」のだとか。Wantanは「ワンタン」ではないのか。チリソースは確かにカウンターにあったけど、どれにどれをかけるのが定番なのか、わからないんだよなあ。しかし、逆に、あっさりして、旨かった。

 

フードコートで居座っても良いんだけど、もう少し落ち着いた空間の方が良いかなと思い、一昨日も来たCOSTAへ。さっきの「Wantan Mee」とほぼ同額の、たっかいたっかいコーヒーを飲んで、ねばる。

 

本日、2/25は、J2ベガルタ仙台の開幕戦(vs大分)がある。スタメン発表を見て、良い意味で、驚愕する。しかし、海外からは、DAZNが見られないのだ。明日、成田に着いてから見るしかないか。今ここで、COSTAで見られれば、格好の時間つぶしにもなるのにねえ。

 

ネットを見たり、旅費の計算をしたり、色々しながら時間をつぶす。6時間くらいは経過した。ただ座っているだけなのに、腹が減ってきたぞ。二度目のフードコートに行き、今度こそはダックを食べようとする。しかし、唯一、ダックを置いてある店で聞くと、ダックは売り切れだと!今回は一回しか、しかも冷めた、弁当のおかずのやつでしか、ダックを食えなかった。仕方ないので、チキンと焼きそばが鉄板に乗って甘いソースがかかっているやつを食べる。これも旨し。

 

Sizzling Crispy Chicken Chop Yee Mee with Black Pepper Sauce

 

20時過ぎ、少し早いけど、荷物預けだけならできるのでは、と思って、試しに聞いてみると、可能だった。トランクは26.5kg、1.5kgオーバーだけど、通常、これくらいは問題ない。…と、思ったら、愛想が良く、可愛らしい、マレー系のスタッフのお姉ちゃんが、「超過です」と、まさかの台詞を吐く。

 

完全なる思い込みで、完全なる無責任な印象だけど、マレーシアの三大国民、マレー系、インド系、中華系のうち、一番優しそうで、一番柔らかそうなのは、マレー系だと思っている。インド系はカッチリして頑固そうだし、中華系は無愛想そう。しかるにマレー系は、顔つきも穏やかだし、とっつきやすそうである。この印象は、果たして、当たっているのかどうか。確証を掴むほど滞在した訳ではないし、滞在したところで、確証が得られるわけでもない。そして当然、個別差はあるだろうし、ステレオタイプ的決めつけは良くない。ただし、このお姉ちゃんは、「ごりごりハード系」というのではなく、どちらかと言うと、「生真面目系」の感じに見える。

 

「お客さまの重量は25kgでして」
「いや、そうなんです。でも、1.5kgですよ?!」

 

相手が「ごりごりハード系」ならば、こちらも「ごりごり攻め」を講じないといけない。しかし、「仕事に忠実なだけ」系と思われたので、ここは笑顔で、「なんとかしてよ」と、情に訴える。果たしてお姉ちゃんは「大丈夫です」と笑顔で返してくれる。

 

かつて、えげれすで、5kgくらい超過した時、カウンターのお姉ちゃんは、まさに「取り付く島もない」態度で、冷たく「超過です」と言い放った。しかし、並び直して、今度はおばちゃんのカウンターに当たったら、おばちゃんはにこやかに「大丈夫です」と言ってくれた(笑)。ヨノナカ、まあこんなものである。

 

ほぼ半日にも渡る、長い長い「時間つぶし」が終わり、ようやく搭乗時間が来た。こんなに無為な時間って、そうそうないよね。やっと乗り込める、と思ったら、なんということでしょう。出発が遅れているだと?!新しい出発時間は、50分遅れの、24:25だと?何があったのかと思いきや、乗り継ぎ客待ちだそうだ。それなら、まあ、しゃあない。まあ、帰るだけだし、良いんだけどね。とりあえず、僕の頭の中は、「早くとろろ蕎麦を喰いたい」しかない。とろろ蕎麦タイムが50分、後ろ倒しになるだけだ。

 

機内で、映画「Surprised by Oxford」を観る。これは、日本では未公開なのかな。オックスフォード大学の、「department(学部)」と「college(学寮)」とが複雑に相互依存している特徴的システムと、そこで展開される、癖のある講義などが、実によく表現されている。教員や学生の話す、いわゆる「オックスブリッジ」英語も、恐らくは忠実に再現されている。オックスフォードの街並も、僕は一回行っただけだが、なんとも素敵に映されている。えげれす旅を〆るのに、まさに適当な映画だった。

 

今回の席は、窓側だった。48時間前にオンラインチェックインした時、選択の余地が皆無だったので、通路側を取れなかった。隣は日本人だったので、出入りで避けてもらっても良いかとも思ったけど、やはり気が引けたので、トイレに一回立っただけ。ということは、ギャレーに酒を貰いに行くことができないということである。すっちーさんが来てくれた時しか飲めないということである。今回は、なんと、一回しか来てくれなかった。なので、僅かに、赤ワイン一杯のみのフライトであった。なんてこった!

 

さて、成田に帰ってきたぞ。全然飲んでないから、sober(しらふ)だぞ。

 

ただいま

 

しかし、改めて気にしてみると、日本の道路の舗装は滑らかだねえ。「障害」もさっぱりなく、トランクの車の音も殆どしないわ。奪われる体力、倍ほど違うぞ、これ。

 

滑らかだわー

そして、成田のラウンジで、ベガルタを見る。ローソンで、メシが固くない、旨い旨いおにぎりを喰う。そして・・・、

 

これを喰うために、遥々10000kmを飛んできた

 

夢にまでみた・・・「とろろ蕎麦」を、soberで、喰う。

 

おあとがよろしいようでw

【新】えげれす通信2024_vol.13:KLを写真で振り返る編 (24/02/2024)

本日は、まるまる一日を、KL(クアラルンプール)観光に割ける日である。ただし、具体的に、考えている場所はない。「セントラルマーケット(Pasar Seni)」を覗いてみようかなというのと、「KLセントラル駅(KL Sentral)」で、国際列車の発着の様子を見てみようかなというのと、それくらいを、なんとなく、ぼんやりと考えているのみである。

 

先ずは、楽しみにしていた、朝食を取る。えげれすの宿は、何度も書いているように、昨今では「メシ無し」が標準になっている。しかし、今回の最後の宿であるここでは、朝食を含む予約にしていた。ホテルの朝食バイキングは、僕は結構好きである。普段は朝食は取らない生活だけど、ホテルの朝食バイキングがある時には、たとえ前夜、飲み過ぎたとしても、頑張って起きて食べる(笑)。マレーシアのホテルの、朝食バイキングは、いったいどんなものが並ぶのか?

 

名前はわからんが、マレー風、インド風、などの料理が並ぶ

 

手前のスープヌードルがめちゃめちゃ旨かった

 

チャーハン、焼きそば、野菜の炒め物、鶏肉カレー煮、スクランブルエッグ、などなど。どれも旨いが、とりわけ、スープヌードルが旨い。ソーメンみたいな、ビーフンみたいな、フォーみたいな、ミーゴワなのかミーヤワなのか(これは、『深夜特急』で紹介されていて、こちらでもお目にかかる文字列だが、どれがどれなのかは不明)、とにかく麺がある。それを自ら湯がく。具は、もやし、コリアンダー、ネギ、小魚の揚げたヤツ、湯葉みたいなヤツ、などなど。そしてスープを入れて完成する。朝食にスープヌードルって、「石垣島八重山そば」や、「ベトナムのフォー」などあるけど、朝食バイキングでこれがあるとテンション上がるんだよなあ。

 

プールもある

 

めちゃめちゃ街の中に建っているけど、この国は熱帯だし、設備をみても、「なんちゃってリゾートホテル」と言えば、言えないこともない。プールと、プールサイドバーもある。周囲はビジネス街なので、ミスマッチ感は半端ない(笑)。泳いでいる側も、リラックスできるのかどうか疑問だけど、周囲のビルからそれを見る側も、なんとも奇妙な感覚になるんだろうな。子どもが数人、泳いでいた。

 

散歩に出かけることにする。まずはセントラルマーケットを目指す。しかし、例によって、地図がないし、通りの名前もわからないので、迷う。今日は、地図がないとどうしようもないので、docomoローミング24時間を再び、申し込む。

 

子分のシンガポールさんと同じように、ここでも、二階建てバスが走っている。しかし、シングルデッカーとダブルデッカーの体感比率は、親分えげれすで、2:8くらい、子分1号シンガポールさんで3:7くらい、そいて子分2号マレーシアさんでは7:3くらいの感じかな。あんまり走っていないね。ダブルデッカーの二階前面に座るからこそ、例の、「来た奴に適当に乗ってぶらぶら」が楽しいわけだ。あまり当たりがなさそうだな。ストレンジャーに対するバスの案内体系は、親分や1号さんの、緻密で、包括的で、わかりやすい、あの素晴らしき体系に比べると、2号さんのは、足元にも及ばない、ちゃっちくて貧困なものである。それもあり、今回は、バスに乗るのはやめた。

 

どこぞのバスターミナル

 

セントラルマーケットは、ファサードの文字によれば、1888年に建造されたらしい。親分の仕業だろうな。なかなか良い感じである。

 

セントラルマーケット①

 

セントラルマーケット②

 

セントラルマーケット③

 

中は、コベントガーデンを彷彿とさせる、吹き抜けの構造になっている。実に様々な店舗が並んでいる。

 

内部①:吹き抜けが開放的で良い感じ

 

内部②:日用品も売っている

 

内部③:魚も売っている(隣には肉もある)

 

内部④:陶器もある(ここで皿を衝動買い)

 

嘗てトルコで、カラフルな陶器に出会い、衝動買いをしたことがある。今回は、もともと、食器類購入はひとつの目的だったものの、えげれすで買い過ぎて、もはや、重量的容量的余裕がほぼない状況である。しかしこの店はよかった。大皿と小皿を買う(後でトランクの重量を図ったら、約27kg。色々と、捨てたり整理したりした結果、なんとか収まった)。ちゃっちい、オミヤゲ然としているものや、「マレーシア」とか書いてあるヤツは、そもそも買うつもりはない。しかしこの店のラインナップは、なかなかに高額で、たぶんハンドペイントで、恐らくは一点モノの、陶器だと思われる。土産に最適な小皿から、かなりの大物まで、上から下までズラリと並ぶこの雰囲気も、トルコの店と同じだ。嗚呼、もっと買いたい。もっと大物を買いたい。

 

内部⑤:生地屋もある(ここでも衝動買い)

 

手染めのコットンの生地屋があった。おばちゃんの説明によると、「Batik」というものらしい。ここに5つ並んでいるのが「チャップ」と呼ばれる銅製のスタンプであり、それによってロウを布に移して、柄を作る方法らしい。所謂「ろうけつ染め(ロウで防染し、柄を作り出す染色方法)」というものらしい。生地なら、重量的にも容量的にも、まだまだいける。

 

内部⑥:フードコートもある

 

次に、KLセントラル駅を目指す。通りでは、おっちゃんが、ペンキを塗っている。この「ペンキ文化」も、親分発祥だよなあ。だから、子分の街並みは皆、「ペンキ系」になるんだよなあ。少なくとも日本には、ほぼ、ないよね。まあ、「ペンキ系」建築の素材は、地震に耐えられそうもないから、そこからして、日本にはあり得ないんだろうけど。

 

なかなか思い切った配色やね

 

駅に着き、そのまま、例の「Nu Sentral」ショッピングモールに行く。マレーシアのSUICA的「タッチアンドゴー」の残額が心細くなってきたので、チャージをしなければならぬ。あれから、ありそうな所をチェックしてきたが、チャージ機はさっぱりないし、たまにあっても、やはり、クレジットカード決済はできない。やはり、わざわざここまで来なければならぬのか。マレーシアは、かなりの部分で、クレジットカードを含むキャッシュレス決済が導入されている印象がある。フードコートなんかでも使える。にも拘らず、キャッシュレスの権化みたいなこのカードのチャージが、なんでこんなに難しいのよ?

 

NU Sentral

 

駅に戻って、国際列車の偵察に行くも、あまり、大々的ではないな。ヨーロッパの駅のように、大きなコンコース、大きな発車案内板、ずらりと並ぶホーム、という感じを期待していたんだけど、どうも、そんな感じではないな。尤も、国際列車と言っても、シンガポール行と、タイ行の二つしかないし、それらのうち、直通の優等列車は、恐らくは、それほど頻発はしていない。チケットがないと改札を通れないので、結局、雰囲気は体感できなかった。

 

長距離列車はこんな感じ

 

駅の二階に、またまた、フードコートがある。子分1号のシンガポールさんでもそうだったが、子分2号さんもまた、どうやら、「フードコート天国」らしいことがわかってきた。小腹が減ってきたので、食べましょう。

 

フードコート

 

 

ダックが見当たらないので、タイの「Tomyam Beef Rice」を

 

「KL Senral」駅からモノレールに乗り、ホテルの最寄の「Raja Chulan」駅で降りる。昨日の弁当屋的な店で、今日も、摘みを買おうとする。しかし、本日は土曜日だから?なんと、閉まっているぞ。どうする?

 

隣のスーパーは開いているので、さしあたり、ビールと眞露を購入、摘みの果物も買う。しかし、摘みというか、晩飯がないぞ。・・・仕方がないので、隣のファミマで、何故か「トッポギ」を買う。最後の晩餐が「トッポギ」かよ。なんでだよ。しかも、意図せず、「眞露に合わせる」ことになってしまったぞ。朝食時にパチッておいたゆで卵が宝物に思えるw

 

最後の晩餐(トッポギを湯煎してみる)

 

明日は、12時にホテルをチェックアウトするが、フライトはなんと23:35!どうやって時間つぶしをするんだ?!

【新】えげれす通信2024_vol.12:ううむ、マレーシア・・・編 (22-23/02/2024)

本日2/22のフライトは、ヒースロー10:25発、宿は6時に出ればよい。5時起きで大丈夫か。しかし、緊張して眠れず、1:30に起きてしまうw

 

結局5:30に宿を出る。チェックアウトしようとレセプションに行くと、坊主のオヤジが座っている。のっけから「なんでもう一泊しないの?」と真顔で言ってくる。なんだなんだ、と思ったら、次の瞬間、いたずらっぽく笑う。ジョークかよ。

 

ブラジル出身で、日本にも行ったことがあるらしく、マシンガントークを繰り出してくる。トウキョウ!オオサカ!コウベギュウ!・・・朝5時からテンション高いな、神戸だけ「牛」付きで覚えているのか。トークが終わらないので、切り上げて、出発する。雨の心配があったが、止んでいるので、Finsbury Park駅まで10分ほど歩き、Piccadilly線でヒースローへ。ターミナル4へは、一つ手前のHatton Cross駅で乗り換える。

 

マレーシア航空のチェックインカウンターは、三時間以上前の7時には既に、開いていた。早すぎるのか、並んでいる人はいない。27kgのトランクにもエクセスチャージを取られることなく(制限は25kg)、あっさり完了する。

 

ヒースローのターミナル4は、非制限エリアには、さっぱり店がない。時間もつぶせないので、かなり早めだけど、さくっと制限エリアへ移動する。免税店をうろうろして、トランクに貼るためのステッカーを買う。パブで、最後のエールを飲む。

 

ヒースローT4のパブ

 

機内のシートマップは、またしても、現実のものとは異なっていた!シートマップでは、前に座席がなく、足を伸ばせると思っていた通路側だったが、実際には、「前に座席がない」のは窓側だった。まあ、いいか。

 

メシは旨かった。ビーフのカレー的なものにマッシュポテト。成田で積み込んだメシよりも、クアラルンプールで積み込んだメシよりも、倫敦で積み込んだメシが旨いって、どういうことよ。何かが、間違ってないか。

 

こいつは旨かった

 

来るときにも観た映画「Love Actually」を、また観る。ダメ男を演じたら右に出る者はいないヒューグラント、真面目で不器用な男を演じたら絶品のコリンファース、という、えげれす映画俳優陣だけでなく、当時、歌を出してヒットしていたマーティンマッカーチョンとか、僕が住んでいた当時の、テレビやラジオ番組に出ていた顔たちが、結構登場してくるので、懐かしい。倫敦の風景も、余すところなく映される。

 

続いて、「The Vow(邦題:君への誓い)」を見る。wikiによれば、

 

実話をもとに、交通事故で夫の存在を忘れてしまった妻と、彼女の愛を取り戻そうとする夫の姿を描く。妻のペイジ(レイチェル・マクアダムス)と夫のレオ(チャニング・テイタム)は、幸せな結婚生活を送っていた。ある冬の夜、二人は突然の追突事故に巻き込まれてしまう。ペイジはフロントガラスを突き破って前に押し出され病院に運ばれた。病室のベッドで目覚めたペイジは、外傷性脳損傷で夫との楽しい思い出を全て忘れてしまっていた。レオは、自分がペイジの夫であることを証明するために、全力で妻の記憶を取り戻そうとする。ある時、ペイジは久しぶりにロースクールの仲間たちと会う。そこで、かつてのフィアンセ、ジェレミースコット・スピードマン)と再会する。ペイジは、シカゴ美術大学に行くためにロースクールをやめ、ジェレミーとの婚約を一方的に破棄していた。しかし、ペイジはその記憶を失っていたため、自ら絶縁したはずのジェレミーの会社へと足を運ばせていた。

 

という内容である。記憶喪失で失われた期間に発生した「感情」は、その後、どうなるのか?仮に記憶を取り戻したら、その「感情」は蘇るのか?そして、その時の「感情」と、事故後の生活で生まれた「感情」とが対立するものである場合、いったいどちらが「残る」のか?この主題は、井上靖の「崖」という小説が扱っている。実に丁寧に描かれていて、僕は何度も読んでいる。日本とアメリカ、小説と映画、という違いはあって、腑に落ちない箇所は多かったけど、総体的に良い映画だった。

 

三本目は、「Bullet Train(邦題:ブレットトレイン)」を見る。「弾丸列車」というタイトルから、「新幹線大爆破」のような内容を想像したんだけど、実際には、日本を舞台にした、殺し屋たちの、コメディタッチの話だった。新幹線が舞台だが、列車名は「ゆかり1号」。静岡とか浜松とか京都とかに停車するんだけど、なぜか夜行の新幹線である。真田広之が出演している。「ガイコクジンから見た、おかしな国、ニッポン」的な描写がたくさん出てきて、興醒めする。新幹線は右側通行になっており(実際は左側通行)、細かいところにもツッコミを入れてしまう。「これじゃない感」が多すぎる。日本人にとっては、完全に違和感だらけの、全体として「不可思議な世界」であり、現実とフィクションが妙に入り混じっている。どうにもおかしいなと思っていたら、なんと、原作が、伊坂幸太郎だった。これを見て、一気に納得した。なるほどね。伊坂幸太郎ならば、こういう世界観はアリだろうし、だとすれば逆に、映画はその世界観を忠実に再現できている、ということになるんだろう。殺し屋の一人を演じる俳優はえげれす人らしく、劇中の台詞で、彼のしゃべりが「英国訛りだな」と言われるシーンがある。こういう「小技」は、大変よろしい。

 

メシを二回喰って、映画を三本見て、少し眠ったら、ようやく到着した。クアラルンプール、朝の6時過ぎ。ホテルのチェックインは14時だ。どうするの、これ。

 

クアラルンプール空港には、USBチャージの設備があまり見当たらない。制限エリアにはあった。荷物のピックアップもあるし、出た先にもあるだろうと思ったら、無かった。機内の、座席にあるUSBポートは壊れていたので、とりあえず、充電しなければならない。仕方がないので、COSTAに入って高いコーヒーを貰い、カウンター席で充電する。ネットを見たり、ニュースを読んだりして、時間をつぶす。

 

時間は果てしなくあるので、スーツケースを一旦開け、中から変圧器を取り出して、COSTAカウンターにすべてセッティングする。パソコンと携帯を繋げることができたし、空港WIFIは使えるので、腰を落ち着けられる。

 

「空港でひまつぶし」という検索ワードが候補として挙がってきたので、見てみる。

 

三井アウトレットパーク」、・・・無いな。
「タイ式マッサージ」・・・あるわけないやん。
「スーパーマーケット」・・・ん?

