えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】にっぽん徒然:貉にキュン (28/02/2024)

一昨日、2/26に、えげれすの長旅を終え、帰国。昨日は、雑務を片付ける。そして、本日、JR東日本が今年発売した「キュンパス」なる凄いフリー切符を使って、サクッと日本の旅に出る。日本の食を取り戻す旅に出る。

 

2月から3月の平日に限り、¥10000円で、乗り放題。新幹線自由席も乗り放題。在来線特急自由席も乗り放題。新幹線を含む特急の指定席も2回乗れる。さらに旧国鉄の三セクや、三陸鉄道なんかも乗り放題、という、まことに太っ腹な、恐ろしい切符が売り出された。「平日のみ」というのが良いじゃないの。この時期、平日は超閑散期のはずで、JRさんも、そこに目を付けた企画であろうと推察する。そして、平日の真昼間から、堂々と旅に出られるヤツなんて、世の中そんなに、いないに違いない。ニッポンを、ゆるりと、堪能するぜい♪

 

本日の予定は、「東京(上越新幹線)新潟(白新・羽越)秋田(奥羽)青森(青い森)八戸(東北新幹線)東京」、というもの。ポイントは、「在来線特急」と「旧国鉄」である。

 

ワイド周遊券が潰えてしまった現在、僕が旅に使うのは、基本的に「18きっぷ」である。通常料金で鉄道の長距離移動をすることはほとんどない。特急など、とてもとても、乗れませぬ。ましていわんや、新幹線、をや。しかし、かつてのワイド周遊券があった時代には、全国の特急に乗りまくり、あちらこちらに行きまくっていた。ワイド周遊券では、区間までの往復と、区間内移動に、特急自由席が使えた。現在では、多くの在来線特急がなくなってしまったが、新幹線が走っていない、しかしながら幹線区間には、未だ、在来線特急が健在である。羽越本線奥羽本線なんかは、その一例である。大昔に乗った、そしてそれ以来、恐らく30年以上乗っていない、これらの「特急」に、久しぶりに、乗りたい。

 

また、新幹線が開通し、多くの区間が三セクになってしまった。三セク区間は、「18きっぷ」では乗れないし、運賃も高い。東北本線の盛岡以北、特に、青森県区間は、仙台在住当時でも、仙台からは鬼のように遠いため、数回しか乗ったことがない。これまた恐らく35年くらいは乗っていない。これにも、久しぶりに、乗りたい。

 

「本日の予定」は、国鉄時代に培った僕の「肌感覚」では、日帰りなんぞ、到底不可能な行程である。しかし、上越新幹線と、東北新幹線の全通によって、なんと、オソロシイことに、日帰りが可能なのである。「はやぶさ」恐るべし。700km超を新幹線が貫く、ってのは、凄いことだな。

 

そんなわけで、東京駅6:08発「とき301号」(自由席)にて出発、新潟を目指す。

 

出発

 

2月の、平日のあさイチ新幹線、そんなもん、誰も乗らんやろ、と思っていたら、まあ、乗るわ乗るわ、一時はほぼ満席になったぞ。大宮でどっと乗る。しかし、高崎でまあまあ降りる。これは通勤ってことかね?そして越後湯沢でどっと降りる。こちらはスキーとボーダーの若者たちである。あとの残りは、新潟までの出張組と、そして・・・、恐らくは「同士」っぽい。服装を見ても、どう見ても、「働くおじさん」の姿ではない。あれ、しかし、長岡から結構乗ってきたぞ。再び、ほぼ、満員になった。長岡から新潟まで新幹線に乗るって、どういうこと?通勤客ってこと??

