えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】えげれす通信2024_vol.09:買い物と暮らし編 (19/02/2024)

本日は、ダーラムとニューカッスルの、散策&買物の日である。9時頃、先ずは朝食をいただく。

 

師匠の奥さんのRozは、トライアスロンに出たり、ティラピスに通ったりと、なかなかに活動的な人である。年齢はわからないが、めちゃめちゃ細身で、服装もおしゃれで、なにやら妙にカッコ良い。しかも、昨夜の「手作りグレイビー」「手作りヨークシャープディング」などを見ても、料理もこなすスーパーウーマンらしい。朝食に出てきたマーマレードも手作りらしく、食器棚には、ズラリと、手製ジャムの瓶が並んでいる。その奥さんは、「ちょっと走ってくるわね」と言って、さくっと出かけて行った。

 

全部手作り

 

師匠は若いころは、走ったり、運動したり、そういうことをしていたのかな?あんまりしなさそうだけど。ちょっと気になったので聞いてみると、「サイクリング」はよくやっていたとのこと。16歳の時に買ってもらったチャリンコは、いまだに、地下に、置いてあるらしい。えげれすでは、ちゃりんこは、どちらかというと、「趣味」「運動」という目的で使われる。基本的に「ガチ乗り」である。ちゃりんこは、車道でしか走れないし、殆ど全員が、ヘルメットを含む「完全装備」で乗っている。しかし日本では、通勤や通学で使われるんですというと、えげれすでもそういうのも増えてきているよ、とのこと。でもなあ、日本の「ママチャリ」とは、いろいろな意味でまったく違うよなあ。面白いテーマなんだけど、「ママチャリ」の定義って、何なんだ??「ママチャリ」を、英語で如何に説明できるか。見通しが立たなかったので、説明はあきらめる(笑)。

 

その後、たまた師匠邸に電話がかかってきたので、今度はスマホの話になる。奥さんは、スマホを使いこなしているが、師匠は「えげれす版ガラケー」のままである(だから、メールが通じず、実は大変)。当然、オンライン決済とかそういう方面も、やっていない。「まずはスマホを持つことが、次の目標だなあ」と笑うが、持ちそうにはない。

 

流れで、最近の、キャッシュレス決済の話になる。日本では最近、「両替」に手数料がかかるようになって大変なんですよ、と説明する。神社のお賽銭は殆どが小銭で、それをどう処理するかが、神社の深刻な問題なんです、と説明する。また、昨日の教会にあった、「タッチ決済の寄付装置」に驚いた話もする。

 

ま、そんなこんなで、朝食後、普段よりもまったりと世間話をした後、徒歩1分のホテルまで、まずは、トランクのみ、移動する。パソコンや変圧器などは、本日の夜まで、師匠邸に置いておく。さて、散策だ。まずは、大学近辺を経由し、大聖堂へ。

 

花越しに

 

入場料に£5の寄付を求められるようになったのを去年発見して、なんとまあ世知辛くなったものよのぅ、と、嘆いたわけだが、去年師匠に確かめたら、あれは「義務」ではないとのことだった。本日も改めて説明を読んだら、やはり、「できるならば」という譲歩付きであった。しかるに、入場ゲートにはでかでかと、

 

£5の寄付を!

 

と書いてある。その表示は紫色でめちゃめちゃ目立っており、導線が「支払いゾーン」を避けては進めない仕様に設定されている。あれをすり抜けるのはしんどいよ。

 

かつて、学生時代には、暇なときにボーっとするために、この世界遺産の中の椅子に座りに来ていた。そんな信じがたい贅沢な時間に思いを馳せつつ、本日は、去年と同じく、「無料エリア」のみをぶらぶらする。

 

無料ゾーンをうろうろ

 

本日は、お土産を買う日にしている。スコットランドでたっぷり買おうと思っていたのだが、適当な店があまり見つからず、大都市であるアバディーンインバネスも、夜に着いて朝に出発するスケジュールだったので、結果として、殆ど買えていない。一軒だけ、絶景ゾーンで、「泥炭風呂宿」と同じようにこちらも「ポツンと一軒家」状態の、可愛らしいお土産屋があった。そこは、中に入ってみると、外観の見た目を越えてくる素晴らしい店だったので、チラチラと買うことは買った。しかし、大々的には、まだほとんど何も買っていない。明日は倫敦だが、せっかくなら、倫敦で買えないものを買いたい。ダーラムやニューカッスルは「イングランド北部」であり、独特の文化を持つエリアだから、何かあるかもしれない。そんな期待をもって、まずは、ダーラムの店を見ていく。