 

あるな。

 

どうやら、ターミナル2(KLIA2)に行くと、スーパーマーケットとフードコートがあるらしい。ファミマもあって、ファミマの飲食席には、USBポートとコンセントがあるらしい。うーん、さすがだ、日本のコンビニ。COSTAには、結局3時間くらいいたけれど、たっかいたっかいコーヒーは旨かったけれど、ここで昼飯まで喰ってしまうと、マレーシア物価的にはエゲツナイ支払いになってしまう(軽食で¥1000超え)。えげれす物価に比較すれば、ここは、破格の安さではある。ただし、とにかく食費に悩み続けてきたワタクシとしては、やはりここでも、節約をしたい。そんなわけで、KLIA2に移動してみることにした。

 

イートインスペースはありがたかった

 

KLIA→KLIA2は、①無料のシャトルバス(ただし乗り継ぎ客のみ)、②有料の鉄道、という二択らしい。しかし①で、搭乗券のチェックなどはないらしいので、ダメモトで突入してみたら、呆気なく突破できた。10分ほどで、KLIA2に到着。

 

関空のT2、成田のT3、を想像していたら、全然違うじゃないの。めちゃめちゃ広いよ、これ。店も、果てしなく続いているぞ。散策するだけで、結構、時間がつぶれるっぽい。ユニクロもあれば、トイザらスもある。ダンキンドーナツもある。

 

フードコートには、各国料理、各ジャンル、などなどが、それぞれのブースを形成している。すべてに写真メニューと番号があるので、言葉がわからなくても不安なく頼めるようになっている。シンガポールの時と同じく、ダックラーメンが喰いたい。あるいは、何かしらの、スープヌードルが喰いたい。

 

「ペナン」が良いじゃないの

 

ペナン、という文字に惹かれ、メニューを見てみると、スープヌードルがある。海老が載っているぞ?この時点で、えげれすでは決して味わえない、アジアの料理の、奥深さ、豊穣さ、を感じる。絶対、旨いに決まってるやん!

 

ウマー

 

COSTAでしょーもないパンを一つ喰うのとほぼ同じ価格で、海老が入ったスープヌードルが喰える。ヒャッハー、こっち来てよかった!・・・しかし、辛いな。

 

スーパーは、シンガポールの感じを彷彿とさせるが、予測の範疇に留まっていた。あまり、新たな発見はないな。まあ、こんなもんでしょう。晩飯は、シンガポールの時と同じく、近所のスーパーに依存することになりそうだし、予習は果たしたということで、撤収。12:30くらいになったので、そろそろ空港を出ることにする。

 

スーパー

 

前回は、空港と市内とを、急いで往復する必要があったので、ノンストップで高額の、「KLIAエクスプレス」という特急を使った。しかし今回は、時間に余裕がある。同じ路線を、途中駅に停まりながら進む「KLIAトランジット」に乗ることにする。京成でいうところの、「スカイライナー」と「アクセス特急」みたいな感じ。そして、途中停車駅で市内交通のMRTに乗り換えることで、所要時間はかかるものの、破格の安さになるらしい。

 

乗り換え

 

郊外はほぼ高架

 

車内には、中国系と思しき、オカンと娘二人がいた。この娘たちが、傍若無人、想像を絶する喧しさで、車内を走り回る。動き回る。喚き回る。しかるにオカンは、我関せず、全く、注意をしない。公共空間に馴致させ、社会における正統なる「振る舞い」をこの時期に叩き込まないと、野生動物のまま育ってしまうぜ?社会性なんて全く纏わずに、育ってしまうぜ?・・・まあ、だからこその、「彼ら」なんだろうけれども。えげれすにて、要所要所で、社会性、公共性、というものを、ビシビシ感じていた直後だけに、この、わかりやす過ぎる対照は、衝撃ですらあった。

 

モノレールに乗り換え、ホテルの最寄り駅で下車する。モノレールは高架線であり、駅はすべて、空中にある。必ず段差があるのに、エレベーターなぞは、一切、ない。階段、階段、階段である。・・・オマエら、重たい荷物を持った旅行者というものを、想定してないんか?

 

親分のえげれすチューブは、できたのが恐ろしく古いから、構造上の問題で、バリアフリー化には難しいところがあるのは、わかる。それでも涙ぐましい努力で、少しずつ、少しずつ、Liftの継ぎ接ぎ継ぎ接ぎをしながら、まるでサクラダファミリアのようないじらしさで、バリアフリー化を進めているのだよ。細切れLiftの「乗り継ぎ」自体が一種の「謎解き」の様相を呈しているのだが、それでも、その謎を解読しさえすれば、無事に出口へ出られるのだよ。

 

しかるに、子分はなんやねん?きみら、開通させたのは最近やろ?バリアフリーって、知らんのか?「お菓子の名前」と違うで?

 

急速に、不機嫌になっていく。毎日毎日、ゴキゲンだったえげれすの日々からの落ち込みが甚だしい。相変わらず、「案内」「表示」が足りていない。改札を出た後、道が三つある。一つに行ってみると、行き止まりである。もう一つに行ってみると、先に、おじさんが座っており、ダメダメ、とジェスチャーをしてくる。駅周辺地図もないし、通りの名前もわからない。ムカつきマックスになってくる。

 

前回は、トランクの半分は空であり、重量も、恐らくは、15kgくらいのものだった。しかるに今回は、27kgである。

 

ダーラムで散々苦しめられた、我がAceトランクの「伸縮持ち手」攻撃に加えて、マレーシアの街路は、さらなる技を繰り出してくる。

 

子分であるマレーシアは、道路や交通ルールなども、親分のそれを踏襲している。交差点では、「左折レーン」「直進レーン」「右折レーン」それぞれが車線的に分かれている。しかし、それだけではなくて、その間に「島」があることがある。つまり、段差があるのだ。そして子分においては、その「島」の段差が、親分のそれとは比べられないほどのギャップを造り出している。同じく子分のフィジーでも同じだが、半端ないスコールが発生する国では、「水」を流すための「水路」が必要となる。親分の「雨水」は可愛らしいものだが、フィジーやマレーシアの「雨水」は「ちょっとした洪水レベル」になる。その濁流をつつがなく流すためには、「島」の段差は、「段丘」クラスの、急峻なものにならざるを得ない。また、雨水溝への捌け口の「アミアミ」も、えげれすの可愛らしいものではなく、子供の靴ならそのまま墜ちるんじゃないかというほどの、粗い造りにのものになっている。

 

「島」障害

 

「段丘」障害

 

「アミアミ」障害

 

「島」障害、「段丘」障害、「アミアミ」障害を、我がAceトランクは、クリアしていかねばならぬ。そもそもムカついてきているところに、この、「多重障害の重馬場攻撃」が加わることで、精神的にも身体的にも、僕はますます疲弊していく。暑いし、眠いし、腹立つし、もはや「観光」とかどうでも良くなる。早くホテルで休みたい。

 

漸く、ホテルに到着。せっかく宿泊費がとことん安いマレーシアなので、今回は、なかなかのグレードのホテルを取った。プールがある(笑)。しかし、今は、ホテル内の偵察をする気力もない。プール近くのレストランで、明日の朝食を取ることになっているので、偵察は明日。一旦、寝ることにする。

 

豪華だぜ

 

夕食も、「何かを精力的に探しに行く」という気力はなくなっている。想定通り、近所のスーパーで惣菜を買って、済ませるか。

 

しかーし、シンガポールの時と異なるスーパー事情があった。デリカテッセン系が全くないのだ。シンガポールの時は、それで助かった。しかし、僕が行った、宿の近所のスーパーには、惣菜系がまったくない。仕方ないので、サラダとドラゴンフルーツを買う。

 

隣のビルの二階に、何やらありそうだ。上がってみると、ちょっとしたモールになっている。しかし、人気がなく、閉店間際っぽい。しかし、その中で、中華系の弁当屋的なものがある。売れ残りっぽいが、いくつかラインナップがある。これはアリでしょう。ダック弁当と豚足の煮込みを買う。

 

アヤシゲな焼き鳥屋の壁面にある、貴重なレコードのジャケ(なんで?)

 

ナオミーナオミーナオミー カムバック トゥー ミー♬

 


 

やはり、こういうのが必須

 

というわけで、ビールと、眞露のココナツジュース割で、今夜を〆ます。

 

 

 

【新】えげれす通信2024_vol.11:倫敦を写真で振り返る編 (21/02/2024)

本日は、倫敦散策の日である。特に目的もないが、そして、若干、腹の具合が悪いが、とりあえず買い物をしようかなと思う。

 

宿の近くの夜桜

 

部屋の窓からFinsbury Parkを望む

 

このホテル、倫敦にしては珍しく、「リニューアルされたて」と思しく、内装はモダンである。狭いけど、もろもろ、快適である。場所も、閑静な公園の目の前にあり、総合的に評価は高い。ただし、でかいスーパーが近所になく、ちっこいオフライセンスさえ、皆無なのが、若干、しんどい。急に何かを買いたくなっても、徒歩10分のFinsbury Park駅か、徒歩8分のManor House駅まで、行かねばならぬ。そして行った先のスーパーは、LidlとIcelandしかない。Lidlは、安いけれど、品揃えはそんなに良くない。

 

BBCの天気予報

 

BBCテレビやラジオの「えげれす国内版」において、ニュースや天気予報、道路交通情報などは、「全国版」と「倫敦ローカル版」の二つで展開される。その他、衛星放送などには「国際版」がある。日本からだと、「国際版」であれば、見たり聞いたりする手段はある。しかしながら、「えげれす国内版」の、「全国版」「倫敦ローカル版」を、日本で視聴することは、なかなか難しい。「倫敦ローカル版」は、倫敦周辺の地名が出てくるので、「今、ここにいる感」を楽しめる。朝のTVで、それを堪能する。しかし、今年も、去年と同じ、あったかいねえ。尤も、本日は、雨が続き、風も強いらしいが。

 

St. Pancras駅構内の「curi o city」

 

ホテルの前のバス停からバスに乗る。途中のバス停で、二階から降りようとしたおねえちゃんが、滑って階段から転落するという事故がある。本日は雨で、床が滑るし、ただでさえ、バスの二階は揺れが凄まじい。「キャッ」という悲鳴とともに滑落したおねえちゃんに、乗客たちが「大丈夫?」と駆け寄る。感心したのは、バスの運ちゃんが、秒の速さで、エンジンを止め、停車したこと。しばし様子見する、とかではなく、迅速な行動をとったことであった。このあたりも、やはり、公共性というか、社会性というか、えげれす社会の成熟度合いが示されるよなあ。「公」の観点から、「個」は、何をなすべきなのか。実によく、行き渡っている。

 

バスの行き先はキンクロなので、隣の、そして、お馴染みの、St Pancras駅構内のショッピングモールを冷やかす。キンクロにも同じようなのがあるけど、こっちの方が充実しているんだよねえ。やはり国際便発着駅だからかな。去年も見た「Fortnum & Mason」を覗くと、今回の旅行で唯一出逢った「日本人旅行者」がいた。相変わらず、日本人旅行者は少ないようだ。しかし、相も変わらず、「Fortnum & Mason」は、「日本人ホイホイ」だねえ(笑)。必ず、日本人を捕獲できるよな。

 

その向かいには、「curi o city」というオサレな文具屋がある。これ、場所といい、テイストといい、恐らくは、僕の好きだった「Paperchase」の新ブランドだと思うんだよなあ。去年はこの同じ場所に、「Paperchase」があったし、その「売り尽くし閉店セール」があったし。この「curi o city」もまた、同じようなテイストだし。レシートを見たら「WHSmith」とあったので、新業態なのかな。ペンと定規を買う。

 

"Stair to Hell" at Russell Sq St①

 

"Stair to Hell" at Russell Sq St②

 

Russell Sq St

 

懐かしのRussell SQ駅へ行く。去年も来ているので、実はそんなに懐かしいわけでもないw。地獄の階段を尻目にエレベーターで地上へ。結構な雨が降っている。が、しかし、傘をさす者など、ほとんどいない。皆、「何か問題でも?」という涼しい表情で、濡れそぼる。えげれすの「雨」は、年中、「五月雨じゃ、濡れていこう」の「雨」だ。

 

嘗て住んでいた寮の近所、Brunswick Shopping Centreのアジアショップを見る。この充実度合い、あの頃にあったらなあ。アヤシイ商品を見て回る。

 

アヤシイ商品①:「リポビタン」って・・・絶対、パクリやろ!

 

アヤシイ商品②:しかし、裏を見たら、「大正製薬」だった!(怪しくない)

 

アヤシイ商品③:日本のメーカーの米(怪しくない)

 

アヤシイ商品④:タイトルからして確実にアヤシイ

 

アヤシイ商品⑤:と、思ったら、エースコックかい!(怪しくない)

 

アヤシイ商品⑥:安定の「ハタ鉱泉」のラムネ(怪しくない)

 

前々から思っていたけど、「知っている会社の、しかし、日本では見かけない商品」が展開されているのは、まあ、あり得るとしても、「全く知らない会社の、しかも、日本でも見かけない商品」が展開されているのは、不思議な現象だよな。ポケモンリポDのパウチとか、これは日本でもあるの?白飯パックも、なんでまた、入善の会社の製品が、はるばる倫敦まで来ているのよ??えげれすの輸入業者は、どうやってチョイスをしているんだ?また、入善の会社は、どんだけ「輸出特化」しているんだ?会社訪問をして、話を聞いてみたいレベルだ。しかし、「ハタ鉱泉」のラムネは、去年、確認済みなので、驚かない。「ハタ鉱泉」は、日本でも指折りの老舗であり、昨今では、輸出に活路を見出している、というニュースも知っている。

 

アヤシイ商品⑦:これはアヤシイ商品確定

 

意外と怪しくないので、つまらんなと思っていたら・・・、探していたヤツが現れた。これ、完全に、えげれす最大手のポテチメーカー、「Walkers」のパクリやないか。さすがに中国さん、貫禄の押し出しです。

 

雨風が強まり、寒くなってきた。そして、ここにきて、腹の調子が、風雲急を告げてきた。母校のSOASでは、去年確認したところ、殆どの入口に「IDチェックゲート」が導入されていて、自由に立ち入りできなくなっていた。しかし、他にトイレは?あいにく近所にパブはない。ラッセルスクエア公園内に有料トイレがなかったかなと思って探したけど、見当たらない。「ままよ!」と祈りつつ、SOAS構内に行くと、「Brunei Gallery」に入ることができた。ここは、当時も、頻繁に利用していた「マイトイレ」の一つである。ブルネイの王族が留学した時に、そのお礼として、ポケットマネーからサクッとカネを出して建築してくれたというこの建物は、ワタクシ、主として「トイレ」として、活用させていただいております。

 

マイトイレ

 

チューブでHolborn駅まで行き、キングスカレッジを過ぎて、母校のLSEへ。去年に引き続き、グッズをいくつか買う。

 

キングスカレッジ

 

通っていた「Old Building」

 

マーシャルとか

 

ロビンズとか

 

グッズ屋とか

 

マーシャルとか、ロビンズとか、経済学を修める者にとっては、ビンビンくる名前が押し出してくる。

 

Aldwychから適当にバスに乗ろうと思い、とりあえず、Piccadillyを経由して、Hammersmithの方に行くバスを捕まえようと、バス停で待つ。しかし、なかなか来ないので、変更し、「来た奴」に、適当に乗ることにする。

 

タクシー、なんか、微妙にデカくなってないか?