 

とき

 

E7系新幹線は、乗るのは初めてだな。内部の造りは、なかなか落ち着いているな。なんと、ウォッシュレットだぞ!(今頃気づく)そして、現代では当たり前なんだろうけど、コンセントと、WIFIが使えるのが良いねえ。旅人にとって、「この二つが必須」というのは、えげれすでも、マレーシアでも、しみじみ痛感した。首都圏の鉄道のWIFIサービスは、東京オリンピックのために各社が整備したけど、維持費が採算に見合わず、多くが廃止になっているという。あれ、外国人旅行者は大変だよなあと、「海外目線」で日本を眺める。しかし、天下の新幹線は、さすがに完備している。

 

なかなか落ち着いた佇まい

 

左には富士山

8:10新潟着。8:22発「いなほ1号」(指定席)に乗り換える。

 

ピンクかい

 

「とき→いなほ」の乗り換えは、一種の「黄金パターン」なんだろうな。新幹線車内でも、降車ホームでも、乗換案内が繰り返される。東京から下越地方へ向かうダイヤの始発なので、それなりに需要があるんだろう。しかし、本日は、やはり超閑散期のためか、「本来の需要」に当てはまる「ビジネス客」は、殆ど見当たらない。乗り換え客のほとんどは、見る限り、「我が同好の士」ばかりと思われる。「働かないおじさん」たちである。朝の通勤ラッシュの新潟駅構内は、「正常のニオイ」を放っている、健全なる、真面目に労働に勤しんでいる、「通勤通学客」でごった返している。その中を、「独特のニオイ」を纏っている、全く謎の、平日朝から何処で何をしてんねんという、「同好の士」、言い換えれば、「同じ穴の狢たち」が、彼らの人流を横切り、「いなほ1号」のホームへと、急いでいる。

 

車内は、ムジナたちで、まあまあの混み具合、自由席指定席共に、乗車率は45%くらいかな。この特急は秋田行で、秋田までは3時間35分かかる。ビジネス客がいるのであれば、彼らは様々な駅で、ぱらぱらと下車するに違いない。客の入れ替えも、まずまず、あるに違いない。しかし、残念、そこはムジナ、である。彼らが降りるのは、ほぼ間違いなく、「他路線との接続駅」になる。それ自体が観光地である駅も可能性はあるが、この先、そういう雰囲気の駅はほぼない。ということは、新発田信越線)、坂町(米坂線)、余目(陸羽西線)、羽後本荘由利高原鉄道)、くらいしかない。あとは、観光地ではある酒田くらいか。・・・これ、「全員が秋田」パターンじゃないか。「全員が終着駅まで乗り通す」パターンじゃないのか。密度、濃すぎw

 

まあまあ混んでいる

 

新潟、というか、長岡以西の「日本海縦貫線北陸線信越線)」は、大阪の帰りに寄り道したりして、何度も通ってはいる。しかし、新潟以東の「日本海縦貫線(白新・羽越線)」は、とにかく久しぶりである。思えば、大学入学で、仙台から大阪へ乗り込んだあの時も、仙台からわざわざ青森まで行き、そこから、当時の日本最長昼行特急「白鳥(青森~大阪)」に乗って、大阪まで行ったんだった。大阪時代も、寝台特急日本海」で函館に行ったりしたもんだった。「日本海縦貫線」は、関東地区からは、なかなか行きにくい。しかし大阪だと、馴染みがあるし、乗りやすい。北前船は江戸は関係ないしね。

 

新潟セット

 

村上のデッドセクションを越えて交流区間に入ると、間もなく、日本海が見える。村上も一度は呑みたい街なんだよなあ。三面川は鮭の遡上の南限で、町は「鮭」で栄えている。鮭料理を出す店が多い。そういえば、えげれすで泊まったインヴァネスも「鮭の町」だったなあ。羽越線は、ここから暫くは、日本海沿いを進む。それを見たいがために、海側の指定席を取ってある。

 

笹川流れ」のあたり

 

そういえば羽越線というのは、単線区間と複線区間とが入り混じり、ダイヤを組む「スジ屋」泣かせだということだけど、それは今でもそうなのかな。三面川の話も、羽越線の話も、「大事なことは、すべて、宮脇俊三から学んだ」ワタクシであるが、それは僕が中学生の時のこと。現代では、その時ほど、在来線特急は走っていないし、急行は全廃だから、退避や追い抜きは、さほど必要ない。とはいえ、単副混在は相変わらずなのかな。海側は進行方向左側であるため、右側の状況は確認できない。