 

僕が当時、住んでいた時から存在していた、ウールやニットなどを扱う衣料品店に行ってみる。ちょうど、バーゲンをやっている。マフラーが、一本で£55、二本なら£100、というバーゲンになっている。ちょっと食指が動く。

 

店内に、一人の中国人女性客がいて、めちゃめちゃ大声で、携帯でしゃべっている。めちゃめちゃ、めちゃめちゃ、デカい声で、しゃべっている。中国人ってのは、なんでこう、デカい声でしゃべるのかねえ。なんで携帯なのに、スピーカーにして、発話部を自分の口に向けてしゃべるのかねえ。おかげで、ヤツのしゃべりだけでなく、相手のしゃべりも聞こえてくるんだよ(相手の声も、相当、デカい)。あのスタイルをやっているのって、大体、日本人以外のアジア人だよなあ。あ、中東系もいるか。耳と口に携帯をフツーにあてて、「電話」として、話せば、事は足りると思うんだが。そうすれば、もう少し、声も、小さくなると思うのだが。マレーシアでもそうだが、アジアでは、そういうヤカラも多いし、電話の声がデカい奴はたくさんいる。しかし、ここはえげれすぞ。しかも、外国人がうじゃうじゃいる倫敦ではなく、ほぼいないダーラムぞ。そんな節操の無いヤカラはほとんどいない地域やぞ。しかるにそのねえちゃんは、辺り構わず、我関せず、店内を動き回り、長時間、デカい声でしゃべり続けている。・・・ったく。

 

ようやく電話を終えたと思った刹那、今度は件のマフラーのところに来て、スタッフに質問し始めた。引き続き観察する。

 

「このマフラー、例えば5本買うと、どうなります?」
「£100×2+£55で、£255です」

 

当たり前のことを、何を言ってんだ?算数わからんのか?そう思って聞き耳を立てていると、ネエチャンは、信じがたい台詞を吐いた。

 

「まかりませんか?」

 

まさに驚天動地。おいおいおい。ここはえげれすぞ。えげれすで、値切るなよ。ここは「定価がないアジアのマーケット」じゃないんだぜ?場を弁えろよ。空気を読めよ。

 

店のスタッフさんは、それでも真摯に答えた。

 

「・・・ええと、学生さんですか?」
「いや、違います」
「学生さんなら、学割が効くんですが」

 

チャンネエは、さらに、信じがたい程の厚顔さを繰り出してくる。

 

「なんとかなりませんか?」

 

まったくよぉ。ならねーよ。オマエ、なんやねん。少しは状況を理解しろよ。日本人と同じく、えげれす人もまた、グイグイ系が嫌いなんだよ。「譲歩」「謙譲」「気遣い」など、「一歩引いた態度」を愛するのが、日本人であり、えげれす人なんだよ(だからえげれす人は、グイグイ系のアメリカ人を馬鹿にする)。マジで、この、面の皮の厚さには、辟易する。僕はあきれ果てて、その店を出た。なんだか買う気を失くしてしまったのだ。

 

気を取り直して、ニューカッスルに向かうことにする。ダーラムのバスターミナルに行くと、去年、建築中だったのが、新築になり、供用を開始していた。昔と同じ場所だが、めちゃめちゃ近代的になってるぞ。

 

外観

 

内観

 

ニューカッスルのEldon Sqは、巨大なショッピングモールであり、バスターミナルを併設している。隣接するデパートのFenwickは、当時、そのフードホールでよく、摘みを買っていた。中に入ると、めちゃめちゃオサレに変貌している。当時よく買っていた、ザリガニのBrine漬がある。これは、シンプルだが、実に旨い。ただ、これは倫敦でも手に入るので、今日はやめにする。チョコレートやら紅茶やらビスケットやら、「ニューカッスル周辺産」のブツがたくさん揃えてあるコーナーがあったので、結構な物量を購入する。こういうブツは、倫敦では手に入らぬ。

