えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】えげれす通信2024_vol.03:スコットランド入国編 (13/02/2024)

本日はLNER(London North Eastern Railway)でアバディーンへ向かう。ホテルを出て、今日はフィンズベリーパーク駅に行ってみる。来週、倫敦に戻った際のホテルも同じなので、買い出し関係の偵察も兼ねる。

 

マナーハウス駅周辺よりフィンズベリーパーク駅周辺の方が開けており、小型スーパーの「Lidl」と「Iceland」があった。これなら滞在中の買い出しもできそうだ。しかし、今回はまだ、大手スーパーの「Sainsbury's」と「Tesco」にお目にかかっていない。リドルで、本日移動中の食糧と酒を仕入れ、ピカデリー線でキングスクロスへ向かう。

 

キンクロで現金を多めにおろす。これからスコットランドの僻地を回るので、多めの現金が必要なのと、バンクオブスコットランド紙幣(ババ的)を掴まない為に、バンクオブイングランド紙幣をたっぷり用意する必要があるからである。

 

キンクロ発10:00のアバディーン行特急に乗る。車内に入ると、僕の予約席には、先客の夫婦が座っている。窓側は僕の予約席、通路側は「キンクロ→ニューカッスル」の客の予約らしい。ニューカッスル行きの予約客は「ピン」である。しかるにそこには、明らかに予約とは違う「夫婦」がいる。ただし、そんなことには動じないのだ。予約なんてものは、誰も信じていない。予約した客なんて、来るかもしれないし、来ないかもしれない。だから、空いていれば座るし、もし予約客が来たら、よければ良いだけではないか。

 

僕が「スミマセン」と言うと、夫婦のおばちゃんが、にこやかに応え、彼女ひとりが横の通路席に移動した。彼女が移動した席もキンクロからの予約席だったが、誰もいない。予約など、誰も信じていないのである。モノゴトは、いくら緻密に立案しようと、いくら事前に「備え」ようと、現実のニンゲン行動などは、所詮、ケセラセラなのだ。空いていれば座る。誰か来たらよける。何か問題でも?(我が国では、知恵袋で尋ねないと安心出来ない人がいたり、ヤフコメで不毛な論争になったり、しょーもないコメンテーターが朝の情報番組で言い合ったりしそう)。

 

日本人は、「予約は絶対である」「皆、それを守るはず」という感覚を共有している。だから、自分の予約席に先客がいる場合、それは確実にその人のミスである。ミスであるから、ミスをしている人を詰る気持ちが何処かに生まれる。だから、声がけが、「責め」の詰問調になる。

 

えげれす人は、「予約なんて信じない」「皆がそれを守るなんて有り得ない」という感覚を共有している。どちらのミスなのか、ミスの本質は何なのか、そんなことを追求しても仕様がない。それよりも、互いに「にこやかな態度」を心がけさえすれば、問題の本質はさほどでもないことが、互いに了解される。だからどちらも、会話はにこやかで、穏やかである。

 

「問題」というのは、その場の当事者の感覚如何で、その内容を変えるものである。「備え」は必要だが、「備え」が全てを解決する訳ではない。

 

アバディーン行特急は快調に、一路、北を目指す。ニューカッスル行とかエジンバラ行とかではなく、その先まで行く長距離だからか、通常は停車するピーターバラとかドンカスターとかを通過して、なんと、最初の停車駅はヨークである。この辺りは、去年、悪天候で四苦八苦したところだなあ。さらに、我がダーラムも通過して、次はニューカッスルである。大勢の客が降りて、車内には少し、空きが出る。バーウィックアポントゥウィードに停車し、ダンバーは通過すると、エジンバラウェーバリー駅に到着した。2/3くらいが下車するが、結構な数が新たに乗車してくる。

 

犬も乗ってくる

 