 

Vauxhall Bridge

 

適当に乗ったバスは、どうやら、南へ向かうらしい。倫敦では、僕は、「北」と「西」には精通しているが、「東」と「南」、とりわけ「南」は、ほとんど知らないし、行ったこともない。この際、探索してみても良かったんだけど、雨だし、外は見えないし、腹も不安だし、で、やめることにした。Vauxhallのバスターミナルで降りて、乗り換える。今度のバスはChelsea Bridgeを渡り、倫敦のハイソ地区をかすめる。

 

Chelsea Bridge

 

最近見かけなくなった、ホットドック売りのおっちゃん

 

超ハイソ地区

 

Sloane Squareで降りてブラブラする。「Peter Jones」という、「John Louis」の系列デパートがあるので入って見ると、ニューカッスルの「John Louis」で衝動買いしたのと同じ食器類が、10倍くらいの物量で展開されている。「コンランの娘」ブランドも、ニューカッスルにはなかったものまで、展開されている。ここは知らなかったなあ。めちゃめちゃ良いじゃないか。去年の土産は「食べ物中心」の方針だったが、今年は「tableware中心」にしようという方針を立てている。再び、僕を衝動買いに誘う、コーフンが、襲ってくる。

 

Peter Jones

 

来月にイースターを控え、「イースター系季節モノ」が展開されている。「イースター系季節モノ」は、日本ではなかなか手に入らない。あったとしても、これほどのレンジでの展開は望めない。ヒヨコグッズに、卵グッズなど、かなりバリエーションがあり、悩ましい。「卵置き」がめちゃめちゃ欲しくなる。そんなもん、オレの日常生活で、いつ、どのタイミングで、使うのだ?!使うタイミングなんて、あるわけない!重々わかっていても、欲しくなる。

 

通常の皿で、良いものを見つけてしまった。シリアルボウルだけど、これなら、いろいろな用途に使えそうだ。この売り場にある食器類は、どれもこれも、かなりセンスが良いんだけど、確認してみると、「Made in Italy」とかも、時折、交じっている。僕はえげれすモノが欲しいので、逐次、確認しなければならぬ。このシリアルボウルは、Made in えげれすだったので、即、買い。

 

店を出て、隣を見ると、なんと、The Conran Shopがあるじゃないですか!コンランショップは新宿にもあるんだよなあ。まだ行ってないんだけど、どうなんだろう?同じものを、日本でも買えるんかな?だったらわざわざここで買う必要もないけどなあ。

 

TCS

 

うぉぉ、めちゃめちゃ、欲しい。しかし、新宿で買えるなら、慌てなくても良い。ただ、冷静に考えると、僕のスーツケースは、重量と容積、共に、もはや限界である。やっぱりやめておくか。。。

 

河豚みたいな、滑稽な顔をした魚をモチーフにした、大変にラブリーなデキャンタがある。£375ということは、¥70000ちょいか。これは新宿にはなさそうだな。一点モノっぽいし。これは来年、買うことにしよう。同じ魚ということで、魚プリントのランチョンマット的なものを買う。ショップスタッフの、めちゃめちゃ紳士然としたかっちょ良いおじさんは、こんな布切れごときを、わざわざ包装紙で包んでくれ、The Conran Shopのロゴ入りの、高そうな紙袋に入れてくれる。これまで、えげれすショッピングは、一に食べ物、二に衣料、という「二択」だったが、「食器」ってのは新たな分野だな。

 

Piccadilly線でキンクロに戻る。

 

日本では落ち着かない問題だが、えげれすでは毅然と、「右に立て」と明記

 

キンクロ二階に「wasabi」がある。去年も世話になった「和食弁当屋」である。来る日も来る日も、スーパー総菜メシを続けているので、いい加減に嫌になってきている。嗚呼、とろろ蕎麦が喰いたい。旨い寿司が喰いたい。松屋の牛丼でも構わぬ。そんな圧が、日々、高まってきている。明日、出国するというのに、最後の最後で、「wasabi」のアヤシゲ和食に手を伸ばしてしまう。

 

去年は、「カツカレー焼きそば」なる、甚だ不可思議なブツを喰った。今年は、不安maxながらも、初の「丼モノ」をいってみるか。見た目は旨そう。しかし、えげれすの「メシもの」すべてに共通する懸念は、「絶望的にシロメシがまずいこと」なのだ。「丼もの」は、素敵なビジュアルを放っている。光芒さえ放っている。しかし、なあ。これに何度、泣かされてきたことか。

 

「アヤシゲ丼モノ」の並びに、「タイグリーンカレー」を見つけた。うむ。これならば、「和食だと思って、喰ったら、和食じゃねえ、こんなもん、和食じゃねえ」問題は、疑似的に回避できる。最初から「タイ飯」だと思えば、ショックも軽減される。よし、これだ。

 

M&Sで、摘み三点セット(サーモン、エビ、いつもの生ハム=3つで£8!)を買い、ホテルに戻り、最後の晩餐をする。

 

悪くないタイ飯

 

三点セットその1

 

三点セットその2

 

グリーンカレー、旨いじゃないの!品名は相変わらず、謎テイストだけど、旨いじゃないの!!そして、問題のシロメシも、旨いじゃないの!!!これなら、他の丼も信用できるかも。wasabiはアリだな。

 

味噌は隠し味なのか?!

 

さて、明日は早朝に出発、空路で再びの、クアラルンプールへ。











 

 

【新】えげれす通信2024_vol.10:Geordieおじさん、倫敦へ行く編 (20/02/2024)

大移動の日なので、久々に、「完全荷造り」をする。今回新しく新調した、Aceのトランクは既にパンパン、重量は27kgもある。帰国前に捨てるものもあるので、多少のスペースはまだあるけど、もはや、追加土産の余地はないなあ。

 

えげれすの街路は、舗装の癖に、タイル的な奴の継ぎはぎになっている。継目が滑らかではないので、トランクの車輪は激しくガタつく。ダーラムにはさらに、「石畳」という罰ゲームもある。

 

我がAceのトランクは、日本製の癖に、甚だ設計が悪い。「伸縮持ち手棒」の部分は作りが細く、なんとも頼りない。「伸縮ボタン」が把手部分にあるため、転がしている時に誤ってボタンを押してしまい、意図せずに「ガンッ」と伸縮してしまう。自分の後ろに置いて引っ張っていくと、「伸縮持ち手棒」の長さのバランスが悪く、靴に引っかかる。

 

「継ぎ接ぎ障害」「石畳トラップ」「伸縮ガンっ」の三重苦で、バス停迄の道のりで、ヘロヘロになってしまう。

 

朝のダーラム

 

本日は倫敦まで、えげれすを縦横無尽に走りまくるえげれす大手の、「National Expressのコーチ(長距離バス)」で移動する。ニューカッスル始発の倫敦行き。乗り場は「ダーラムバスターミナル」かと思って、昨日下見をしたら、そこではなかった。昔はここから出ていたのに、今は、Sutton Stのバス停らしい。

 

Sutton St!なんとここは、僕が、ダーラムに来た一年目に住んだところではないか!

 

多分、これらのどれかに住んでた

 

嘗ての我が家の向かいに、なんの変哲もないバス停がある。本当にここで良いの?倫敦行き長距離バスが、本当にここに停まるの?

 

「ポジティブ判断の根拠となりそうな情報」と「オレを不安にさせる情報」という、二つの状況が入り混じる。

 

【ポジティブ判断の根拠となりそうな情報】
・バス停の屋根に「National Express」のロゴシールがある
・バス停の壁に「倫敦行き435便(夜行)」の時刻表がある
・バス停の天井にある電光掲示板には「2/20の出発(本日の日付)」とあり、表示は毎日変わっているらしい(つまりコイツは、「息」をしている)
Google先生の地図でも、ここが乗り場になっている

 

しかし、細かく見ていくと、疑いたくなる状況もある。

 

【オレを不安にさせる情報】
・壁にある時刻表には「435便(夜行)」だけが掲載され、僕の乗る「425便(昼行)」は見当たらない
・電光掲示板には便名が表示されていない
・ネットで検索すると、このバス停は「North East Bound」となっている。バス停には「上り」「下り」がある。「North East Bound」は、「倫敦→ダーラム→ニューカッスル」、つまり「逆向き」なのではないか?(ただし、一方通行道路の多いえげれすでは、バス停のこの「上り下り問題」は、一筋縄ではいかない)

 

さらに不安は高まる。ふと、回送のローカルバスがバス停の目の前に来て、エンジンを停止させた。そして、何たることか、運転手のおっちゃんは、悠然と、朝飯を食い始めた!

 

結局、3台もの回送バスがバス停前に集積し、そこはたちまち、「おっちゃんたちの、盛大な朝飯会場」と化してしまった。「おっちゃんの朝飯パラダイス」自体に罪はないし、ゆっくりと喰って頂いて結構だけど、オレのコーチはどうなるんだ?何処に停まるんだ?停まるスペースはないぞ?コーチの発車時間が迫っているのに、場所を占領して、悠然と朝飯を喰っている場合か?!

 

やはり、ここではないのだろうか。いくらなんでも、長距離バスのバス停前に、長距離バスの発車時刻直前に、3台もの回送バスを連らせて、悠然と朝飯を喰う訳ないよな。

 

オレの不安が極限に達した刹那、倫敦行の「オレのコーチ」が忽然と姿を表した。そして、・・・あまりに呆気なく、「何か問題でも?」といった風情で、「4台目ポジション」に、サクッと停まった(笑)。

 

あゝ、えげれす
やっぱり、念を入れて「備え」ても、現実は「ナナメウエ」からやってくるぜ

 

ここ数日間は、師匠周辺の人びと、つまり、中流階級の人びととばかり話していたから、すっかり忘れていたけど、ここは「Geordie(Tyneside=タイン川流域の訛り)」の国であった。ほとんど別言語の趣である。コーチの運転手は素晴らしく、本当に「素晴らしく」、訛っている。ほぼ、何を言っているのかわからない。

 

僕は、事前に、座席を予約していた。何処の席でも良ければ予約の必要はない。しかし、一番前の、所謂「バスヲタ席」が良ければ、予約料金はかかるが、予約すれば、そこを確保できる。えげれすは日本と同じく、「右ハンドル」「左側通行」。コーチの座席配列は「2×2」の4列。ベスト席は、運転手が遮らない、左の一番前の「1A」である。しかしそこは「車椅子専用席」であり、予約はできない。すると残る「ベスト」は、右の一番前の「1D」である。僕はカネを払って、そこを予約していた。

 

乗り込むと、「1D」には、運転手の交代要員と思しきもう一人のGeordieおっちゃんが、シレっと、座っている。電車の時と違い、この場合は、そこを退いて頂かねばならぬ。

 

「すんません、僕の席、そこの1Dなんですが」
「オレ、今日は、咳が出るから、どっかそこらに座ってくれる?」

 

おいおい。乗務員が「客席」に座るんかい。日本の電車で、鉄道会社の社員が電車移動する時には、車内が空いていたとしても、座らずに、立っているよな。日本の長距離バスだと、乗務員専用の小部屋があったり、途中で乗務員交代があったりするよな。しかもオレは、この、ベストな「ヲタ席」をとるために、事前に入念なる準備をして、しかもカネを払っているんだぞ?

 

よく考えれば、1Aの車椅子専用席は空いている。ん?1Aも「どっかそこら」に入るのか?「理性」ではなく「反射」として、何らかの閃光が、脳髄を貫いた。「熟慮」ではなく「思いつき」で、物は試しと、僕は、Geordieおっちゃんに、聞いてみた。

 

「1Aでも良い?」
「どうぞどうぞ」

 

良いんかーい!えげれすのエエ加減さで、奇しくも、最善の「1A」に座ることができた。車椅子専用だから、足周りにめちゃくちゃ余裕がある。前に運転席がある「1D」とは違い、チョクで前が見える。ちなみに日本だと、規則を杓子定規に適用するため、たとえそこが空いていたとしても、車椅子専用席に座らせて貰えることは余りない(経験済)。

 

備えあれば憂いなし

 

もとい

 

備えても憂うが、憂いたとしても、ナントカナル

 

Darlington停車。次はLeeds。

 

Geordieおっちゃんは、セカンドベストな「1D」に座りつつも、イヤホンで音楽を聴き、スマホをいじり、ヲタの精神を逆撫でする。なんだか日本で見たことある、「プヨプヨ的なヤツを消すゲーム」をしている。待機中とはいえ、勤務中だよな(笑)。自衛官とか警察官とかの制服組がコンビニで買い物したり、駅員や車掌がスマホ見たりしただけで「通報案件」になる日本とは、なんと異なる状況だろうか。確かに今は待機中なんだから、別に寛いだって良いわな。いちいち目くじら立てることじゃないわな。

 

そんなこんなでLeedsに到着。LNERの鉄道は、Leedsは通らずYorkを通るが、高速道路のM1はLeedsを通る。

 

市内バスターミナルとコーチターミナルが繋がる、なかなかでかい施設である。30分の休憩。一旦、全員降ろされる。無人のバスは施錠される。11:35までに戻るように。訛りが酷く、聞き取りはギリギリだ。「カムバック」が「コムバック」になっている。

 

NEのコーチがずらっと並ぶ

 

目の前には屋外マーケットがあり、その奥には屋内マーケットがある。しばし散策、えげれすはだいたいそうだが、大したものは全く無し(アンティークマーケットの場合は、さにあらず)。

 

リーズのマーケット

 

時間になり、バスに乗る。「最初は、ニューカッスル、ダーラム、ダーリントンからのお客さん、どうぞ」と、リーズからのお客さんと分けて誘導する。なかなか細かいオペレーションをするやないの。

 

運転手の方のGeordieオヤジは、運転しながら、テイクアウェイの紅茶を飲んでいる。するとそのうち、片手でハンドルを握りながら、もう片方の手で、鞄をゴソゴソしている。何かなと思ったら、パンを出してきた!袋から取り出して喰い始めた!!終わったら今度は、チョコバーの包みを剥いて喰い始めた!!!

 

自由かよ

 

これ、日本だったら、「通報案件」では済まず、「NHK7時のニュース案件」やろ。

 

まあしかし、運転手だって人間だし、人間だから腹も減るし、腹が減ればパンも喰うわな。何もおかしくないわな。

 

南下してきたM1は、倫敦の北部環状A406とのジャンクションで終わる。A406を左折すると、懐かしいBrent Xの巨大モールが現れる。程なく、Golders Greenに停車、数人降りる。

 

Geordieコンビが、何やらしゃべっている。相変わらずさっぱり聞き取れないが、Oxford Stが、とか、Edgware Rdが、とか、言っているようだ。どうも、工事による通行規制と迂回路についての話らしい。「運転手オヤジ」は「1Dおっちゃん」に、その辺の状況を調べてくれと頼み、「1Dおっちゃん」はスマホで調べている。さっきゲームをしていた「彼のスマホ」で調べている。

 

いやいやいや
業務にオノレのスマホ使うんかい
ていうか、そういう情報って、本部から連絡あるんと違うんかい

 

なんというか、「自力感」「手づくり感」「プライベートドライブ感」が満載、てんこ盛りである。「北の国から」の五郎さんが、誰の手も借りずに小屋を建てる、くらいに、「手作り感」が溢れる道中である。しかしながら、同時にこの会社は、「えげれす最大のコーチ会社」でもあるのだ。その会社の「運行」でもある我がコーチは、Finchley Rd、St John's Woodを過ぎ、A41からA5025を経由してA5(Edgware rd)へ進入した。ここは、僕にとっての馴染みの道、嘗て住んでいたKilburn方面に連なる道である。当時よく乗っていた、バスの「16」「98」のルートでもある。Marble Archから、Park Laneの高級ホテル街を経て、Hyde Park Cornerをぐるっと回る。多分ここまでは、適切な迂回を果たしている。倫敦で、間違いない経路を辿れている。Geordieおっちゃんコンビよ、大都会倫敦で、チカラを見せつけているではないか。都会の雰囲気に飲まれず、ぐいぐいやれているではないか。16:02、Victoria Coach Stationに到着。

 

Edgware Rd駅

 

Victoria Coach Station

 

Victoria駅

 

Victoria線でFinsbury Parkへ。先週滞在したホテルにチェックインする。今日は移動だけだが、疲れた。明日は一日、倫敦周遊に充てる。

 

【新】えげれす通信2024_vol.09:買い物と暮らし編 (19/02/2024)

本日は、ダーラムとニューカッスルの、散策&買物の日である。9時頃、先ずは朝食をいただく。

 

師匠の奥さんのRozは、トライアスロンに出たり、ティラピスに通ったりと、なかなかに活動的な人である。年齢はわからないが、めちゃめちゃ細身で、服装もおしゃれで、なにやら妙にカッコ良い。しかも、昨夜の「手作りグレイビー」「手作りヨークシャープディング」などを見ても、料理もこなすスーパーウーマンらしい。朝食に出てきたマーマレードも手作りらしく、食器棚には、ズラリと、手製ジャムの瓶が並んでいる。その奥さんは、「ちょっと走ってくるわね」と言って、さくっと出かけて行った。

 

全部手作り

 

師匠は若いころは、走ったり、運動したり、そういうことをしていたのかな?あんまりしなさそうだけど。ちょっと気になったので聞いてみると、「サイクリング」はよくやっていたとのこと。16歳の時に買ってもらったチャリンコは、いまだに、地下に、置いてあるらしい。えげれすでは、ちゃりんこは、どちらかというと、「趣味」「運動」という目的で使われる。基本的に「ガチ乗り」である。ちゃりんこは、車道でしか走れないし、殆ど全員が、ヘルメットを含む「完全装備」で乗っている。しかし日本では、通勤や通学で使われるんですというと、えげれすでもそういうのも増えてきているよ、とのこと。でもなあ、日本の「ママチャリ」とは、いろいろな意味でまったく違うよなあ。面白いテーマなんだけど、「ママチャリ」の定義って、何なんだ??「ママチャリ」を、英語で如何に説明できるか。見通しが立たなかったので、説明はあきらめる(笑)。

 

その後、たまた師匠邸に電話がかかってきたので、今度はスマホの話になる。奥さんは、スマホを使いこなしているが、師匠は「えげれす版ガラケー」のままである(だから、メールが通じず、実は大変)。当然、オンライン決済とかそういう方面も、やっていない。「まずはスマホを持つことが、次の目標だなあ」と笑うが、持ちそうにはない。

 

流れで、最近の、キャッシュレス決済の話になる。日本では最近、「両替」に手数料がかかるようになって大変なんですよ、と説明する。神社のお賽銭は殆どが小銭で、それをどう処理するかが、神社の深刻な問題なんです、と説明する。また、昨日の教会にあった、「タッチ決済の寄付装置」に驚いた話もする。

 

ま、そんなこんなで、朝食後、普段よりもまったりと世間話をした後、徒歩1分のホテルまで、まずは、トランクのみ、移動する。パソコンや変圧器などは、本日の夜まで、師匠邸に置いておく。さて、散策だ。まずは、大学近辺を経由し、大聖堂へ。

 

花越しに

 

入場料に£5の寄付を求められるようになったのを去年発見して、なんとまあ世知辛くなったものよのぅ、と、嘆いたわけだが、去年師匠に確かめたら、あれは「義務」ではないとのことだった。本日も改めて説明を読んだら、やはり、「できるならば」という譲歩付きであった。しかるに、入場ゲートにはでかでかと、

 

£5の寄付を!