 

Eldon Sq

 

FenwickのFood Hall①

 

FenwickのFood Hall②

 

そのまた隣のデパートのJohn Louisは、倫敦にも店舗があるので、ニューカッスルで、敢えて、買う必要はない。しかし、たまたま入って中を見たら、オサレなテーブルクロスとか皿とかマグカップとかがあった。それらを、熱狂的に、購入する。ついでに、昨日、「実用状態」を初めて目の当たりにし、印象に刻まれた「グレイビーボート」も見つけたので、購入する。ちなみにこれらは、帰って調べたら、あの「ザ・コンラン・ショップ」の創始者、テレンス・コンランの長女、ソフィー・コンランのブランドだった。店内で見たときには、「コンラン」の名字と、「ソフィー」という女の名前だったから、そうかなと類推していたんだけど、やはり当たっていた。

 

そういえば、「グレイビーボート」って、日本人におなじみの、カレールーを入れるあの「例の器」の名前なんだよな。「グレイビーボート」って、「カタカナひとつなぎ」として、何やら「不思議な音感の言葉」として、まるっと認識していた。しかし、昨日聞いて、それは「gravy boat」であることがわかった。つまり、「カレー入れ」ではなく、「グレイビー入れ」なんだな。

 

帰宅して、最後の晩餐をいただく。本日は昨夜の残り物である。

 

残り物、だが、それが良い

 

師匠との食事は結局6回、そのうち家で、「ブリティッシュホームミール」を体験したのは、外食をした①⑥を除く、合計5回だった。それぞれの内容は以下。

 

①2/17(土)夜:外食(中華レストラン)
②2/18(日)朝:トースト、ジュース、紅茶
③2/18(日)昼:トースト、ジュース、紅茶、鰊酢漬(既製品)、サーモン(既製品)、サラダ
④2/18(日)夜:ローストビーフの塊、付け合わせの煮野菜(芽キャベツ、人参)、ヨークシャープディング(自作)、グレイビーソース(自作)、ローストポテト、ローストパースニップ(parsnip=人参に似た根菜)、デザート(洋ナシのパイのクロテッドクリームかけ、自作)食後酒(ブランデー)
⑤2/19(月)朝:トースト、マーマレード(自作)、ジュース、紅茶
⑥2/19(月)昼:単独外食(ニューカッスル
⑦2/19(月)夜:昨夜の残りのローストビーフ(チャツネ)、サラダ、昨夜の残りのローストポテト、昨夜の残りの洋ナシのパイ

 

朝食は、基本的に、軽く済ませるんだね。それは日本でもそうか。しかし、えげれす朝食のバリエーションは、圧倒的に少ないんだな。基本的にトーストのみだし、「食パンを焼くのか、ベーグルを焼くのか」、「焼くもの」が変わるだけである。ナニガシに、バターやジャムを塗って、食べるだけである。日本の朝食の、「白メシ+様々なおかず」のバリエーションが恋しくなる訳だ。ちなみに、旅中に僕が自前でメシをこなす場合は、去年と同じく、「外食」ではなく、「スーパーで買ったものを喰う」ことになる。これは、経済破綻を防ぐためである。そうなると、スーパーで、しかも、電子レンジなしで、冷たくても喰えるもの、という制約が出てくる。必然的に、バリエーションが貧困になる。来る日も来る日も、クロワッサンとかパスティとかになってしまう。

 

昼食も似たようなもんである。基本、朝食と昼食は、「調理」はせず、既製品を食すらしい。鰊酢漬とか、スモークサーモンとか、各種パテとか、なんならカニ味噌缶詰とか、こうしたものはすべて、「パンに載せるブツ」「パンの表面に塗るブツ」である。火は使わず、済ませる。卵の一つでも、焼くとか、そういう「調理」はしないらしい。

 