 

通路を挟んだ席にいた、明らかにムジナーと思しきおっちゃんが、府屋、なる小駅で下車した。彼は完全にムジナーだと思ったんだけどな。地元なのかな。

 

改めて見回すと、ムジナーたちの属性は、僕と同じ、オサーン系が多い。同じ「乗り放題」でも、「18キッパー」と大きく違うのは、昨今の「18キッパー」を構成する若い学生諸君の姿が皆無だということである。近年では、「18キッパー」の裾野が広がり、昔は考えられなかった、若いネエチャンや、爺さん婆さんなんかも増えてきている。しかし、ネエチャンたちは、テーマパークに行くとかライブに行くとか、何らかの「目的」のための移動っぽい。爺さん婆さんたちもまた、山登りかなんかの「目的」のための移動が多い印象である。しかるに「キュンパサー系ムジナ」たちは、ほぼ、オサーンである。そして、「目的」は、「タダ、ノルコト、のみ」っぽい。要は、「乗り放題切符ユーザー」本来の、生まれたままの、姿ということである。

 

まあ、考えてみれば、平日の真昼間に、ぼやっと日本海を眺めている、眺めに来る、みたいなことは、勤勉なる学生諸君たちには出来ないわな。学校あるよな。しかしながら、オサーンたちだって、仕事があるはずだよな。リタイヤしている年齢には見えないから、社会の中堅を占め、経済の根幹を担う人たちであるはずだ。・・・なんで?なんで働いていないの?なんで可能なの?何やってるの?

 

・・・いや、人のことは言えない(笑)

 

「ジジババ」「団体」の構成比が多ければ、確実に下車する人が多いであろう「あつみ温泉」駅でも、我が「特急ムジナ1号」の乗客は、ピクリともしない。全く動じない。空気は全く入れ替わらない。

 

秋田到着。結局、車内の空気の入れ替えはほぼ、なかった。さあ、ここからの展開や如何に、である。

 

選択肢はいくつかある。①秋田新幹線に乗る。②奥羽本線で南下する。③奥羽本線で北上する。④男鹿線に乗る。⑤秋田観光をする。さあ、オマエら、どこへ行く?僕は、③秋田12:40発、奥羽本線の特急「つがる3号」(自由席)で青森へ行く。できればゆったり、2月の超閑散期の旅をゆったりと、楽しみたい。乗り換え時間を利用して、駅そばを喰い、次で呑む酒と摘みを仕入れ、土産を物色したい。

 

しかし、「いなほ」を降りようとするムジナーたちの会話からは、

 

「・・・いなほに乗れただけでよかった」
「つがるはどこだ?」
「次は2時間ちょいか」

 

という台詞が漏れ出てくる。僕は嫌な予感がした。

 

到着ホームのちょうど横に、「つがる3号」が停車していた。しかも、発車までまだずいぶんあるのに、ドアは開いていた。「いなほ1号」の到着と同時に、ダッシュして「つがる3号」の自由席車に乗り込み、席取りをしなければならない。僕はそれを考えていた。しかし、雰囲気からして、ムジナーたちの思考回路は、互いに酷似しているらしい。オレが考えていることを、ヤツらは同じく、やってくるらしい。コイツら、完全に、③だろ。①とかないだろ。⑤もあり得ないだろ。「いなほ」に乗りたい、それが目的ってことは、次は確実に「つがる」だろ。やはりヤツらは、「在来線特急に乗りたい」だけだろ。つまり、ワタクシと同じなのだ。

 

つがる

 

同じ行動パターンをとる人たち

 