 

と書いてある。その表示は紫色でめちゃめちゃ目立っており、導線が「支払いゾーン」を避けては進めない仕様に設定されている。あれをすり抜けるのはしんどいよ。

 

かつて、学生時代には、暇なときにボーっとするために、この世界遺産の中の椅子に座りに来ていた。そんな信じがたい贅沢な時間に思いを馳せつつ、本日は、去年と同じく、「無料エリア」のみをぶらぶらする。

 

無料ゾーンをうろうろ

 

本日は、お土産を買う日にしている。スコットランドでたっぷり買おうと思っていたのだが、適当な店があまり見つからず、大都市であるアバディーンインバネスも、夜に着いて朝に出発するスケジュールだったので、結果として、殆ど買えていない。一軒だけ、絶景ゾーンで、「泥炭風呂宿」と同じようにこちらも「ポツンと一軒家」状態の、可愛らしいお土産屋があった。そこは、中に入ってみると、外観の見た目を越えてくる素晴らしい店だったので、チラチラと買うことは買った。しかし、大々的には、まだほとんど何も買っていない。明日は倫敦だが、せっかくなら、倫敦で買えないものを買いたい。ダーラムやニューカッスルは「イングランド北部」であり、独特の文化を持つエリアだから、何かあるかもしれない。そんな期待をもって、まずは、ダーラムの店を見ていく。

 

僕が当時、住んでいた時から存在していた、ウールやニットなどを扱う衣料品店に行ってみる。ちょうど、バーゲンをやっている。マフラーが、一本で£55、二本なら£100、というバーゲンになっている。ちょっと食指が動く。

 

店内に、一人の中国人女性客がいて、めちゃめちゃ大声で、携帯でしゃべっている。めちゃめちゃ、めちゃめちゃ、デカい声で、しゃべっている。中国人ってのは、なんでこう、デカい声でしゃべるのかねえ。なんで携帯なのに、スピーカーにして、発話部を自分の口に向けてしゃべるのかねえ。おかげで、ヤツのしゃべりだけでなく、相手のしゃべりも聞こえてくるんだよ(相手の声も、相当、デカい)。あのスタイルをやっているのって、大体、日本人以外のアジア人だよなあ。あ、中東系もいるか。耳と口に携帯をフツーにあてて、「電話」として、話せば、事は足りると思うんだが。そうすれば、もう少し、声も、小さくなると思うのだが。マレーシアでもそうだが、アジアでは、そういうヤカラも多いし、電話の声がデカい奴はたくさんいる。しかし、ここはえげれすぞ。しかも、外国人がうじゃうじゃいる倫敦ではなく、ほぼいないダーラムぞ。そんな節操の無いヤカラはほとんどいない地域やぞ。しかるにそのねえちゃんは、辺り構わず、我関せず、店内を動き回り、長時間、デカい声でしゃべり続けている。・・・ったく。

 

ようやく電話を終えたと思った刹那、今度は件のマフラーのところに来て、スタッフに質問し始めた。引き続き観察する。

 

「このマフラー、例えば5本買うと、どうなります?」
「£100×2+£55で、£255です」

 

当たり前のことを、何を言ってんだ?算数わからんのか?そう思って聞き耳を立てていると、ネエチャンは、信じがたい台詞を吐いた。

 

「まかりませんか?」

 

まさに驚天動地。おいおいおい。ここはえげれすぞ。えげれすで、値切るなよ。ここは「定価がないアジアのマーケット」じゃないんだぜ?場を弁えろよ。空気を読めよ。

 

店のスタッフさんは、それでも真摯に答えた。

 

「・・・ええと、学生さんですか?」
「いや、違います」
「学生さんなら、学割が効くんですが」

 

チャンネエは、さらに、信じがたい程の厚顔さを繰り出してくる。

 

「なんとかなりませんか?」

 

まったくよぉ。ならねーよ。オマエ、なんやねん。少しは状況を理解しろよ。日本人と同じく、えげれす人もまた、グイグイ系が嫌いなんだよ。「譲歩」「謙譲」「気遣い」など、「一歩引いた態度」を愛するのが、日本人であり、えげれす人なんだよ(だからえげれす人は、グイグイ系のアメリカ人を馬鹿にする)。マジで、この、面の皮の厚さには、辟易する。僕はあきれ果てて、その店を出た。なんだか買う気を失くしてしまったのだ。

 

気を取り直して、ニューカッスルに向かうことにする。ダーラムのバスターミナルに行くと、去年、建築中だったのが、新築になり、供用を開始していた。昔と同じ場所だが、めちゃめちゃ近代的になってるぞ。

 

外観

 

内観

 

ニューカッスルのEldon Sqは、巨大なショッピングモールであり、バスターミナルを併設している。隣接するデパートのFenwickは、当時、そのフードホールでよく、摘みを買っていた。中に入ると、めちゃめちゃオサレに変貌している。当時よく買っていた、ザリガニのBrine漬がある。これは、シンプルだが、実に旨い。ただ、これは倫敦でも手に入るので、今日はやめにする。チョコレートやら紅茶やらビスケットやら、「ニューカッスル周辺産」のブツがたくさん揃えてあるコーナーがあったので、結構な物量を購入する。こういうブツは、倫敦では手に入らぬ。

 

Eldon Sq

 

FenwickのFood Hall①

 

FenwickのFood Hall②

 

そのまた隣のデパートのJohn Louisは、倫敦にも店舗があるので、ニューカッスルで、敢えて、買う必要はない。しかし、たまたま入って中を見たら、オサレなテーブルクロスとか皿とかマグカップとかがあった。それらを、熱狂的に、購入する。ついでに、昨日、「実用状態」を初めて目の当たりにし、印象に刻まれた「グレイビーボート」も見つけたので、購入する。ちなみにこれらは、帰って調べたら、あの「ザ・コンラン・ショップ」の創始者、テレンス・コンランの長女、ソフィー・コンランのブランドだった。店内で見たときには、「コンラン」の名字と、「ソフィー」という女の名前だったから、そうかなと類推していたんだけど、やはり当たっていた。

 

そういえば、「グレイビーボート」って、日本人におなじみの、カレールーを入れるあの「例の器」の名前なんだよな。「グレイビーボート」って、「カタカナひとつなぎ」として、何やら「不思議な音感の言葉」として、まるっと認識していた。しかし、昨日聞いて、それは「gravy boat」であることがわかった。つまり、「カレー入れ」ではなく、「グレイビー入れ」なんだな。

 

帰宅して、最後の晩餐をいただく。本日は昨夜の残り物である。

 

残り物、だが、それが良い

 

師匠との食事は結局6回、そのうち家で、「ブリティッシュホームミール」を体験したのは、外食をした①⑥を除く、合計5回だった。それぞれの内容は以下。

 

①2/17(土)夜:外食(中華レストラン)
②2/18(日)朝:トースト、ジュース、紅茶
③2/18(日)昼:トースト、ジュース、紅茶、鰊酢漬(既製品)、サーモン(既製品)、サラダ
④2/18(日)夜:ローストビーフの塊、付け合わせの煮野菜(芽キャベツ、人参)、ヨークシャープディング(自作)、グレイビーソース(自作)、ローストポテト、ローストパースニップ(parsnip=人参に似た根菜)、デザート(洋ナシのパイのクロテッドクリームかけ、自作)食後酒(ブランデー)
⑤2/19(月)朝:トースト、マーマレード(自作)、ジュース、紅茶
⑥2/19(月)昼:単独外食(ニューカッスル
⑦2/19(月)夜:昨夜の残りのローストビーフ(チャツネ)、サラダ、昨夜の残りのローストポテト、昨夜の残りの洋ナシのパイ

 

朝食は、基本的に、軽く済ませるんだね。それは日本でもそうか。しかし、えげれす朝食のバリエーションは、圧倒的に少ないんだな。基本的にトーストのみだし、「食パンを焼くのか、ベーグルを焼くのか」、「焼くもの」が変わるだけである。ナニガシに、バターやジャムを塗って、食べるだけである。日本の朝食の、「白メシ+様々なおかず」のバリエーションが恋しくなる訳だ。ちなみに、旅中に僕が自前でメシをこなす場合は、去年と同じく、「外食」ではなく、「スーパーで買ったものを喰う」ことになる。これは、経済破綻を防ぐためである。そうなると、スーパーで、しかも、電子レンジなしで、冷たくても喰えるもの、という制約が出てくる。必然的に、バリエーションが貧困になる。来る日も来る日も、クロワッサンとかパスティとかになってしまう。

 

昼食も似たようなもんである。基本、朝食と昼食は、「調理」はせず、既製品を食すらしい。鰊酢漬とか、スモークサーモンとか、各種パテとか、なんならカニ味噌缶詰とか、こうしたものはすべて、「パンに載せるブツ」「パンの表面に塗るブツ」である。火は使わず、済ませる。卵の一つでも、焼くとか、そういう「調理」はしないらしい。

 

夕食は、外食の頻度がどれくらいなのかわからないが、家で食べる場合は、こんな感じらしい。日曜日は、結構頑張るらしい。月曜日は、それの残りらしい。日曜日に、肉塊がまだ半分残っているなあ、しかし「もっとどう?」と勧めてくれないなあ、と思っていたけど、やはりそういうことだったのね。日曜日の夕食は、まさに、「supperではなくdinner」という感じだった。肉塊をそのまま載せる台、テーブル上でそれを切り分けるための「肉切ナイフ」と「肉刺フォーク」、グレイビーボート、そうした「えげれすテーブルウェア」が正統的に並ぶ。十分な時間をかけて食べ、家族はこの一週間の出来事を皆に話す。食事が終わるとデザートがある。きちんと「段階」を踏んだ、ある種の「コース」仕立てになっている。これを目の当たりにしたので、British traditionのテーブルウェアが欲しくなったというわけだ。

 

ちなみに⑦では、④では出なかった「Branston Chutney」(既製品)が出てきた。もともとはインドの調味料で、1600年代から、えげれすに入ってきていたらしい。「身近にあるフルーツや野菜にビネガーと砂糖、塩、スパイスを加え、長時間煮た保存食であり、イギリス人好みの、ビネガーが効いた味わいになった」らしい。師匠曰く「えげれすの伝統食」であり、とりわけ、このブランドは、めちゃめちゃ昔からあるヤツらしい。チャツネはインドのもので、カレーの隠し味という認識だったが、えげれすの「伝統」になっていて、ローストビーフや付け野菜に合わせるのだとは知らなかった。そしてこれが、また、絶妙に旨い。どんなところで、何を使って、作っているんだろうと思い、瓶の裏を見ると、

 

Mizkan

 

と書いてある。なんとミツカンが絡んでいる!それで、ネットで調べてみたら、

 

ミツカングループ本社は15日、英プレミアフーズ(ハートフォードシャー州)から食酢、ピクルスの有力3ブランドと生産設備を取得することで合意したと発表した。取得額は4100万ポンド(約50億円)。ミツカンは2002年に英2位の食酢メーカーを買収して現地で家庭用食酢市場に本格参入しており、食酢関連の事業拡大を急ぐ。現地法人を通じて、7月末までに手続きを終える。取得するのはモルトビネガー麦芽酢)「サルソンズ」、ワインビネガー「デュフレ」、ピクルス「ヘイワーズ」の3ブランドと、マンチェスター郊外にある工場。サルソンズは食酢市場で32%、ヘイワーズはピクルス市場で19%を握る英国のトップブランド。」(日経新聞、2012年6月15日)

 

Branston is an English food brand best known for the original Branston Pickle, a jarred pickled chutney first made in 1922 in the village of Branston near Burton upon Trent, Staffordshire by Crosse & Blackwell. The Branston factory proved to be uneconomical, and production was moved to Crosse & Blackwell subsidiary, E Lazenby & Sons in Bermondsey, London, where it invested in new buildings in 1924 and 1926, which remained in use until 1969.
In 2004, the pickle business was sold by Nestlé to Premier Foods and production was moved to Bury St Edmunds in Suffolk. Premier Foods sold the brand to Mizkan in 2013, at which time it ceased to be labelled as Crosse and Blackwell because in Europe this name was sold separately to Princes Group. Over 17 million jars a year are sold in the UK.(Wikipedia

 

ほほぉ。やるやん、ミツカン。グローバル企業だったのか。

 

チャツネ

 

師匠邸では、本日、家事がいろいろと忙しかった。家じゅうのカーペットやラグを洗ってもらうことになっていて、朝から業者のおっちゃんが家に入ったり出たりしている。昨夜から、カーペットやラグの上に載っている障害物を避難させる作業を行っている。「洗う」ってどうするのかと思ったら、おっちゃんはわざわざ、「水タンク」的なものを持参していた。日本みたいに、玄関脇の水道の蛇口なんてないからねえ。なかなかの大仕事だねえ。そして明日は、二週間に一度の「リサイクルごみの日」だそうで、師匠とロズはさっきから、家じゅうのごみの分別と、それを専用のコンテナに入れる作業をしている。昔、「えげれすに住んでいた」とはいえ、それは「間借り」だったわけで、こういう「暮らしマター」とは無縁だったので、なかなかに興味深い。生活の一端を覗いた感じである。

 

水タンク

 

リサイクルごみ

 

師匠に別れを告げ、ホテルへ戻る。ロズはなんと、手作りジャムを一瓶くれた!最高のお土産じゃないか!さて明日は、コーチ(長距離バス)で、一路、倫敦へ。

【新】えげれす通信2024_vol.08:サンデーサービス編 (18/02/2024)

本日のダーラムは晴れ。気温は10度もある。あったかーい。

 

奥さんから、今日も泊まる?と聞かれる。もし構わないなら、ぜひとも、と答える。しかし、予約した至近のホテルは、キャンセルができないのだ。約15000円が無駄になるなあ。

 

朝食後、教会へ行く。ここは、昨年も訪れた、英国国教会の「St Oswald's Church」である。Wikiによれば、「The church is a grade II listed building and it dates from the 12th century」とのことである。

 

あっさりと平安時代の建築物

 

石柱とステンドグラス

 

パイプオルガン

 

地元のおっちゃんおばちゃんが、ぞろぞろと、わらわらと、集まってくる。彼らはここに「所属」しているのかな?キリスト教のことは、さっぱりわからない。師匠に聞くと、「ダーラムには教会が三つある」「大聖堂に行っても良いけど、こっちに来ても良い」のだそうだ。わかったような、わからないような、である。

 

本日の行事は、「コミュニティのチャリティ(ドネーション)で£2012.50集まったので、救急車を買った」件の「お披露目」なんだそうだ。師匠が、そのコミュニティのチェマンだそうである。その前に、通常の「Sunday Service」がある。

 

「Sunday Service」には、フィジーでは、何回か、参加したことがある。しかし、えげれすでは初めてだ。非クリスチャンでも参加して良いらしいし、写真を撮っても良いとのことなので、興味津々で臨む。

 

祭壇(?)は前にあり、パイプオルガンなどの楽器は後ろにある。choir担当の人たちも、後ろに固まって、練習している。司祭?牧師?呼び方はわからんが、聖職者のおっちゃんが祭壇のところに立ち、始まった。

 

式次第、的な①

 

式次第、的な②

 

式次第、的な③

 

式次第、的な④

 

式次第、的な⑤

 

式次第、的な⑥

 

 

式次第、的な⑦

 

 

式次第、的な⑧

 

式次第、的な⑨

 

 

式次第、的な⑩

 

「進行表」、はたまた、「式次第」みたいな冊子があり、項目で分けられているので、今、何をやっているのかは、なんとなくわかる。ただし、通常は出てこないような英単語ばかりなので、わかるようでわからない。

 

前の壁のところに、数字が掲示されている。数字は変えられる仕組みになっているようである。師匠に聞くと、「今日、唱和する、聖書の節の番号」なんだそうだ。

 

「Prayers of Penitence」。「penitience」は「懺悔」らしい。聖職者が、何やら言うと、集まった人々も、何やら言う。どうやらその台詞は、「進行表」に載っているものらしい。

 

「Kyrie eleison」。「求憐(きゆうれん)誦」。なんじゃそれ?

 

「The Collect」。「特祷」。皆目わからぬ。皆が唱和する「Amen」だけは合わせられるぞ。

 

「Liturgy of the Word」。「祈祷書」。旧約聖書からフレーズを読み上げるらしい。ここで、「The Peace」という項目がある。聖職者が、「平和(安らぎ?)」を皆に紹介する。彼が「安らぎが皆に訪れるように」と言った後、各自が「peace with you」と言いながら、周囲の人々と笑顔で握手をする。遠くの人とは目を合わせてサインを交換する。僕も交じって、背後のおばちゃん二人と「peace with you」と言い交わし、握手する。

 

「Sermon」。「説教」。この単語は知っていた。聖職者のおっちゃんが、何やら「小話」的なものを話し始めた。内容を搔い摘めば、「先日、車を運転していたら、ちょっとしたアクシデントがあったのよ。相手と言い合いになりそうだったけど、何とか落ち着くことができたんだな。クリスチャンは神の教えを実践しないといけないけど、常にクリスチャンが「クリスチャン」だとは限らないわな」みたいなものだった。これは、聖職者が、身近な出来事に擬えて、神の教えを伝える、ということなんだろうな。聖書の一説を朗読するクダリはさっぱりわからんが、こういう世間話ならわかる。時々ウィットを利かせているので、礼拝者の方にもクスリとした笑いが起きる。

 

「Preparation for the Table and Taking of the Bread and Wine」「The Eucharistic Prayer」。「聖餐用のパンとぶどう酒」だそうだ。「パンと葡萄酒」の件はなんとなく聞いたことがあるけど、文脈はよく知らない。「The Breaking of the Bread」「We break this bread to share in the body of Christ」だそうだ。

 

「Giving the Communion」「聖体授与」。  聖職者が祈りをささげた後、「聖体」としてのパンと葡萄酒が配られる。皆は聖職者のおっちゃんのもとに一列に並び、パンと葡萄酒が授与される。あとで師匠に聞いたら、この「パン」と「葡萄酒」は、ホンモノだそうだ。・・・そうなると、聖職者氏が、前もって、テスコとかセンズベリーとかのスーパーで、クレジットカードか何かで購入したんかな。「今日はこっちのワインが安売りだから、こっちにするか」とか考えながら、買い物をしたのかな。人類学でも、儀礼財が市場で購入される、ということが論点になったりするけど、ちょっと似ているな。皆が順に同じカップで飲むので、サブ聖職者のにいちゃんが、一回一回、カップを布巾で拭う。これ、コロナの時はどうしたのかな。エタノールとか次亜塩素酸とかで殺菌したのかな。

 

パンと葡萄酒

 

最後に「The Dismissal」「解散」があり、皆で「Thanks be to God」と唱和して、「Sunday Service」の部は終了。サブ聖職者のにいちゃんは、蠟燭の灯を消して回るのだが、なにやら妙な器具を使っているぞ。日本でも、線香の火を消す時に息を吹きかけることを避けようとするが、キリスト教でも同じなのかな。これも人類学的に面白いな。あの器具の名前は何というんかな?どこで売っているんかな?土産に欲しいな(不謹慎、なのか?!)。