バーウィックアポントゥウィードを越えたあたりから、明らかに、車窓が変わる。イングランド中部は地形が平板でかなり単調だし、羊もほぼいない。しかし、イングランド北部から、国境を越えて、スコットランドに入ると、地形が嶮しくなり、北海も見えるようになる。「丘陵と山のあいだ」、くらいの起伏が増えてくる。そして、「なだらかな斜面」にも、「海岸近く」にも、そして、「急峻な崖の狭間」にも、要するに何処にでも、ヤツらが点在し始める。…ようやく「始まった」感じだ。

 

点景の始まり

 

エジンバラを出て最初の見どころは「フォースブリッジ(Forth Bridge)」である。1890年完成の世界遺産であり、ここを通るときにはいつもいつも、目を凝らして見ている。そして今日は、新たな発見があった。途中の眼下に広がる、この、廃墟っぽいのは一体何だ?

 

見づらいけど、異様な光景

 

ググると、「インチガービ島(Inchgarvie)」という無人島らしい。そしてあの廃墟は、「15世紀に建てられたタワーハウスであり、1519年から1671年までは刑務所として使われた」らしい。…無人島⁈うわあ、ガイドツアーとかあるんなら、めちゃくちゃ行ってみたいぞ。

 

次の見どころは、エジンバラから20分ほどのところにある「カーコーディー(Kirkcaldy)」駅。アダムスミスはこの町で生まれた。しかし駅があり、しかも特急が停車するほどの駅とは知らなかった。

 

さて、無事にアバディーン駅に到着、ホテルにチェックインをする。・・・しようとして、信じがたいトラップが待っていた。ドアを開けようとすると、鍵がかかっている。まあ、このタイプはよくあるので、慌てずに、ブザーを探す。が、しかし、どこにもない。あれ、これ、どうやって呼び出すの?

 

叩いてもダメ。暗証番号を適当に入れてもダメ。おいおい、どうするんだ?

 

ふと見ると、張り紙があり、「何かあったら電話してね」とある。いやしかし、ワタクシ、海外プランとか申し込んでいないのよ。データの方は、なんやかんやで使う機会もあるかもしれないので、それなりの準備、もとい、「備え」をしていた。しかし通話の方は、まったく想定していなかった。しかし、これは、電話をかけるしかない。それ以外の手段は絶無っぽい。

 

えげれすで国際電話をかける場合は、最初に「00」を押す。僕の携帯は「日本」なので、「日本からえげれすに国際電話を、しかしながら、えげれすから、かける」というややこしい状況であるが、経験はしていたので、慌てない。えげれすの国番号が「44」だってことも知っているので、動じない。張り紙の番号にかけると、果たして、昔聞いた、懐かしい、えげれすの電話の呼び出し音が鳴り、ほどなくにいちゃんっぽい人が電話に出た。

 

結局、「ドアの暗証番号」を聞いて中に入り、「鍵ボックスの暗証番号」を聞いて部屋の鍵を自分で出し、ついでに「wifiのPW」も聞き出し、なんとか、部屋にたどり着くことができた。

 

にいちゃん曰く、「詳細はメールで送りますね」というもんだから、「僕のメアドってわかってます?」と聞くと、「いや、わからないです」とのこと。そこで、自分のメアドを、電話越しに、一文字一文字口頭で伝える、という、日本人相手でも至難の業を、英語でやらねばならぬ羽目になった。しかし、これも、昔やったことがあるので、動じない。例の、

 

「〈e〉 for 〈Every〉」

 

みたいな、一文字一文字を、それを頭文字とする単語をくっつけて伝える、という技を繰り出す。一つでも間違ったらメールは届かないものだが、これまた無事に、詳細メールが届いたとさ。

 

いやはや、無人のホテルって、どんだけ近未来やねん。ここ、えげれすやで。

 

やはり本日も、「備えなくても経験で、憂いなし」の日であった。明日は、アバディーン空港で車を借りて、スコットランド北西部を中心に周ってくる予定。