「つがる」の席を無事に取り、トイレに行き、いったん改札を出る。次に目指すは駅そばだ。しかし!そこには、驚愕の光景が広がっていた。駅そばで、たかが駅そばで、凄い行列ができている!食券を渡して番号札を貰う。番号が呼ばれたら、蕎麦を受け取る。これは「通常」のオペレーションである。しかし、目の前では、「食券を渡す」ための、列の整理がなされていた。つまり、ある種の入場制限である。地元のサラリーマンたちは、「一体、何事だ?!」と驚き、途方に暮れている。そら、そうだよな。こんな非日常の光景、吃驚するわな。「リーマンショック」だわな。

 

この背後に、驚愕の人数が待機している

 

見渡すと、そこを占拠しているのは、やはりムジナーどもである。考えることが、完全に同じなんだよな。全く、イヤになるわ(オマエモナー)。

 

「蕎麦」「つゆ」「葱」は良かった。「かき揚げ」はイマイチ。

 

店主のおっちゃんは、やたらテキパキと、ムジナーたちを捌いていく。小気味の良いこと、甚だし。恐らく、平日の毎日、この「いなほ1号到着時間」に、同じことが展開されているのだろう。キュンパスの使用開始間もない頃は、このおっちゃんも、右往左往したに違いない。しかし、使用開始から既に二週間弱が経ち、毎日毎日、「ムジナ処理」に明け暮れた挙句、恐ろしく合理的な「ムジナシステム」が確立されたに違いない。

 

これ、秋田の佐竹知事の、「例のヤツ」からの、タナボタ的展開だよなw

www.sankei.com

 

僕は、ムジナーの中では、比較的遅い方の入店だった。最速集団は、ダッシュで喰いに来ていたらしい。僕が喰い終わるころには、「入場制限」は自動的に解かれていた。しかし、これって、

 

・・・イナゴ

 

じゃないのか。大群で襲ってきて食い物を喰いつくし、終われば次の現場に羽ばたいていく。蝗じゃないか。

 

僕の「プラン」は、次は、駅ビルの土産屋で、酒と摘み、そして土産を買うことである。駅ビルの店を覗くと、果たして・・・いた。イナゴたちが、いた。そして、漁っているものは、やはり、酒と摘みであった。

 

いや、もう、うんざりよ。
なんなん、これ。同じ思考パターンのヤツ、ばっかりなんだよ(モナー)。

 

「つがる」の先頭で写真を撮る(イナゴのほぼ全員)。駅スタンプを押すのに順番待ち(イナゴの過半数くらい)。そして、イナゴの中にも、「最速プロイナゴ」もいれば、「出遅れ初級イナゴ」も、混在していることがわかってくる(言うまでもなく、僕は、プロイナゴである)。「初級イナゴ」たちは、「列車の入線時刻に細心の注意を払う」「先に席取りをしてから他の行動をする」という鉄則を知らないヤツが多いらしい。発車まで40分以上もあるので、蕎麦を喰い、土産を仕留め、スタンプを押し、写メを撮って、そのあとで悠々と「つがる」にやってきたと思しき「初級イナゴ」たちが大勢いる。彼らは、自由席の、あまりの混雑ぶりに、呆然としている。発車10分前には、自由席車の窓際座席はすべて埋まっていたのである。乗車率は、自由席車で、70%くらいか。

 

混みまくり

 

「つがる」が発車してすぐに、車掌の検札があった。そして、やはりヤツらは、ムジナーだったことが判明した。車掌は客のひとりひとりに行先を聞いている。客の99%が「キュンパス持ち」で、80%が「青森まで」行くと答えている。観光するヤツなど一人もおらぬ。ただただ、乗るだけ。しかも、在来線特急に、だ。在来線特急で酒を飲む、これぞ、ムジナーの極意であった。うんざりするほど、考えが同じであった。

 

僕の前の座席に座っている、おっちゃんムジナー二人組が話している。

 

「つがるは三両編成って、短すぎるよな」

 

いやいやいやいや。普段はそんなことはないんだってば。これは特需なんだよ。アンタらのせいなんだよ。

 

「あの蕎麦屋、混みすぎだよな」

 