 

興味深い器具

 

出口には「寄付」のコーナーがある。なんと、「VISAタッチ決済」が可能なシロモノだった!日本の神社の賽銭も、小銭問題が勃発していることだし、いずれ、paypayとかになるのかな。

 

ちと合理化しすぎではないか

 

次に、今日の「行事」である、救急車の贈呈セレモニーがある。まずは、外に停めてある救急車の実物を見に行く。後ろに、子供が描いた絵がデザインされていて、なかなか可愛らしい。

 

救急車

 

向かいの建物に移動して、簡単なお茶会がある。聖職者のおっちゃんも、むっちゃ普段着に着替えて座っている。当たり前と言えば当たり前だけど、僧衣?袈裟?を脱げば、聖職者といえども「ただのおっちゃん」なわけだし、一瞬で、周りに同化する。師匠によれば、彼は、正式な聖職者ではないそうだ。これまた、資格やら、階級やら、役職やら、聖職者の世界は複雑でわからないけど、謂わば「バイトの聖職者」ってことになるのかな。全員で集まり、そこで改めて、救急車の「御礼」と「お披露目」があり、皆で拍手をして散会。いやあ、なかなかに興味深い、貴重な経験を、させていただいた。

 

昼食後、師匠と奥さんと、犬のフローラと、車で10分ほどの「Broom Park」に行く。目的は言うまでもなく、「例のやつ」である。公園を散歩しながら、「例のやつ」をやる。またしてもエンドレス。園内は恐ろしく広く、歩道が延々と続いている。本日は日曜日、歩道には、歩く人、走る人、チャリに乗る人、犬の散歩をする人など、かなりの人がいる。今日はいなかったが、馬に乗る人もいるそうだ。えげれす人は、本当に、「散歩」が好きだよなあ。そして、すれ違う時には、互いに必ず会釈を交わすのだ。嗚呼、社交性!(二度目)。

 

延々と道が続く

 

フローラは、水浴びがことのほか好きらしく、「例のやつ」が歩道脇の水場に落ちると、それを咥えるよりも、水浴びに夢中になってしまう。園内の土は、濡れると「泥」になるヤツなので、水場はドロドロなのだが、フローラはお構いなしに、全開で水浴びに勤しむ。すると、「例のやつ」の泥は取れて綺麗になるが、フローラ自身は、凄まじい「泥犬」になる。

 

この先に水場がある

 

しかし、奥さんは、凄まじい「泥犬」を、あっさりと、車に載せる。うーむ、やはり、Never Mind精神だな。「細けぇコトは良いんだよ」的な話として、sermonに採用してくれないかな。

 

本日は予定変更、ホテル泊ではなく師匠邸泊になった。宿はキャンセルできないが、仕方ないな。明日は、師匠邸に家族の誰かが来るらしいので、僕は部屋を空けなければならない。明日はホテル泊なので、チェックインだけ、済ませる。

 

一泊¥15000は高すぎるよな

 

本日のディナーは、奥さんの豪勢な手料理だった。ヨークシャープディングが出てきたので、当然「買ったもの」だと思い、「これは、作るとしたら、どれほど難しいものなのか」と訊ねようとした。すると、まさかの手作りとな。えげれす人は料理をしないと言われているが、奥さんは違うらしい。グレイビーソースも、手作りっぽい。

 

豪華なディナー

 

このグレイビーボートはかっこよかった

 

フローラは寝そう

 

明日は、ニューカッスルとダーラムを散策し、買い物をする予定。

【新】えげれす通信2024_vol.07:ダーラムにハァハァしない奴は素人編 (17/02/2024)

小腹が減ったなあ。現在、朝の5時。レンタカーをアバディーン空港のオフィスに返却し、ホテルまで戻ってきたところである。超田舎の、「ムッシュ吉幾三エリア」で生き抜くコツは、「食糧を、いつ、どこでも、切らすな」であるので、常に潤沢に備わっている食糧の中から、和テイストのカップラーメンを食べる。昨今のえげれすでは、「カツカレー」が異常なほどの人気らしいと、前にニュースで知っていた。なんなら、「カツがないカレー」でも、「カツカレー」と呼ばれているらしいことを、ニュースで知っていた。

 

「カツ」の意味、わかってないやん

その、ある種のトレンドであるらしい「カレーヌードル(和食屋のITSU監修)」を買ってあるので、それを食べてみる。・・・旨いやないの。

 

本日の行程は、

 

アバディーン952→エジンバラ1225
エジンバラ1300→ダーラム1438

 

である。予約時に、なぜ、エジンバラで乗り換えなのか、と思ったが、本日、駅で確かめて、その理由が分かった。①はダーラムに停まらない。なので、後続の、ダーラムに停まる②に乗り換えろ、ってことなんだな。

 

本日は土曜日。だからなのか、始発のアバディーンから、結構、混んでいる。そして、途中駅から、どんどん、乗ってくる。なんだなんだ?通路に立つ人まで現れたぞ。そんなの、「平常時」のえげれすでは、見たことないぞ(「異常時=去年の、悪天候による交通障害」のえげれすでは、体験したけれども)。

 

エジンバラまでもうすぐの「Inverkeithing」駅にて、我が①列車は、動かなくなってしまった。LNERのサイトを見てみると、「the communication alarm being activated on this train」のせいで遅れているらしい。そもそも今は、「engineering work」の期間であり、キンクロまでの直通列車はない。全てが、倫敦の手前のピーターバラ(Peterborough)行である。色々と乱れているのに、「engineering work」ではない方の理由で遅れるって。。。大丈夫か?

 

結局18分遅れで、エジンバラに到着。①の降車ホームから②の発車ホームは離れており、重たいトランクを転がしてダッシュし、息が上がる。はあはあ、する。本日は、混乱の影響を、さほど受けずに済んだ。10分遅れでダーラム到着。

 

師匠と、感動の再会を果たす。師匠の奥さんも迎えてくれる。

 

今回は、本日一泊目が師匠亭、明日と明後日が、師匠リコメンドの、しかも、師匠亭から徒歩1分の、ホテル泊である。ちなみにこのホテルは、なんとなくの場所は把握しているけれども、詳細はまだ確認していない。車に乗せてもらい、師匠亭に到着。犬のフローラも元気なようである。

 

奥さんは、去年も断続的にしゃべっていたので、その「人となり」は、まずまず、よくわかっている。彼女がどういう経歴なのかは不確かだが、アクセントは洗練されている、完全にミドルクラスのもの、学術的素養も確か、ということはわかっている。その彼女と一緒に、早速、フローラの散歩に同道することになった。

 

奥さんはフローラにリードを繋ぐ。フローラは繋がれる時はじっとしている。街区を歩く時は繋ぎ、そうでない時は外す。繋がれる時も外される時も、以心伝心、はたまた、当意即妙、フローラはおとなしく、じっとしている。なんなら、状況の変化に応じて、彼女の方から、「繋がれ」に、あるいは、「外され」に、奥さんのところへやってくる。…いや、なんて賢い犬なんだ。

 

何度も書いていると思うが、僕は、犬が怖い。日本の犬は「信頼できない」からである。しかし、えげれすの犬は「信頼できる」。

 

墓地に入ると、フローラは、何かを予感したように、こちらを向いて座る。阿吽の呼吸で、奥さんは、緑色の「例のやつ」を足で蹴った。去年、師匠と散歩に行った時には、師匠は「例のやつ」を投げていたが、それは、「例のやつ」が「紐付き」だったからだと気づく。本日のやつは、ただのボールである。奥さんがそれを遠くに蹴るやいなや、フローラは瞬間的にコーフンし、走ってそれを取りに行き、咥えて戻ってくる。行儀良く座りながら、ハアハアする。

 

蹴る

 

途中、フローラが、草むらに入って出てこない。しばらくして戻ってくると、フローラが咥えている「例のやつ」がオレンジに変わっている。どうやら、その辺に落ちていた別物を、拾ってきたらしい。すると奥さんは、

 

「最初のはまた後で拾いましょう」

 

と言って、あっけなく「放置」を選択し、サクッと先へ進んだ。

 

…これぞ、「never mind 」の極意だ。。。

 

泰然自若。ハプニングにも、露ほども動じない。心の乱れを一切起こさず、凪のココロで軽く受け流す。まるで剣豪の、あるいは、禅の、境地だ。「そんなことも、あるでしょう」というココロの声が聞こえる。いや、聞かねばならぬ。

 

坂になっている広い丘陵に来た。「いつもの絶景」である。

 

贅沢な散歩やな

 

相変わらずフローラは、「例のやつ」を咥えて戻ってくると、奥さんと僕の脚元に交互に寄ってくる。そしてそれを、我々の脚先に置く。「エンドレス」である。「終わりが見えない作業」である。しかし、そこまで熱望されると、何度でも、蹴らない訳にはいかないではないか。しかも、そうなると、フローラのコーフン状態は上がっていく。さらに、作業のその間隔が縮まっていく。止まるところを知らない。

 

追いかけて、戻ってきて、ハァハァ
追いかけて、追いかけて、ハァハァ
追いかけて〜 追いかけて〜 お〜いかけて〜 ハァハァ♪

 

全員が、吉幾三の「雪国トランス」状態になる。

 

帰宅して、お茶を飲みながら、師匠と奥さんと、世間話をする。

 

「この前、スカンジナビアを周ってきたのよ」
「良いですねえ」
「ナルヴィクってところに行ったんだけど」
「僕も行ったことあります」

 

その後、僕の、スコットランド周遊話をする。

 

「北西部をぐるっと周ってサーソーまで行きまして」
「ウィックとかサーソーって、本当に何もないところよね」
「だがそれが良いんです」
「あなたは何故そんなところばかり行くの?」
「僕は、〈果て〉が好きなんですよ」
「なるほど!」

 

泥炭風呂の宿の話や、周った蒸留所の話をすると、奥さんが、食事の後にモルトを呑みに行きましょうかと誘ってくれる。最高の展開に、フローラの如く、コーフンする。ハァハァする。すると師匠は、

 

「僕は今日はあんまり酔えないんだ」
「ほう?」
「明日、教会の行事があって。僕はチェアマンなんだよ」
「そうなんですか」

 

僕は、明日のその行事に同道することになった。

 

さて、メシを食べに行く。町と師匠邸の間に、小さい中華レストランがあるのは知っていた。「広東フュージョン料理」と書いてある。そこに行くらしい。入ると、中は、小さくはなかった。驚くほど広く、素晴らしくオサレである。入口から覗いて予想していたのと違いすぎる。吹き抜けで、眼下にはウェイティングバーが見える、2階の席につく。

 

オサレやないかい

 

・飲茶タワー(例の蒸器が重なって出てくる)
・春巻
・カボチャコロッケのカレーソースかけ
・茄子の炒め物

などを頼む。

 

どれも旨かった

 

メニューに「sesame edamame」という謎料理がある。気になるじゃないか!師匠と奥さんに、「ニッポンの枝豆」について、アツく語る。

 

謎枝豆にハァハァ

 

出てきたのは、居酒屋標準レベルの分量の、フツーの、枝豆である。奥さんは、箸で摘もうと悪戦苦闘しているので、コレは手で良いんですよとレクチャーする。なんなら、ナイフとフォークで豆を出そうとするので、「枝豆標準スタイル」の何たるかをレクチャーする。奥さんは、最初の枝豆を、皮ごと全部、口に入れてしまい、丸ごと噛み砕いてしまい、枝豆は、まことに無残なことになっている。「枝豆作法」も、我々にとってはアタリマエでも、初心者にとってはアタリマエではないのかと、当たり前のことを想う。

 

なるほど確かに、胡麻油の風味がある。居酒屋メニューで「枝豆バター」なるブツを食べたことがあるけど、「枝豆胡麻油」ってのも乙なもんだな。ただし、これは、「標準枝豆」ではないので、念のため説明する。

 

「日本では枝豆はめちゃくちゃ一般的なんです」
「うん」
「だけどこれは、ちょい違います。普通は塩茹でです」
「まさにフュージョンだわね」

 

中華の箸は、先も太いので、滑るブツを掴むのは、なかなか難しい。春巻ホールドは最難関タスクのひとつである。我々でさえ、飯粒ひとつから重量級のものまで、幼少のみぎりから「掴む」鍛錬を繰り返し、漸く体得した極意を駆使しなければ、春巻を倒すことはできない。先が太い中華箸なら、難易度はさらに上がる。

 

果たして、奥さんは、何度も失敗し、遂には、箸を落としてしまった。

 

箸はフェンスを越えて飛んでいき、階下のウェイティングバーで呑んでいたおねえちゃんの頭上に、落ちた。降った。刺さった。おねえちゃんは、咄嗟に何が起きたのか理解不能な、驚愕の表情で、こちらを見上げた。しかし、奥さんが謝り、「箸降るレストランへようこそ!」とお決まりのジョークを繰り出すと、互いに爆笑した。これぞ社交性!

 

その他、「ディムサムは中国や日本の漢字では〈飲茶〉と書いて、〈茶を飲みながら色々食べる〉という意味である」「えげれすでは、謎の〈カツカレーブーム〉だけど、カツが無いカレーもカツカレーと呼ばれているらしい」などなどの話で盛り上がる。やはり食べ物ネタは鉄板である。

 

高いけど、美味いレストランだった(枝豆は¥800!)。階下の会計のところで、ご馳走になった御礼を言う。

 

「素晴らしいレストランでした。思っていたより広いし、美味しいし」
「そうね、ここはちょっと特別だわね」
「箸も降ってきますしね」
「(笑)」

 

モルトが呑めるバーに移動する。通常、パブには、シングルモルトの品揃えはほとんど無い。何処に連れて行ってくれるのかと思っていると、奥さんは、中華レストランの向かいの店に入っていった。確かにここにパブがあるのは知っていた。ホテルのバーらしい。しかし、ここなのか!師匠邸から徒歩1分、最適な環境じゃないか。

 

ウィリアムモリスの壁紙、ホンモノ暖炉、ズラリと並ぶシングルモルト。ハァハァしながら見ていくと、師匠曰く、

 

「ここはめちゃくちゃ古いんだよ」
「ほう(〈古さレベル〉のエゲツなさには慣れている)」
「音楽無し、ダーツ無し、フットボール中継無し」
「素晴らしい」
「ちなみに」
「はい」
「玲が明日泊まるのはここのホテル」
「え!ここなんですか!」

 

クラシックなバーにハァハァ(*´Д`)

 

僕はそこで、タリスカーグレンモーレンジを呑み、帰宅した。

 

あゝ、素晴らしき哉、ダーラム!

【新】えげれす通信2024_vol.06:ネッシーをネタにするな編 (16/02/2024)

朝、陽の光の下で、あたりを見てみると、泥炭湿地帯もなかなかの趣がある。川の水はやはり、茶色がかっている。本日はどうやらまずまずの天気のようだ。

 

宿のダイニング

 

宿周辺

 

宿

 

ヤツらも喰っている。相変わらず喰っている。泰然と喰っている。いつもいつも思い起こすのは、あの有名な、三好達治の詩だ。

 

雨の中に馬がたつてゐる
一頭二頭仔馬をまじへた馬の群れが 雨の中にたつてゐる
雨は蕭々と降つてゐる
馬は草をたべてゐる

 

「ヤツら on the road」という鉄板の技を、順当に繰り出しつつ、喰っている。ヤツらの外郭が、朝日を浴びて、金色に輝いている。三好達治も、えげれすに来たなら、ヤツらで絶対に詠むだろうな。

 

またしても絶景①

 

またしても絶景②

 

朝日を浴びる①

 

朝日を浴びる②

 

神々しい

 

一見、いないっぽいが

 

やっぱり「on the road」

 

このトラクターのおっちゃんが奴らを誘導する

 

見たことない速度で、一斉に、移動する

 

一列縦隊で、尾根を、移動する

 

 

ここしばらく、山中ばかり走っていたが、A897はヘルムズデール(Helmsdale)にて、東海岸に出る。

 

海に出た

 
ここには、かつて立ち寄って感動した、素晴らしきレストランがある。愛用ドライブマップには、「キワモノレストラン。カンガルー、ワニ、野鳩、イノシシ、鹿、キジなどあり。シーフードは絶品」というコメントが記入されている。走っていると、なんとなくの見覚えがある建物に出会った。多分、ここだな。

 

ヘルムスデールからA9にて海岸沿いを南下する。最初の目的地は、クライヌリッシュ蒸留所(Clynelish Distillery)。グレンリベットやグレンフィディックという、有名、かつ、観光地化されてしまったところとは異なり、穴場感がある。なかなかこんなところまでは来れないからねえ。海を臨む高台にあり、天気も良いし、むちゃくちゃ綺麗だ。クライヌリッシュはジョニーウォーカーの原酒でもあるらしい。グッズも一番充実していた。「ウィスキーストーン」なる、実に気の利いたグッズが売られている。石のキューブで、これを洗い、冷凍庫に入れ、何かを冷やして飲むときにこれをグラスに入れる、のだそうだ。アリキタリのものやアリフレタものには食指が動かないワタクシとしては、これは響いた。響いたけれども・・・重量を気にする旅行中で、「石」を買うのはねえ(笑)。めちゃめちゃ惹かれたけど、断念する。ここは受付のおっちゃんの感じが最大級に良かった。クライヌリッシュは、これまでは、それほど贔屓にしてはいなかったが、今後は気にしていこうと思う。

 

クライヌリッシュ

 

ジョニーウォーカーさん

 

ビジターセンター

 

もうすぐインバネス、というテイン(Tain)、そして、その手前にあるグレンモーレンジ蒸溜所(Glenmorangie Distillery)に立ち寄る。ここも海の至近にある。グッズはいまいち。特筆事項はあまりなし。先へ進む。

 

インバネスからA82でドラムナドロッキット(Drumnadrochit)に着く。ここには、「ネッシーの聖地」、ロッホネスセンター(Loch Ness Centre)がある。僕はここには既に、5~6回来ている。ネッシーのことを、とことん真面目に、深く抉ってくる、なかなか趣深い施設である。しかし、なんだか、リニューアルされているっぽい。

 

ガワは昔と同じだが

 

ナカはオサレになっていた

 

ネス湖


 
嘗てここでは、入場料を払うと、資料の展示と、説明ビデオを、見ることができた。ビデオでは、「ネッシーを目撃した人たち」が、コーフンした面持ちでその時の様子を語っていた。その後の「ネッシー捜索プロジェクト」では、ネッシー発見に命を懸けた男たちが、その壮大な取り組みを、アツく語っていた。プロジェクトでは、良い歳をした男たちが、冷やかしなどなく大真面目に、捜索に打ち込んでいた。細長いネス湖の端から端まで長い網をかけて、まるで「追い込み漁」でイルカを獲るが如く、ネッシーを追い込むプロジェクトが、実行されたりした。それは、確実に、「BGMに中島みゆき」「田口トモロヲの語り」が必須である、アノ番組のテイストが完全にハマる奴であった。作り方次第では、感涙さえ流れる、壮大な物語に成り得るものであった。茶化したり、笑ったりしてはいけない、荘厳にして、真剣な、物語であった。

 

各所の入場料の高騰にビビりまくっていた僕は、ロッホネスセンターのツアー£14.35(¥2800)に頭を抱えたが、やはり、あの、「トモロヲみゆきテイスト」の魅力には抗えず、久々にあの、壮大な、しかも真剣な、物語を見ることにした。喉元まで出かかっている、

 

そんなアホなことになんで・・・

 

みたいな言葉を飲み込まざるを得ない、一切の「イジリ」「ツッコミ」を慎まざるを得ない、厳粛な物語を、見ることにした。

 

内部は、かなりの変貌を遂げていた。まるで、何らかのアトラクションであるかのように。テーマパークの見世物であるかのように。のっけから、「ネッシーワールドではしゃぐ自分」を、おそらくは色々な「盛り」を凝らして撮ることができるであろう写真スタジオがある。スタッフのにいちゃんはにこやかに、「盛り写真」を勧めてくる。

 

いやいやいや
なんか、自分からボケてきていないか?
ネッシーを「実在物」ではなく、そもそも、「キャラ」として、設定していないか?