夕食は、外食の頻度がどれくらいなのかわからないが、家で食べる場合は、こんな感じらしい。日曜日は、結構頑張るらしい。月曜日は、それの残りらしい。日曜日に、肉塊がまだ半分残っているなあ、しかし「もっとどう?」と勧めてくれないなあ、と思っていたけど、やはりそういうことだったのね。日曜日の夕食は、まさに、「supperではなくdinner」という感じだった。肉塊をそのまま載せる台、テーブル上でそれを切り分けるための「肉切ナイフ」と「肉刺フォーク」、グレイビーボート、そうした「えげれすテーブルウェア」が正統的に並ぶ。十分な時間をかけて食べ、家族はこの一週間の出来事を皆に話す。食事が終わるとデザートがある。きちんと「段階」を踏んだ、ある種の「コース」仕立てになっている。これを目の当たりにしたので、British traditionのテーブルウェアが欲しくなったというわけだ。

 

ちなみに⑦では、④では出なかった「Branston Chutney」(既製品)が出てきた。もともとはインドの調味料で、1600年代から、えげれすに入ってきていたらしい。「身近にあるフルーツや野菜にビネガーと砂糖、塩、スパイスを加え、長時間煮た保存食であり、イギリス人好みの、ビネガーが効いた味わいになった」らしい。師匠曰く「えげれすの伝統食」であり、とりわけ、このブランドは、めちゃめちゃ昔からあるヤツらしい。チャツネはインドのもので、カレーの隠し味という認識だったが、えげれすの「伝統」になっていて、ローストビーフや付け野菜に合わせるのだとは知らなかった。そしてこれが、また、絶妙に旨い。どんなところで、何を使って、作っているんだろうと思い、瓶の裏を見ると、

 

Mizkan

 

と書いてある。なんとミツカンが絡んでいる!それで、ネットで調べてみたら、

 

ミツカングループ本社は15日、英プレミアフーズ(ハートフォードシャー州)から食酢、ピクルスの有力3ブランドと生産設備を取得することで合意したと発表した。取得額は4100万ポンド(約50億円)。ミツカンは2002年に英2位の食酢メーカーを買収して現地で家庭用食酢市場に本格参入しており、食酢関連の事業拡大を急ぐ。現地法人を通じて、7月末までに手続きを終える。取得するのはモルトビネガー麦芽酢)「サルソンズ」、ワインビネガー「デュフレ」、ピクルス「ヘイワーズ」の3ブランドと、マンチェスター郊外にある工場。サルソンズは食酢市場で32%、ヘイワーズはピクルス市場で19%を握る英国のトップブランド。」(日経新聞、2012年6月15日)

 

Branston is an English food brand best known for the original Branston Pickle, a jarred pickled chutney first made in 1922 in the village of Branston near Burton upon Trent, Staffordshire by Crosse & Blackwell. The Branston factory proved to be uneconomical, and production was moved to Crosse & Blackwell subsidiary, E Lazenby & Sons in Bermondsey, London, where it invested in new buildings in 1924 and 1926, which remained in use until 1969.
In 2004, the pickle business was sold by Nestlé to Premier Foods and production was moved to Bury St Edmunds in Suffolk. Premier Foods sold the brand to Mizkan in 2013, at which time it ceased to be labelled as Crosse and Blackwell because in Europe this name was sold separately to Princes Group. Over 17 million jars a year are sold in the UK.(Wikipedia

 

ほほぉ。やるやん、ミツカン。グローバル企業だったのか。

 

チャツネ

 

師匠邸では、本日、家事がいろいろと忙しかった。家じゅうのカーペットやラグを洗ってもらうことになっていて、朝から業者のおっちゃんが家に入ったり出たりしている。昨夜から、カーペットやラグの上に載っている障害物を避難させる作業を行っている。「洗う」ってどうするのかと思ったら、おっちゃんはわざわざ、「水タンク」的なものを持参していた。日本みたいに、玄関脇の水道の蛇口なんてないからねえ。なかなかの大仕事だねえ。そして明日は、二週間に一度の「リサイクルごみの日」だそうで、師匠とロズはさっきから、家じゅうのごみの分別と、それを専用のコンテナに入れる作業をしている。昔、「えげれすに住んでいた」とはいえ、それは「間借り」だったわけで、こういう「暮らしマター」とは無縁だったので、なかなかに興味深い。生活の一端を覗いた感じである。

 

水タンク

 

リサイクルごみ

 

師匠に別れを告げ、ホテルへ戻る。ロズはなんと、手作りジャムを一瓶くれた!最高のお土産じゃないか!さて明日は、コーチ(長距離バス)で、一路、倫敦へ。