いやいやいやいやいや。普段はそんなことないんだよ。アンタらのせいなんだよ。ていうか、やっぱり、アンタらも、あそこで喰ってたんかい。

 

秋田セット

 

「いなほ」と同じく、車内の空気は微動だにせず、入れ替わる気配が全くない。東能代駅に着いた時には、ここは五能線の乗り換え駅だし、五能線は「乗る価値のある線」だから、少しくらい降りるかなと思った。しかし、ピクリともしない。

 

しかし、弘前駅では、予想とは異なる事態が起きた。どうやら、「弘前-青森」は、「つがる」本来の需要がある区間らしい。我々とは明らかに別種の、「今日もきちんと働いている人たち」の面々が、大勢、ホームで、「つがる」を待っていた。彼らは、「なんじゃこら?!」という、怪訝さ全開の顔つきで、「異常事態つがる」を眺めている。「俺たちのつがるを返せ」と言っているようでもある。彼らは、微動だにしない我々の車内に大勢突入し、なんと、超閑散期の特急「つがる」の乗車率は120%くらいになってしまった。そして、漸く、本当に漸く、車内に方言が聞こえるようになった。なにせ、ここまでは、聞こえてくるのは東京コトバばかり。「とき」→「いなほ」→「つがる」と、全く入れ替えがない状態で、ここまで来ているからね。

 

つがる~へいや に~♪

 

ゆぎふ~る~♪

 

ころは よぉ~♪

 

新青森駅到着。さて、ここは、観察のしどころだ。時間はまだ16時前である。東京行き最終新幹線までにはだいぶ時間がある。さて、ムジナたちは、どういう進路を取るのか?新青森で降りれば、それは「新幹線乗車」を意味する。もう一つ先の「青森」まで行けば、・・・さて、それは?ちなみに僕は、青森まで行き、そこから、旧「国鉄東北本線」、現「青い森鉄道」に乗ろうと思っている。もし、ヤツらがここまでも、オレに付いてきたら・・・?この、ある種の「東京の団体客」然とした大人数が、「特急」ではなく「ローカル線普通列車」に突入してきたら・・・?その混雑度はエゲツないレベルになること請け合いだ。18キッパーにも侵されたことのない「青い森鉄道」である。史上初めての事態が起きるかもしれない。「俺たちの青い森を返せ」と、「ムジナ排斥運動」が起きるかもしれない。

 

しかし、それは杞憂に終わった。東京からの団体客「ムジナ御一行様」は、青い森には乗らなかった。では、どこへ向かったのか?青森で、新たなイナゴと化したのか?それを確認できなかったのは無念だが、僕は漸く初めて、ローカルな空気の中で、車窓を楽しむことができた。やれやれ。

 

漸く通常モード

 

本当は、青森駅をもう少しじっくり見たかった。名物の「長いホーム」も、じっくり見たかった。さゆりも唄っている、「連絡船への乗り換えのために、先へ先へと歩く」あのホームも、堪能したかった。なんなら駅の外に出て、町の散策もしたかった。乗り換え時間は僅かだったので、その余裕はなかったが、仮に、「御一行様」が青い森へ突入しそうであれば、この列車をやめて、一本遅らせることも考えていた。しかし、大丈夫そうだったので、予定通り乗ってしまった。青森駅は、全く、見られず。

 

ながーいホーム

 

あとは、東北新幹線で帰るだけだが、このまま帰るのは、早すぎる。何処かで、何かを、することができる。「何か」とは、「一杯」と、相場は決まっている。そうすると、問題は「何処で」になる。僕は八戸を考えていた。時間的にも丁度良いし、飲みたい街でもある。八戸の飲み屋街は、八戸駅ではなく本八戸駅周辺なので、本当はそちらに行きたいのだが、移動の時間がもったいない。それで、選択肢は少ないものの、八戸駅周辺を攻めようと思う。

 

野辺地から対岸の下北半島の付け根を望む

 

八戸駅到着

 