 

そんな「ハシャギ」の気持ちは毛頭ない僕は、にいちゃんの勧誘をスルーした。しかし、にいちゃんは、次に、ガイド音声の説明をしてくる。イヤフォンやヘッドフォンで音声を聞くのではなく、スマホにアプリをDLするのだそうだ。たまたま、昨日のdocomo24時間の契約がまだ生きていたので、DLしてみる。ツアー開始時刻が10分刻みで選択できるので、僕は、「12:50」を設定した。一連の動きを見ていたにいちゃんは、にこやかに、まるで「テーマパークのスタッフ」のような軽いノリで、

 

「では、幻想の世界へ、いってらっしゃい!」

 

と、送り出してくれた。

 

ううむ

 

ノリが違うんだよなあ。あの「厳粛さ」はどこ行った?ネッシーは実在する。ネッシーを発見する。そのためには、時間も労力も、金さえも、注ぎ込むことは厭わない。アホなことに(!)、アホみたいな情熱をささげる(!!)、あまりにアホすぎる男たち(!!!)の、真摯な取組を、自ら貶めていないか?

 

扉を開けると、「第一の部屋」が待っていた。「部屋」は複数ある。「部屋」に入ると、スマホのアプリから日本語音声の説明が流れる。しかし、「説明」ではないものもある。

 

ある「部屋」では、あるパブの様子が画面に映し出される。部屋のつくりがパブ内部を模している。「あつらえ」に加えて、はめ込まれた複数のモニターの中で、人物が動く。客は、まるで、本物のパブの中で、彼らの動きを見てているかのような錯覚に陥る。例えば、左側のモニターに映っている人が、歩きながら正面に移動すると、その人は、パブに入ってきたような形で、正面のモニターに映される。パブの三方が、映像で再現され、その中で人々が「寸劇」を繰り広げる。

 

一人のオヤジがパブに入ってきて、パブのスタッフに話しかけた。何かデカい生き物を目撃した、と言っている。しかしそれは「演劇テイスト」であり、おそらくはどこぞの俳優なので、そこには「演技」が加わっている。目撃談を語る方も、それを聞く方も、表情は豊かであり、口調は劇的である。まるで、映画を見ているかのようである。臨場感はあり、確かに「うまい」が、「うまさ」があるために、リアリティがない。

 

ううむ

 

そうじゃないんだよなあ。肝心なところを履き違えているんだよなあ。そもそも、「んなもん、おるわけないやろ」というネッシーを、「そうだ、いるはずはない」と「オトナの判断」で決めつけることをせず、「いや、いるかもしれん」「いないと、どうして言えようか」「ほんなら探そうやないか」と生真面目に取り組み、だからこそ、大真面目に科学的分析を行い、クソ真面目に、「追い込み漁」的実地調査を行う。少しも笑わずに、1mmも疑わずに、目の前の課題に没入する、その「厳粛さ」こそがキモなのに、自ら「ツクリゴト」の雰囲気を纏わせてきてるやん。世界中の誰しもが思っている、

 

アホですか

 

というツッコミを、すんでのところで思いとどまらせる、このギリギリの空気感こそが、「ネッシー問題」の要諦なのだよ。それを、自分たちが自ら、「ネタ設定」してどうすんのよ。

 

思えば、昔のビデオは、実際の目撃者オヤジが、たどたどしいが、しかし、それだからこそ、妙なリアリティを感じさせる口調で、目撃談をアツく語っていた。それが絶妙に素晴らしかったのだ。このアトラクション感は、方向性を間違っているよなあ。

 

最後の「部屋」では、「俳優」が、

 

「さあみなさん、ここまでの内容を踏まえて、最後にジャッジをしてください。目の前の三つのボタンのうち、一つを押しましょう!」

 

と、軽妙、かつ、パリピ的なノリで、語りかけてくる。「部屋」に同時にいる客たちがそれぞれ、「真実」「嘘」「可能性はある」のベットをして、最後に、ファンファーレとともに、三つの順位が発表される。「winnerは・・・『真実』です!!!」みたいなナレーションでツアーが終わる。この、「仕掛け」としては実によくできているが、「精神」を間違って継承している新システムは、ちょっと違うよなあ。ネッシーに対する冒涜やなあ。

 

謝れ!アホなことに情熱を捧げるアホなオヤジたちに、謝れ!!

 

インバネスに戻り、A9で南下し、トマーティン蒸留所(The Tomatin Distillery)を訪れる。ここも、グッズはいまいち。

 

トマーティン

 
今回、蒸留所を5つ回ったが、一番良かったのはクライヌリッシュかな。ロケーション、ビジターセンター、グッズの種類、雰囲気、スタッフなど。あとは帰るだけ。19時前にアバディーン帰着。

 

夜のアバディーン

 

今夜のホテルは、「ホテルらしいホテル」で驚いた。アバディーンの最初のホテルは「ビービー崩れ」のチッチャイ宿だったが、今回のホテルは、デカいし、外観も内観もめっちゃオサレだ。料金はほぼ同額なのに、なんということでしょう!オサレなバスルームで、「トラップなし」「着色なし」「泥炭ツブツブなし」のバスを使い、アバディーンラストナイトを満喫する。

 

さあ、明日はダーラムへ。

【新】えげれす通信2024_vol.05:スコットランド最北果て旅編 (15/02/2024)

ラブリーおばちゃんとは異なり、「笑顔レベルがやや下がる」、ホスピタリティが無いわけではないが、「些かシャイで些か不器用な感じ」のおじちゃんが、朝食部屋で出迎えてくれる。

 

オレンジジュース、牛乳、各種シリアル、各種ジャム、などが、自由に取れるように、美しく配置されている。食卓には、まさにえげれす!、というスタイルで、食器が並ぶ。

 

正しいB&B

 

やや笑顔がぎこちないおじちゃんは、「紅茶?コーヒー?」を聞いてくれた後、キッチンに戻り、数分後、正しく「トーストラック」に入ったトースト、正しく「えげれす標準のティーポット」に入った紅茶とお湯、そして、正しく盛り付けられたフルスコティッシュブレックファーストの皿を運んでくれた。きゃー。痺れるぜ。でも、

 

…ハギスがない

 

今朝は一度も、ラブリーおばちゃんの姿を見ていない。ハギスのくだりは、昨日、おばちゃんと盛り上がった訳だけど、ぎこちなきおじちゃんには伝わらなかったのか?

 

もそもそとして、覇気のカケラも感じられないソーセージ、表面に滲み出た脂だけでご飯一膳いけるんじゃないかという、塩辛いベーコン、そして、トマトソースの癖にトマトの味もしないし豆本来の甘さなんてこれっぽっちも感じないし、ムニャムニャとした歯応えしかしない、「絶対王者」ベイクドビーンズ、などを、一年ぶりに、頂く。しみじみ、頂く。苦笑を溢しながら、頂く。

 

正しいスコティッシュブレックファースト

 

チェックアウトの時も、不器用おじちゃんのみの見送りである。嗚呼、ラブリーおばちゃん、まさか、風邪をぶり返したのか?!

 

ルートを決めて、出発する。そろそろガスを入れなきゃな、と思いつつ、インバネス市内の、朝の通勤時間帯で交通量の多い道を抜けるのに、まずまず緊張する。モレー湾(Moray Firth)にかかるケソック橋(Kessock Bridge)を渡ると、ようやく、A9の快調な流れに乗れた。

 

本日は雨、我がロードマップに「絶景」と記されたポイントも、雨模様では迫力に欠ける。やはり天気は大事だね。そんなことを考えながら走っていると、大事なことに気がついた。

 

インバネスの、交通量の多いラウンドアバウト通過に気を取られてガスを入れ忘れ、気づけば超田舎ゾーンに突入してしまったではないか。スコットランド北西部の超田舎ゾーンは、

 

店もねぇ
ガスもねぇ
奴ら以外にゃなんにもねぇ

 

という、吉幾三ワールドである。マジで、本気で、何もない。だから、食糧も、飲み物も、ガスも、十分に補給しておかないとエラいことになる。実際、僕はかつて、スコットランドの田舎ゾーンでガス欠になり、えげれすのJAF的な人にガスを持ってきて貰ったことがある。これ、真剣にマズい奴だ。

 

しかし、グーグル先生はさすがの働きをする。野良WiFiは、超田舎ゾーンで拾えるわけもないので、docomoの海外データサービス24時間¥980を申し込み、グーグル検索をすると、少し先のレアグ(Lairg)に「現在営業中」のペトロールステーションがある!うーむ、ネットとかスマホとかの威力、認めるのは癪に障るけど、認めざるを得ないな。

 

晴れていたら超絶景、雨模様だとそこそこ絶景、の中を、快調に走る。

 

ベースは絶景①

 

ベースは絶景②

ベースは絶景③

 

ベースは絶景④

 
山間部を通り抜け、海岸部に出た。

 

晴れていたら絶景

 

雪だか、石だか、わかりゃしない

 

こっち見んなw

 

本日の最大の懸念事項は「宿探し」である。えげれすでは、そこら中にビービーがあるので、本来、宿探しに難儀することはない。しかし、ここは超田舎ゾーンであり、「人跡未踏レベル」の地域である。車で走っていると、次から次から、ビービーが現れる、という訳にはいかない地域である。加えて、二月、超オフシーズンである。そして、明日のアバディーンまでの帰路を考えると、何処でも良い、という訳にもいかない。諸条件が鬼である。大丈夫なのか?しかし、まあ、ナントカナルでしょう!

 

最初の候補地はダーネス(Durness)という集落であった。かなり良さげな、パブ系ビービーを見つけるも、完全に無人でアウト。ビービーというよりはホテルに近い、大箱宿を見つけるも、高そうだし、一旦スルーする。高台にある絶景ビービーも「空室なし」。結局、見つからない。

 

明日の帰りを考え、しかも、そこそこのデカさをもつと思われる集落はタン(Tongue)である。なんならここで、晩飯を買えるスーパーくらいあるかもしれぬ。期待に期待を重ねて到達するも、そこは、ささやかな希望の灯をぶち壊すほどにナニモナイ、チイチャイ、集落だった。目的が違えば、「なんて愛らしく、素朴で、素敵な集落なんでしょう!」となる筈が、宿なしデラシネ状態の僕にとっては、絶望の淵に突き落としてくれる集落だった。

 

釈然としないながらも、渋々ながらも、「負けた感」に苛まれながらも、再びグーグル先生に頼る。「デラシネ緊張感」に満ち満ちていた僕のここまでの数時間を嘲笑うかのごとく、僅か数秒で、先生は「正解」を示してくる。予約サイトを見れば、現在地から一番近く、今夜空きがある宿は僅かに3軒(当然、サイトに登録していない、個人経営の、チッチャイ、しかしながらおそらくラブリーな、ビービーなどは、もう少しあるだろうけれども)、そのうちのひとつを予約する。この間、僅か数分。いやあ、現地にいるのに、えげれす宿探しをネットでするとは…釈然としないなあ。

 

ただし、宿が決まれば、焦りはなくなり余裕がでる。少し遠回りだけど、スコットランド最北の町サーソー(Thurso)に、久しぶりに行っておくか。

 

ウィック(Wick)とサーソー(Thurso)はえげれすの鉄道の「最北終点」の2つである。インバネスからの鉄道は、それらの手前のジョージマスジャンクション駅(Georgemas Junction)で二方向に分かれ、それぞれが盲腸線になって、「行き止まり」になる。サーソーは、インバネスから247.6 kmの距離にある。2000 年までは、インバネスからの列車はジョージマスジャンクションで半分に分割され、ひとつはウィック行き、もう 1 つはサーソー行き、 となっていた(現在では分割運用は廃止され、インバネス⇔サーソー⇔ウィックと、ジョージマスジャンクションで2回停車する運用)。ロンドンのキンクロから、北へ、北へ、そして北へと、果てしなく上がっていくと、その鉄路が果てるのが、この二駅なのである。「果て研」部長のワタクシとしては、コーフンが半端ない。

 

えげれす最北駅

 

鉄路はここで果てる

鬼田舎ゾーンから行くと、サーソーは流石のデカさの街であり、スーパーもある。晩飯を仕入れて、宿に向かう。

 

ロードマップで確認すると、今宵の宿は、吉幾三ワールドのスコットランド北西部の中でも、さらにエゲツないレベルで、

 

ナニモナイ

 

エリアにあるらしい。しかも、一軒のみ、ポツンとあるらしい。

 

駅もポツン

 

なーんにーもない、なーんにーもない、まったくなーんにーもなーい♪

 

ちのはじめ(かまやつひろし)の世界でもある。外は真っ暗なので、その「かまやつゾーン」のナニモナサを視認することができないが、だからこそ、不安も抱かずに済んでいるのだとも言える。

 

ナニモナイ、ということは、我が愛用ロードマップにも「目印」がないし、道沿いにも「目印」がないということである。あたりは人工物が皆無で、当然、光源は絶無である。

 

…どうやって見つけるんだ?!

 

うーむ、三たび、ヤツに訊くしかないのか。頼るしかないのか。オレが長年培ってきた「マニュアル経験値的判断」を捨てて、ITの軍門に下らねばならぬのか。

 

先生は神業的な速さで僕の現在地を特定し、宿の位置も示してきた。あの台詞が頭をよぎる。

 

…認めたくないものだな。(以下略)

 

宿があるフォーシナード(Forsinard)は、なんと、鉄道の駅まであるものの、宿が二軒にティールームが一軒しかない、「ムッシュ吉幾三ワールド」の権化みたいなところだった。そして、宿の説明には、なかなかの衝撃的内容が示されていた。

 

・この宿にはレストランなど、ひとつたりともありません
・この村に、食糧を買える店があるとか思うなよ
・一番近いスーパーはサーソーです(46km先)

 

まだ続きがあった。

 

・この宿にはスタッフなどひとりもいません。何があっても、自力で、なんとかしてください

 

そして最後に、

 

・この宿の水道は自然水を使用しています
・この周辺は見渡す限りの泥炭湿地帯です
・水道水には泥炭が混じるので茶色です
・炭のカケラも出てきます

 

衝撃notice

 

自然大好きな人には堪らんだろうけど、都会っ子にはタマランだろうな。ワタクシは人類学者なのでヘデモナイですが(笑)。

 

最後はえげれすらしい締めくくり。

 

・こんだけ茶色でも、入浴、トイレには問題ないです
・それだけでなく、洗顔、洗髪などにも、【完璧に】、大丈夫です
・ただし、飲むのはやめた方良いよ
・だからボトル水を置いておきますね♪

 

実にえげれすらしく、「perfectly safe」という、毅然とした表現で、グイグイと押し切ってくる。

 

しかし僕は、「ムッシュ吉幾三ワールド」では、「食糧を前もって調達し、余らせるくらいの余裕を常にもっておくこと」が「生き永らえる智慧」であると知っているので、寸分の死角もない。

 

衝撃の泥炭風呂

 

久々バスタブでは、お湯蛇口と水蛇口が分かれた「えげれす風呂トラップ」も余裕でクリアし、茶色のお湯を張っていった。バスタブに浸かるは久しぶりだ…。

 

いや、違う

 

思い出す感覚があった。危機察知の感覚。「何かある」感覚。

 

…途中で確認すると、果たして、「お湯蛇口」の熱湯は、バスタブ半分くらいの段階で、既に「ぬるま湯」になっていた。

 

さもありなん
最後まで「熱湯」だと思うなよ

 

こういうことは、先生は、教えてくれない。やはり、「マニュアル経験値的判断」の勝利だな、うむ。

【新】えげれす通信2024_vol.04:蒸留所とインバネス編 (14/02/2024)

アバディーンバスターミナル6:40発のバスでアバディーン空港に向かい、そこでレンタカーを72時間借りる。事務所は7:30に営業開始、僕の予約は8:00、しかし、7:40くらいに行ってみたが、スタッフは誰もいない。

 

マタコレカ

 

案の定、いつもの張り紙がある。案の定、「人がいなかったら下記に電話してね。すぐにお迎えに行くからね」と書いてある。

 

8:00に予約しているんだから、ちゃんといなさいよ。そうも思ったが、これまた前夜と同じパターン、「えげれすに居ながら、日本の携帯で、えげれすに国際電話をかける」をすれば良い。粛々と、こなせば良い。何か問題でも?いいや、全く、何の問題も、ない。経験値を上げているワタクシに死角は無い。

 

電話をかける。ふいに、カウンターの奥から、メロディらしき、呼び出し音らしきものが聞こえてくる。

 

死角があった
携帯、裏に置きっぱなしやん

 

完全に対処不能になってしまった。とにかく待つしかないか、と思っていたら、7:58に、おっちゃん登場。スンマセンの詫びも無いが、やたらと感じ良い。感じ良いので、何も無かったことにする。

 

無事に乗り出す。車はFiat。おお!初めてだ。

 

今回のドライブルートは、きちんと計画してはいないが、2007年の、ドクターを貰ったあの時に、おふくろを連れて周ったルートを、なんとなく考えていた。

 

あの時は、アバディーン(発)→グレンリベット→グレンフィディック→Elgin→インバネス(泊)、→Ullapool→Rhiconich(泊)、→あとは南下してアバディーン(着)、という感じだった。ポイントは「蒸留所巡り」と「スコットランド北西部巡り」であった。今回も、この感じにしよう。最終日が若干の強行軍だが、実績はある。細かいルートは考えず、方向で適宜、進むことにした。

 

山間部に入ると、うっすら雪が積もっている。スコットランドはさほど降雪量はないので、まずまず珍しい風景だ。青空だし、絶景の予感がする。

 

絶景の予感

 

最初の蒸留所「グレンリベット」を訪れるのは、かれこれ2〜3回目かな。だいたい、近接する次の「グレンフィディック」とセットで訪れる。ちなみにこの二つは、「地名」である。「地名」であるから、「小学校」も存在する。

 

卒業して母校の名前を言いたい

 

グレンリベットのビジターセンターを冷やかす。そうだ、ここは「酒特化型」で、酒以外のグッズはほとんど置いていないんだった。それで、グッズが広く展開されている、次のグレンフィディックに行くんだった!記憶が蘇る。

 

ビジターセンター

 

今回は参加しないが、念のため、ガイドツアー詳細を聞いて驚いた。一人£25、¥5000だと?!昔はタダじゃなかった?なんぼインフレでも、なんぼウイスキーブームでも、それはちとやりすぎじゃないの?!

 

次のグレンフィディックでも、やはりツアーは同じ料金である。カルテルやってんのか?しかし、一回¥5000取られるんじゃ、「巡り」なんてできないわな。セチガライ世の中になったもんだ。

 

ビジターセンター

 

スコットランドも北部になると「山」の標高もそこそこ高くなる(それでも700-800m)。低木しか生えていない、独特の風貌の「山」が折り重なる。今回、僕は、住んでいた当事に使っていた「えげれすロードマップ」を持参している。1997年度版だが、この国はそうそう変わるものではないので、大丈夫でしょう。そしてこのマップには、その時その時の、「印象手書きコメント」が書かれている。今から進む道には、

 

「絶景」

 

と書きこまれてある。

 

絶景①

 

絶景②

 

絶景③

 

「絶景ゾーン」に突入すると、そこには言葉通り、まんま、「絶景」が広がっていた(笑)。しかも今回は、「雪化粧絶景」というレアキャラ登場である。息をのむほどの美しさである。

 

絶景で絶叫

 

今宵の宿はやはりインバネスかな。うっすら記憶を辿り、B&B密集エリアに到達、確かにずらっと並んでいる。

 

以前に書いたかもしれないが、昨今のえげれす宿関連の謎のひとつは、「B&B」表記が激減し、以前は絶対にB&Bだっただろ、という家でも、現在は「Hotel」表記になっているケースが非常に多いこと。これに対する僕の推測は二つあって、①「Bed & Breakfast」の「朝食」を出さない、出せない、価格に含められない、という「インフレ系理由」、②BB協会的なもの、あるいは、なんらかの法改正、という「制度系理由」、ではなかろうか。正解はわからないが、どうも、①のような気がする。

 

えげれすと言えば、ホテルではなく、ビービーなんだな。それが醍醐味なんだな。都市部では一泊朝食付でだいたい¥6000、田舎だとだいたい¥4000、インバネスは相場がさらに安くてだいたい¥3500、というのが、2000年代の僕の感覚であった。

 

ビービーの魅力は、安さだけじゃない。「感じの良さ」が天井を突き抜けてくる「えげれすのおばちゃん」が、「我々って100年前から知己だったっけ」くらいの暖かさで、「こぼれ落ちたら拾い集めるの大変だから、もうそのくらいで良いですよ」と止めたくなるほどの笑顔で、出迎えてくれるのが、ビービーの醍醐味なんである。

 

ビービーは、ひとつひとつ、ドアベルを鳴らし、出てきた宿主に宿泊可否を聞いて回らなければいけない。

 

一軒め。出てきたのは、ムスッとして、愛想のカケラもない、中国人オヤジ。

 

「今夜空きありますか?(いや、あっても、頼まない)」
「…」
スマホ自動翻訳の画面を見せてくる)
「(没有メイヨー)」

 

ホッとしつつ、インバネスまでも、「非えげれす人宿主」が進出していることに驚く。ロンドンとかマンチェスターとかの都市部なら、もはや、えげれす人宿主の方がレアなんだが。

 

二軒目。今度は中東イスラム系女性が登場。あっけなく断られる。

 

むぅ、参ったぞ。10軒くらい訊いたけど、全て、「ダメ」か、そもそも「やっていない」か。二月だし観光シーズンじゃ無いし、仕方ないか。いやでも困ったぞ。

 

何度目かのドアベルを鳴らす。お!初めてのえげれす人おばちゃんやないか!

 

絵に描いたようなB&B

 

えげれす人おばちゃんなら誰でも、標準装備している「満面笑顔」は、その片鱗は見えるものの、何かしらの不具合が看取される。

 

「今夜空きありますか?」
「今ねえ、風邪ひいて寝ているのよ」
「あら、そんな時にすみません(だから「全開笑顔」じゃなかったのか)」

 

断られるのかと思いきや、

 

「もしあなたが構わないのであれば…」
「はい」
「どうぞお泊まりを」
「!」

 

徐々に「通常モード」を取り戻してきたのか、おばちゃんのホスピタリティと笑顔レベルの数値が上がってくる。

 

「あなた、お名前は?どちらから?」
「玲です。日本から」
「L, …, R…?」
「Ryoです」
「日本人には、LとRが難しいのよね」
「よくご存じで!あの天井の「light」と右の「right」は、我々には区別できないんですよ」

 

なかなかの知性のようだ。そういえば、発音がやたらにきれいだし、確実に、ミドルクラスなんだろうな。

 

「朝食はどうします?」
「もちろんフルでお願いします」
「食べられないものはある?ハギスは大丈夫?」
「もちろん大丈夫、【フル】のスコティッシュブレックファーストでお願いします」
「OK(笑)」

 

部屋は、「絵に描いたような」「正統の」ビービーであった。朝食付き一泊£40(¥8000)は、当時の感覚値よりは高いが、倫敦やアバディーンの素泊り¥12000よりは安い。しかも、正統部屋と、正統おばちゃんである。これは素晴らしい。完全に当たりだぞ。

 

素晴らしき哉

 

さて明日はスコットランドの秘境、北西部を周ります。

【新】えげれす通信2024_vol.03:スコットランド入国編 (13/02/2024)

本日はLNER(London North Eastern Railway)でアバディーンへ向かう。ホテルを出て、今日はフィンズベリーパーク駅に行ってみる。来週、倫敦に戻った際のホテルも同じなので、買い出し関係の偵察も兼ねる。

 

マナーハウス駅周辺よりフィンズベリーパーク駅周辺の方が開けており、小型スーパーの「Lidl」と「Iceland」があった。これなら滞在中の買い出しもできそうだ。しかし、今回はまだ、大手スーパーの「Sainsbury's」と「Tesco」にお目にかかっていない。リドルで、本日移動中の食糧と酒を仕入れ、ピカデリー線でキングスクロスへ向かう。

 

キンクロで現金を多めにおろす。これからスコットランドの僻地を回るので、多めの現金が必要なのと、バンクオブスコットランド紙幣(ババ的)を掴まない為に、バンクオブイングランド紙幣をたっぷり用意する必要があるからである。

 

キンクロ発10:00のアバディーン行特急に乗る。車内に入ると、僕の予約席には、先客の夫婦が座っている。窓側は僕の予約席、通路側は「キンクロ→ニューカッスル」の客の予約らしい。ニューカッスル行きの予約客は「ピン」である。しかるにそこには、明らかに予約とは違う「夫婦」がいる。ただし、そんなことには動じないのだ。予約なんてものは、誰も信じていない。予約した客なんて、来るかもしれないし、来ないかもしれない。だから、空いていれば座るし、もし予約客が来たら、よければ良いだけではないか。

 

僕が「スミマセン」と言うと、夫婦のおばちゃんが、にこやかに応え、彼女ひとりが横の通路席に移動した。彼女が移動した席もキンクロからの予約席だったが、誰もいない。予約など、誰も信じていないのである。モノゴトは、いくら緻密に立案しようと、いくら事前に「備え」ようと、現実のニンゲン行動などは、所詮、ケセラセラなのだ。空いていれば座る。誰か来たらよける。何か問題でも?(我が国では、知恵袋で尋ねないと安心出来ない人がいたり、ヤフコメで不毛な論争になったり、しょーもないコメンテーターが朝の情報番組で言い合ったりしそう)。

 

日本人は、「予約は絶対である」「皆、それを守るはず」という感覚を共有している。だから、自分の予約席に先客がいる場合、それは確実にその人のミスである。ミスであるから、ミスをしている人を詰る気持ちが何処かに生まれる。だから、声がけが、「責め」の詰問調になる。

 

えげれす人は、「予約なんて信じない」「皆がそれを守るなんて有り得ない」という感覚を共有している。どちらのミスなのか、ミスの本質は何なのか、そんなことを追求しても仕様がない。それよりも、互いに「にこやかな態度」を心がけさえすれば、問題の本質はさほどでもないことが、互いに了解される。だからどちらも、会話はにこやかで、穏やかである。

 

「問題」というのは、その場の当事者の感覚如何で、その内容を変えるものである。「備え」は必要だが、「備え」が全てを解決する訳ではない。

 

アバディーン行特急は快調に、一路、北を目指す。ニューカッスル行とかエジンバラ行とかではなく、その先まで行く長距離だからか、通常は停車するピーターバラとかドンカスターとかを通過して、なんと、最初の停車駅はヨークである。この辺りは、去年、悪天候で四苦八苦したところだなあ。さらに、我がダーラムも通過して、次はニューカッスルである。大勢の客が降りて、車内には少し、空きが出る。バーウィックアポントゥウィードに停車し、ダンバーは通過すると、エジンバラウェーバリー駅に到着した。2/3くらいが下車するが、結構な数が新たに乗車してくる。

 

犬も乗ってくる

 

バーウィックアポントゥウィードを越えたあたりから、明らかに、車窓が変わる。イングランド中部は地形が平板でかなり単調だし、羊もほぼいない。しかし、イングランド北部から、国境を越えて、スコットランドに入ると、地形が嶮しくなり、北海も見えるようになる。「丘陵と山のあいだ」、くらいの起伏が増えてくる。そして、「なだらかな斜面」にも、「海岸近く」にも、そして、「急峻な崖の狭間」にも、要するに何処にでも、ヤツらが点在し始める。…ようやく「始まった」感じだ。

 

点景の始まり

 

エジンバラを出て最初の見どころは「フォースブリッジ(Forth Bridge)」である。1890年完成の世界遺産であり、ここを通るときにはいつもいつも、目を凝らして見ている。そして今日は、新たな発見があった。途中の眼下に広がる、この、廃墟っぽいのは一体何だ?

 

見づらいけど、異様な光景

 

ググると、「インチガービ島(Inchgarvie)」という無人島らしい。そしてあの廃墟は、「15世紀に建てられたタワーハウスであり、1519年から1671年までは刑務所として使われた」らしい。…無人島⁈うわあ、ガイドツアーとかあるんなら、めちゃくちゃ行ってみたいぞ。

 

次の見どころは、エジンバラから20分ほどのところにある「カーコーディー(Kirkcaldy)」駅。アダムスミスはこの町で生まれた。しかし駅があり、しかも特急が停車するほどの駅とは知らなかった。

 

さて、無事にアバディーン駅に到着、ホテルにチェックインをする。・・・しようとして、信じがたいトラップが待っていた。ドアを開けようとすると、鍵がかかっている。まあ、このタイプはよくあるので、慌てずに、ブザーを探す。が、しかし、どこにもない。あれ、これ、どうやって呼び出すの?

 

叩いてもダメ。暗証番号を適当に入れてもダメ。おいおい、どうするんだ?

 

ふと見ると、張り紙があり、「何かあったら電話してね」とある。いやしかし、ワタクシ、海外プランとか申し込んでいないのよ。データの方は、なんやかんやで使う機会もあるかもしれないので、それなりの準備、もとい、「備え」をしていた。しかし通話の方は、まったく想定していなかった。しかし、これは、電話をかけるしかない。それ以外の手段は絶無っぽい。

 

えげれすで国際電話をかける場合は、最初に「00」を押す。僕の携帯は「日本」なので、「日本からえげれすに国際電話を、しかしながら、えげれすから、かける」というややこしい状況であるが、経験はしていたので、慌てない。えげれすの国番号が「44」だってことも知っているので、動じない。張り紙の番号にかけると、果たして、昔聞いた、懐かしい、えげれすの電話の呼び出し音が鳴り、ほどなくにいちゃんっぽい人が電話に出た。

 

結局、「ドアの暗証番号」を聞いて中に入り、「鍵ボックスの暗証番号」を聞いて部屋の鍵を自分で出し、ついでに「wifiのPW」も聞き出し、なんとか、部屋にたどり着くことができた。

 

にいちゃん曰く、「詳細はメールで送りますね」というもんだから、「僕のメアドってわかってます?」と聞くと、「いや、わからないです」とのこと。そこで、自分のメアドを、電話越しに、一文字一文字口頭で伝える、という、日本人相手でも至難の業を、英語でやらねばならぬ羽目になった。しかし、これも、昔やったことがあるので、動じない。例の、

 

「〈e〉 for 〈Every〉」

 

みたいな、一文字一文字を、それを頭文字とする単語をくっつけて伝える、という技を繰り出す。一つでも間違ったらメールは届かないものだが、これまた無事に、詳細メールが届いたとさ。

 

いやはや、無人のホテルって、どんだけ近未来やねん。ここ、えげれすやで。

 

やはり本日も、「備えなくても経験で、憂いなし」の日であった。明日は、アバディーン空港で車を借りて、スコットランド北西部を中心に周ってくる予定。

【新】えげれす通信2024_vol.02:えげれす入国編 (12/02/2024)

昨夜、デポジットのRM50を取られた時、ホテルのフロントのオヤジが言った。

 

「これは明日チェックアウトの時に返しますよ」
「ちなみに明日は朝早く、4:30にはチェックアウトしなきゃならないんだけど、起きてる?」
「大丈夫!」

 

海外で「大丈夫」を信用する奴は負けるのだ。明日は、近くのモノレール線の始発は遅いので、「KTM Port Klang Line」と「KTM Seremban Line」(どちらもKL Sentralまで行く)が通るPutra駅まで1.8km歩いて、5:18の電車に乗らねばならない。

 

ちなみに、クアラルンプールの市内鉄道は、KTM、MRT、LRT、Monorail、BRT、という種別のものがある。全部まとめた路線図もある。この路線図自体は、各線に番号が振られていてわかりやすいのだが、実際の駅には路線番号が表示されておらず、慣れないマレー語の綴りを何度も何度も確認しながら、路線図の路線番号と、実際に乗る路線との照合をしなければならない。

 

さて、オヤジの「大丈夫!」に半信半疑だった僕は、4時前に起きて準備をしていた。ホテルから駅まで1.8km、発車時刻が5:18、迷いそうもない道だけど、何かあるかもしれない。ていうか、そもそも、オヤジが起きていない事態を想定しなければいけない。万が一の場合には、RM50(だいたい¥1500)を捨てる覚悟も必要だ。もろもろ考えて、4:30にフロントに行けば良いだろう。。。そう考えていたら、なんと4:00に、オヤジからモーニングコールがきた。マジか!そんな律儀なオヤジ、見たことないぞ。慌てて「あ、10分で降りますね」と言ってしまい、フロントに降りたのは4:15過ぎだったので、まずい、5分遅れた!と、まるで日本のような気の遣い方をしてしまったやないか。

 

Putra駅には駅員など誰もおらず、ホームレスなのか、ただの酔っ払いなのか、どちらとも判別不能なオヤジが寝そべっている。僕は、この、「5:18」という発車時刻も、ある意味、信用していなかった。天下のGoogle先生にしても、途上国のカオスは、その上を行くことがある。そこで、駅に掲示されていた時刻表を見た。すると確かに、「KTM Port Klang Line」と「KTM Seremban Line」のどちらだったか忘れたが、そのどちらかの時刻表には、確かに、5:18の電車が記されている。しかし、この時刻表が「紙」であること、「平日/休日」に分かれていること、「期間的な注釈があること」、などから判断すると、やはり、一抹の不安がある。ほんまに、来るんか?

 

さらに混乱させるのは、行先である「KL Sentral」方面は、通常は2番線から出るが、1番線から出るのもあるよ、と書いてある件である。「出るのも」ってなんだよ?どれが例外なんだ??そして、「KTM Port Klang Line」と「KTM Seremban Line」の、どちらにそれが適用されるのだ?しかし、まあ、とりあえず、改札を入る。

 

ホームでもう一回確認しよう、と思っていたら、その、紙の時刻表が、ホームには一つもないではないか!「次の電車は・・・」的な案内や、電光掲示なんてものも皆無である。ホームは島式ではなく、対面式、ホーム間移動は跨線橋を階段で行かねばならぬ。間違ったホームで待っていたら、間に合うかどうか、微妙である。

 

ただし、1番線発車は「例外」的なものだと書いてあったし、地元人らしき客が、さくっと2番線に移動したので、まあ、2が正解だろうと思い、そちらへ行く。

 

5:18。来ない。まあ、遅れることはあるよね。

 

5:25。来ない。いや、これ、あかんやつ?

 

Google先生によると、5:18の次は5:32とある。さて、それは、「KTM Port Klang Line」と「KTM Seremban Line」のどちらだったか?確認しようにも、時刻表はホームにはない。ただし、路線ごとではなく、「KL Sentral方面」と、ひとくくりで書いてあったよな、確か。だから、やはり2番線で良いのかな?・・・ほどなくすると、電車が無事にやってきた。5:32。ぴったりだ。ていうか、5:18は何だったの?そして・・・表示しろよ!