八戸駅前の居酒屋へ。開店直後にも関わらず、「御一行様離脱組」と思しき東京コトバのオヤジ四人組と、本日ばかりは「御一行様」の陰に隠れて目立たなかった中国人観光客三人組が、既に陣取っている。しかし、よかった。最悪、「御一行」で店が占拠される事態を想像していたので。

 

漁師がやっている店だそうで、メニューはまことに魅惑的である。つぼ鯛刺身にマツカワカレイ刺し、ホタテ味噌貝焼に、八戸ツブ煮付け。酒は、八仙、豊盃に田酒。ただし、ちと、高いな。まあ、えげれすの外食を考えたら、枝豆¥800を考えたら、こんなものかもしれないけれども。

 

好物の短冊メニュー

 

最初の酒は八仙から。そして、種市の「日本一のホヤ塩辛」が残念ながら品切れだったので、「めかぶ」「長芋短冊ねぶた漬け」を皮切りに、「ドンコのたたき」なる破壊力抜群メニューを頼む。するとおかみさんから「キンキン刺し」を勧められた。

 

キンキン刺し、だと…!

 

「キンキン」と呼んだり、「キンキ」と呼んだり、宮城では「吉次」と呼ぶこの高級魚は、通常は、塩焼きか煮付けで食べる。釧路あたりでは「お湯で茹でる」食べ方がある。僕はこの魚が大好きで、これまで様々、食べてきたが、「刺し」は初めて見たぞ。僕には、「珍しい魚」に出逢うとテンションが上がる特性があるが、同時に、「珍しい食い方」に出逢うと、さらにコーフンする習性もある。そして、「刺しで喰わない魚を刺しで喰う可能性」に出逢うと、血湧き肉躍るテンションになってしまう。だって、「喰わない」ってのは、何かしら、その理由がある訳でしょ?アナゴみたいに、処理に手間がかかる、というものから、鯖みたいに、鮮度の劣化が早い、というものまで、様々な背景がある訳だ。「喰えない」なら仕方ないが、「喰えるけど、喰うのが難しい」という魚の、「でも、喰えますよ」に出逢うと、どうしたって、自動的にコーフンする。

 

キンキン刺し、コリコリして、ウマー♪

 

嗚呼、しかし。えげれすは大好きだけど、やっぱりやっぱり、食は貧困だよなあ。マレーシアは、流石のアジア、何処で何を喰っても、全て標準以上、全て美味かったけれども。しかし、ニッポンの、この、食の繊細な愉しみ方よ。多様な調理方法よ。潤沢な、魚介のラインナップよ。帰国二日後だけに、いつにもまして、沁み渡るわぁ。

 

ニッポン、ウマー

 

「キンキン」は、最後、こうなる

 

日本酒はちと高いので、焼酎に切り替える。面白いのは、「ニンニク焼酎どでん」、青森の田子は「ニンニクの町」だからねえ。試しに頼むと、なかなかの衝撃だ。ガツンと、ニンニクが来る。ただし、旨い。

 

メニューがなんでも美味そうに見えて困る。えげれすからのギャップでショック死しそう。「水タコわさび」。絶対に豊盃に合う。「八戸ナメタガレイ煮付」。ナメタガレイの、あの濃厚な味わいも良いなあ。。そして、「八戸前沖真鱈のフライ」。タラのフライは旨いよな・・・。

 

・・・いや、違う。「cod」のフライはあかん。チップスは付いてこないだろうが、ビネガーびちょびちょにはならないだろうが、これだけはあかん。フラフラと、引き寄せられそうになったが、これでは、「えげれすリハビリ」にならぬ。

 

でも、なあ。結局、今回のえげれすでは、正統な「コッド&チップス」を、喰えていないんだよなあ。

 

オーダー間違いのバーガーのリベンジ?
えげれすのタラ無念を八戸で?
江戸の仇を長崎で打つ?

 

最終はやぶさまで、あと1時間半。どうする、どうなる、仇問題。

 

東京まで、ほぼ、睡眠