 

ヒースロー行き機材は、昨日の成田からのものとは全然違った。機材はA350-900で、3-3-3のシートだが、内装は、「平成のイケてるスナック」になっていた(笑)。シートも新しく、モニターも新しい。食事も美味かったし、パンも配ったぞ。パーサー女性陣は相変わらずの、「場末スナック感」だが、サービスとか気づきのレベルが上がっていた。…なんなん?成田はナメられているわけ?メシワゴンのスッチーにワインを頼んだら、そこには積んでなかったが、「後で持ってきますね」という対応である。なかなかやるやん。ただ、本当に持ってくるかな?とにかく「信用したヤツ」は「負け」るのだ。

 

果てしなく長いフライト、13時間を経て、一年ぶりのヒースローへ!長時間だったが、まずまず快適でしたよ、マレーシアさん。久しぶりの「チャーリーとチョコレート工場」とか見て、なかなか楽しかったですよ、マレーシアさん。・・・ただし、ワインは、持ってこなかったが。

 

ヒースローの入国は、これは去年驚いたことだが、以前とは比べられないほどスムーズである。以前は、有人で、しかも、えげれす入管は、世界でも指折りの難易度とされている。日本人の観光ビザでひっかかることはほとんどないにしても、そこそこの緊張感はあった。マレーシアさん的な無秩序や、時間の浪費はないものの、それなりの行列はあった。しかし今では、ゲートは完全に自動化されているし、案内や誘導も、これはさすがのえげれすである。僅か1分で入国完了。いつものピカデリー線の駅に向かう。

 

しかーし。さあ、さっそくかましてきたぞ。さすがにラスボス、堂々の技だ。これでなくっちゃ、えげれすじゃないよ。

 

「planned」の文字が、「どうだ!」感を醸し出す

 

「計画運休」で国中が揺れるニッポン。かたや、世界最大の空港に直結する地下鉄線を、なかなかの区間で、なかなかの期間で、あっさり止めちゃうえげれす。

 

「備えあれば憂いなし」。良い言葉である。人生の教訓としたい言葉である。平時の心構えとして、緊急時の心構えとして、重要な事項である。・・・しかし、ほんまにそうか?

 

今回、マレーシアさんを訪問するにあたって、僕は、かなり隅々まで、下調べをした。想定問答を重ね、盤石の「備え」を整えた。・・・にもかかわらず、現実には、マレーシアさんの「表示なし攻撃」に翻弄され、なかなかの大変さを味わった。「備え」あっても、「憂いダラケ」だった。

 

他方、ピカデリーさんのなかなかの攻撃には、僕は1mmもたじろがなかった。「運休」の表示を見た時にも、「ああ、はいはい」くらいのリアクションであり、余裕綽々であった。「備え」なんて何もないが、「憂い」の方もさっぱりである。後から来た旅行者に「あ、運休みたいですよ」と親切に教えてあげたら、彼は、「げ!マジですか。そんな・・・」と絶句している。僕はそんな彼を、生暖かく見守りながら、彼を置き去りにした。聞かれたら・・・教えてあげるよ。でもね、この国ではね、「生き永らえる道」はね、自力で探していかないといけないんだよ。そしてね、「備え」るかどうかにかかわらず、「憂いトラップ」は、その辺の石ころみたいに、そこら中にあるんだよ。「備え」ようがどうしようが、チョコレートの沼にはまったり、ブルーベリーみたいに青くなったり、ゴミ溜めに落っこちたり、二次元の世界に転送されたりするトラップは、そこら中にゴロゴロあるのさ。

 

エリザベス線で、ホルボーンまで出て、そこからピカデリー線でマナーハウス駅に行く。今回の倫敦の宿は、マナーハウス駅、あるいは、フィンズベリーパーク駅近くにある。この辺りは、あまり知らない。

 

さてえげれす初メシは、スーパー総菜にしようと思っていた。しかしホテルの近辺に大手スーパーがない。少し歩けばあるので歩こうかと思ったら、マナーハウス駅周辺に、オフライセンスがある。覗いてみたら、意外と品数が多いので、ここで調達することにした。そして隣にフィッシュアンドチップス屋があったので、久々にcodを攻めることにしよう。

 

しかし、「cod and chips」と頼むのが通常なのだが、今日はチップスはいらないと思って、codだけ注文すると、こちらの発音が悪かったのか、それとも、この世にそんな奴はおらんやろ、チップス喰わないやつなんて、と思われたのか、おそらく後者だろうが(笑)、なぜか牛肉のパテが二枚挟まれたバーガーが出てきた!中東系の店で、にいちゃんは雑だし、オーダーの確認とかもなく、並んでいるのか待っているのか、客の状態も無秩序で、カオスの中でバーガーが出てきた。でも、まあ、いいか。この国で生きていくためのもう一つの掟は「なるようになる」である。ケセラセラ精神でバーガーを楽しもうじゃないか。

 

旨かったけどさ

 

さて、明日は、あわただしく倫敦を後にし、一路、アバディーンへ。

【新】えげれす通信2024_vol.01:マレーシア入国編 (11/02/2024)

今年のえげれすにはマレーシア航空で行く。去年のシンガポール航空とはイロイロと対照的である。2024年2月11日(日)、成田へ行く。

 

マレーシア航空A-330-300

 

去年のシンガポール航空は、総二階建の最新鋭機「A-380」だったが、今年のマレーシア航空は、フツーの「A-330-300」である。シート配置は2-4-2席、中型機である。機内に入ってトイレの扉を見ると、表示がめちゃくちゃ剥げている。改めて内装をよく見ると、なんというか、「昭和の旅館」的な風貌である。全てがピカピカしていたシンガポールさんとは違いすぎるぞ。

 

ちょっと不安になりながらも自席に着くと、オンラインチェックイン時のシートマップと配置が違うではないか。一番後ろの真ん中、通常は2-4-2の「4」だが、シートマップ上では、最後尾だけは「4」が「3」に減り、その「3」は「1-2」となり、「1」は独立席と表示されていた。僕はその、「隣に誰もいない」席をわざわざ狙い撃ちしたのだが、実際は、「3」はただの「3」であり、隣はただの座席であった。幸い誰もいないから良いけど、シートマップ上の表示と違うやないか。こういうところよね。細かい気遣いが行き届くかどうか。少なくともシンガポールさんでは、こういうのはなかったよな。

 

そしてさらに驚いたことに、リクライニングが効かない。「最後尾だからシート配置的に倒すことができません」、ではなく、完全に、「劣化したけど放置しています」のヤツだ。ミテクレはビロード的な椅子でツヤツヤして綺麗そうなんだけど、座ったらガン!って微妙に少しズレるヤツ・・・「地方のスナック」的な?なんとなく、今後もなかなかに、イロイロとヤラカシてくる予感がする。

 

ハード面はさることながら、ソフト面を観察すると、パーサーに男性が結構多いのに加えて、なかなかのオヤジ揃いである。重厚な雰囲気で、丁重に客を迎え入れる「オーナー」というよりはむしろ、よく言えば寡黙的な、愛想が溢れ出てくるタイプではない、なんとなく「雇われバーテン」のような風情のオヤジたちである。僕の通路担当のオヤジパーサーは、さっきから、通路を行き来する際に、僕の膝に3回ぶつかっている(謝らず)。彼はまったく笑わない。能面的なバーテンである(そういう人もいるよね)。そして、パーサーの女性陣は、髪型、化粧、年齢層ともに、なんとなく、「場末のスナック」感を出している。

 

昭和の旅館感

地方のスナック感

場末のスナック感←new!

 

安全確認ビデオでは、パーサーの格好をした人たちと客の格好をした人たちが、踊りながら、歌いながら、「ベルト締めろ♪」だの「酸素マスクつけろ♬」だのと、なにやらミュージカル調で迫ってくる。シンガポールさんのヤツは、日常的シーンに擬えてオサレに作られていた。東南アジアのエアラインでは、「物語風」が流行りなのか?あとは、ガルーダとタイに乗って、各種コンプリートをしてみたい気もする。

 

乗客たちの感じも、なかなかに対照的である。シンガポールさんでは、全員シュッとしていて、スーツ姿のビジネスマンも多かった。機内でノートパソコンで仕事する人も多かった。しかしマレーシアさんでは、なんとも野暮ったい、おっちゃんおばちゃんが多い。スーツ姿なんて、ほとんどいない。
 
…うーん、やはり、場末のスナック感
 
さて、期待のメシはどうだ??待望のメシタイムになったが、無愛想なバーテンオヤジが持ってきたのは、有無を言わさず「和食」。能面的表情で「チキンもあるけど無くなった」と釈明するが、「大変申し訳ないのですが・・・」という、サービスの基本である謙譲の精神は感じられない。それどころか、なんだか、「日本人には和食でええやろ」的な決め打ち感がある。
  
雑なんだよなあ。
 
なんというか、ハード面もソフト面も、ここまでの印象は、これに尽きる。ガワだけを遂行しようとしているが、中身が杜撰なタイプやな。しかし、肝心のお味のほうは如何か知ら。

 

絶妙に微妙

 

和食のメインは魚である。白メシに魚の照り焼きが同包されているが、「白メシを白いままでは喰わせてもらえない」パターンのヤツである。さらに、魚の下にはキャベツの煮たヤツが敷いてある。魚にキャベツを付け合せるんかい!うーむ、「白メシの白を奪うぐちゃぐちゃ攻撃」と「妙すぎる付け合せ攻撃」は、えげれすの技の定番だけど、マレーシアさんも同じ技を会得しているのか?オレはまだ、えげれすに到着してはいないぞ?…と、思ったけど、よくよく考えたら、この国もまた、シンガポールさんと同じく、「えげれすテシタ」だったな。忘れていた、この感じ。ラスボスに出会う前に、テシタが師匠からの伝承の技をちょこちょこ繰り出してきて、なんとなく「慣らされる」この感じ。でも、副菜が、ヒジキの胡麻和え、デザートが大福っていうのは。。。やはりこれは完全に、「日本人は和食食っとけ」パターンっぽいし、非日本人には高すぎるハードルなんじゃないか?

 

能面バーテンオヤジは、ワゴンにパンを積んでいるのにも関わらず、それを薦めることはしない。「紅茶かコーヒー」は一回しか来ない。やはり、全般的に、雑、である。サービスっていうものは、「相手の身になって考える」ということが肝心である。同じテシタでも、シンガポールさんは、そのあたりは、よくやっていた。かたや、マレーシアさんは、どうもそこのところが、一歩も二歩も、足りない。痒いところに手が届かない。
 
モニターの現在地システムを見てみる。しかしこれも、一昔前の仕様である。カラオケ入れたらレーザーディスクだった、的な、「場末のスナック」感がある。しかし、その中に一つ、あまり見たことない表示を発見した。方位と、二都市までの距離が出ている。これはあんまり見たことないぞ。

 
映画を観た後、さらにいろいろ弄ってみると、「映画」「TV」「音楽」などの並びに「read」というのがあった。試しに押してみると、「インタラクティブコーラン」とあった。なるほど!そこで閃いた。さっきの方位画面の、二都市の一つは、必ずメッカだったんだが、そうか、そういうことなのか!これはなかなかのヤツだ。

 
しかし、腑には落ちたものの、新たな疑問が生じた。ラマダンの時の機内食ってどうなるんだ?彼らが祈っている横で、非ムスリム客はガツガツ喰うのか?喰って良いのか??それってアリなのか?

 

さて、クアラルンプール国際空港(KLIA)に無事到着した。しかし、マレーシアさんの「雑さ」は、機内だけのものではなかった。やはり国際線フライトの「空間」は、その国を写す鏡なんだねえ。そこにはすべてのエッセンスが集約されているんだねえ。

 
途上国にありがちな、「入管の無秩序」が、そこに展開されていた。審査ゲートはまずまずの数が開いているのに、列は遅々として進まない。普通は「ここで待て」ラインがある。入国者たちはそこで一旦、一列で並び、空いたゲートへ順次進むのが一般的であり、「秩序」である。しかし、マレーシアさんの入管では、列がオソロシク無秩序である。そもそも並ぶ列が、最初からいくつかある。各列は「複数のゲート」に繋がっているが、それぞれが繋がるゲートの数は、各列ごとに違うっぽい。さらに、各列の先端が混線している。行列につく時点で各自の「目指すゲートが確定された」のにも関わらず、先端の混線により、先程の「確定」がチャラになっているっぽい。また、通常は、前の人が審査を受けているときに、次の人が至近に詰めることは許されないが、マレーシアさんでは、「ラーメン屋の行列か」っていうくらいに、次の人がグイグイ詰め寄っている。・・・要するに、行列がカオスである。また、審査では、指紋の登録や顔写真の撮影などもあるらしく、一人にかかる所要時間がハンパなく長い。審査官の作業も、サクサクという感じではない。この感じ、これぞまさに「途上国」のヤツである(ケニア入国の時に似たような体験をしたが、あちらは幸いに、午前三時とかだったので、客の絶対数が少なくて助かった)。僕は結局45分くらい並び、やっと順番がきた。

 
実は下調べをしていて、マレーシアさんでは「自動ゲート」という、画期的システムの運用が始まったとあった。これだと奇跡的な速さで入国審査が終わるらしい。ただし、初回入国時だけは、有人ゲートに並び、そこで「登録」をしなければならない、とあった。僕は帰りにも入国するので、この「登録」は必須である。だからこそ、45分も並んだ訳だ。さて、ようやく、有人ゲートに辿り着いたので、審査官のおっちゃんに「登録」をお願いした。すると・・・なんということでしょう!

 
「あ、そしたら、ここからぐるっと周って、53番54番ゲートに行ってね」

 
おっちゃんよ!軽く言うんじゃないよ!オレの45分はどうなる?初回はこっちじゃなかったのかよ?あっちで登録して、またこっちに並ぶのかよ!

 
憤然としておっちゃんに詰め寄ると、おっちゃんはにこやかに、

 
「いや、また並ぶ必要はありません」
「本当ですか?こっちに帰って来なくて良いんですか?」
「戻る必要はありません」

 
じゃあ、しょうがない。しかしほんまか?「あっち」は登録「だけ」であり、「入国審査」は「こっち」なんじゃないの?海外では信用したヤツが負ける。しかし、そう言われた以上、「あっち」には行かねばならぬ。下調べでは、初回登録は有人ゲートであり、「53」「54」ゲートで入国できるのは二度目以降である、と出ていたのだ。しかし登録も「あっち」と言われれば、行かざるを得ない。負けても、これは、仕方ない。

 

「53」「54」ゲートへの列はスカスカ、誰も並んでいなかった。よくわからぬままにゲートに行くと、30秒で「登録」は済み、審査官のおねえちゃんは「さあどうぞ」と、目線で自動ゲートを指す。ん?これで終わり?しかし、やってみると、・・・あっさり入れた!所要時間10秒。

 
いやいやいやいや。表示せえよ。案内せえよ。そして、「登録」だけじゃなく、「登録した後そのまま入国」できるんなら、そう言わんかい。「あっち」に凄まじい行列を作っている多くの人たちも、「こっち」からあっさり入国できるやん?

 

全てが雑、で、表示がなさすぎ

 

クアラルンプール市内までは「KLIAエキスプレス」なる特急に乗る。片道¥1500とラピート並みのカネをとるが、車内に充電設備はないし、WiFiも弱すぎて使えない。シートは固く、リクライニングもテーブルもない。これもまた、「昭和の旅館」系の設備である。30分ほどで「KL Sentral」駅に到着した。

 

駅に隣接の巨大ショッピングモール「NU Sentral」で、マレーシア版Suica的なもの(Touch n Goカード)を買うことにする。このカード、絶大なる使い勝手の良さらしく、必携らしい。ただし、最初の一歩、カードの「購入」が、ことのほか難しいらしい。「チャージ」ができる機械はあちこちにあるらしいんだが、「購入」が至難らしい。下調べをしても、空港ではなかなか買えない。各駅でもなかなか買えない。しかも、クレカ決済できるとなると、この巨大ショッピングモールのショップが、ほぼ唯一の選択肢らしい。

 
いや、雑すぎるやろ
買わんで、どうやって使うのよ
市民は、そら、「持っていて当然」かもしらんが、タビビトは「購入」しなきゃならんのよ

 
さて、くだんのショッピングモールだが、探せど探せど、「フロアーマップ」「ショップリスト」の案内表示がない。ミテクレは立派なんだが、何階に何があるのか、さっぱりわからん。またしても、「ガワは壮麗、ナカミは雑」である。「使う人の状況」「お客様目線」からの配慮がまるでない。いや地元民はさ、アタリマエの日常スポットでさ、今更探さなくても、何が何処にあるのか、わかっているのかもしれないけどさ。

 
タビビトは初見なんですよ

 
なんなんだ、この、行き届かない感じ。片手間な感じ。あと一歩、足りない感じ。痒いところにさっぱり手が届かない感じ。背中が痒くて孫の手を出してきたけど、「手」の先が丸まっていなくて、さっぱり掻けない、みたいな感じ。えげれすも「そこじゃない感」はいっぱいあるけど、こと、「お客さま目線」に関しては、適度に、的確に、遺漏なく、やってくれるんだよなあ。そしてシンガポールさんも、そうだったよなあ。…同じテシタなのに、なんでだ⁈

 

その他、「モールから駅はどっちの方向なのか、表示さっぱり無し」「駅の切符売り場から自動改札っぽいところまで二筋の通路があるが、その一つを進んだ先には、〈出る〉改札しかない」「改札付近に、出口案内や駅前の地図が無い」「街にも、ストリート名や街区名の表示無し」と、とにかくこの国には、「表示」がさっぱりない。さながら、「丸くなっていない孫の手」が林立しているかの如し。

 

兎にも角にも、ホテルに着いた。さてメシだ。ホテルの前にはズラッと屋台が並んでいる。この国の「食」の感じがまだ掴めていないし、写真メニューも無さそうだし、屋台はちとハードルが高そうなので、今宵は店舗型レストランにする。

 

マレーシアは複合民族国家だから、レストランも多種多様らしい。にいちゃんに招かれて入ったのは「なんとかダマスカス」という名前である。シリア料理なのか?シリア料理がどういうものなのかもさっぱりわからんが、ラムの煮込が載っているカレー的な飯を頼む。

 

Lamb Mansaf(RM38≒¥1140)しかし一人にはデカすぎた

 

これは当たりだった。めちゃくちゃ美味いやないか!日本では絶対に出てこない味だわ。しかも、マレーシアは、物価は安いらしい。スイカジュースも入れて¥1000ほどである。ただ、この店はがっつりイスラム系なので、アルコール提供は無し。この国では、何処で、どうやって、酒を呑むか。これが喫緊の課題やな。ただし、そこらにあるコンビニ「KK」では、24時間、ビールを買えるらしい。レギュラー缶でだいたい¥250-350くらい。

 

さて、明日は、早朝4:30にチェックアウトしなければならない。