えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】にっぽん徒然:台風回避 (02/06/2023)

学会で広島へ。大阪経由で向かう。

 
えげれすかよ。ダーラムからの帰りかよ。というような、traffic disruption に遭遇したが、原因は「水道管破裂」とかではなく「台風」なので、混乱も激甚である。…いや、激甚であろう、と、東京出発の時に思った。最悪、辿り着けないかも知れぬ。

 
成田から関空は飛行機、新大阪から広島はJTBの企画切符で「こだま」の指定席。早朝の出発時点では、東京は小雨、大阪は警報予告と計画運休予告が乱発されていてもはやカオスっぽい。大阪環状線も止まるかも知れないだと?これは、先ずは、飛行機が飛ぶのかどうか、そして関空に降りられるのかどうか、ここにかかっているな。その先は、関空島を脱出できるかどうか。多分新幹線は強いだろう。

 
成田に着くと、飛行機はどうやら飛ぶらしい。ただ、「成田に引き返す」又は「着陸を福岡に変更」という条件付きフライトだそうな。まあその二つなら良いか。なんなら福岡でも良いぞ(笑)。と、余裕をこく(ちなみにこの「条件付きフライト」の件は、僕が気づいた限りに於いては、空港内と機内の両方を通じて一回しかアナウンスがなかったぞ。怠惰なのか、それともその可能性が限りなく小さいからなのか。いずれにせよ、一回でもアナウンスしたならば、その顛末は報告するべきだと思うがな。やはりオレンジの方は、何かにつけて、紫の方より劣る)。

 
無事に離陸し、無事に関空に着陸した。着陸前に結構turbulence があったものの、まああれくらいは、普段でも起きるレベルである。

 
電波発信の許可と共に、すぐに鉄道の運行情報を見る。和歌山、奈良方面がやられつつある。大阪市内は大丈夫。新幹線もびくともしない。余裕こいて、関空のラウンジで休もうかと思ったけど、南からやられつつあることを考えると、やはりこの島からは早く脱出した方が良いだろう。関空は、橋がやられると全ての可能性が一気に消滅する。とりあえず対岸に渡るか。

 
南海に乗った時に運行情報を見ると、JR阪和線日根野以南がやられたとの報が来た。関空からのJRが分岐するのが日根野である。つまり、ついに、関空の危機も目前ということである。

 
南海難波に到着、運行情報を見る。JRだけでなく、南海も、本線、高野線共に、南がやられたらしい。関空の橋が陥落するのも時間の問題か。しかしワタクシは、差し当たりナンバにいる訳で、ここまで来ればあとはなんとでもなるでしょう。新幹線は不死身だろうし。
僕は余裕をこいて、今朝出る時から、今日の昼飯に決めていた、新大阪近くの店のステーキを楽しむ。久々、ウマー。

 
新大阪のとある拠点で、ちょこっと仕事をする。ちなみに山陽新幹線は微動だにせず、「通常運行」の頼もしい文字が光っている。

 
拠点で話を聞くと、この辺は少し前まで、めちゃくちゃ雨が降ったらしい。僕はここまで、全くの小雨にしか遭っていなかったから、ん?と思ったけど、試しに「運行情報」ではなく「警報」の方を見てみたら…和歌山、奈良はおろか、大阪も、東部南部が真っ赤っか、ところどころは紫になっていた!そして愛知とか静岡とかも凄いことになっていた。そして、運行情報を見たら、東海道線もやられつつあった。豊橋岡崎が14時以降に運休だと?熱海あたりもやられつつあるだと?これ、陸路で来ていたら完全にやられたパターンだ。ちょうど良い具合に空路で「跨いだ」格好だな、これは。

 
仕事を終わらせて、新大阪駅に向かう。久方ぶりに運行情報を見る。すると、あなや!盤石だったはずの新幹線サンが、なんと、「乱れ」になっているではないか。東海道新幹線は止まっているではないか。だがしかし、山陽新幹線サンは「影響はほぼ無し」とある。素晴らしい。

 
僕は、指定席を取ってある「こだま」の発車30分くらい前に新大阪駅に着いた。構内に入ると、自販機前のスペースに、くたびれ果てたように座り込む、修学旅行と思しき集団がいる。あれ?この難民たち、さっき、ステーキ帰りにここ通った時からいたぞ?まだいるの?なんで?

 
進むにつれて、あちらこちらに座り込む難民集団が増えてくる。窓口には「ドルヲタですか」って言うくらいの長蛇の列が出来ていて、僅かにいる「フリーの」駅員さんの前には「握手会ですか」って言うくらいの「質問者列」が出来ている。売買払戻系はドルヲタ、とりあえず教えて系は握手会、という棲み分けらしい。握手会の方が列は短い。

 
しかし僕は落ち着き払っていた。まだ余裕ぶっこいていた。何故ならばワタクシは、「東海道新幹線ではなく山陽新幹線」「東向きではなく西向き」「自由席ではなく指定席」「のぞみではなくこだま」、つまり、この難民たちとは明らかに異なる人間であろう筈だからだ。ただ一つ、ダーラムのことが頭をよぎった。乗れたとしても、席まで辿り着けないほど混んでいたら?しかし、まあ、山陽新幹線のこだまでそれはないでしょう。大丈夫でしょう。僕はひとまず、指定席券売機で「オレのこだま」の混雑状況を確認することにした。オレの席の隣に人がいたら、指定席をやめて自由席に移ろうかな。何号車が空いているかな。…まあこれも、余裕の行動である。

 

 
オレのこだまが…表示されない。
なんだ、それ?どういうことだ?

 
慌てて、初めてJR西の、山陽新幹線専用の運行情報を見る。そこには、混乱をキチンと反映させた、「現時点での発着情報」が載っていた。すると…オレのこだまはそこにも載っていない。ということは、「運休」だ。なんということでしょう。

 
こういう状況では、「通常の切符」が最強であり、「企画切符」は最弱である。例えば18切符とて、何かあった時の振替輸送の対象にはならない。付帯条件があればあるほど、「何か」に対して弱くなる。ワタクシの企画切符は、「何がどうあれ、発駅も着駅も変更できないよ。ちょこっとでもズレたら即無効よ」って強めに書いてある。

 
さてどうするか。「オレは梃子でも動かねえ」系のクレームオヤジになるか?はたまた、「理路整然とコトワリを述べる」系のロジカルヤクザになるか?

 
ここがもしえげれすならば、却って心配はしない。何故ならえげれすでは、こういう場合には、先ず間違いなく、現実的な解決策が取られる筈であり、それは文句が出るシロモノではない筈だからである。「社会」というものの実力が発揮されるのは、まさに極限状態において、である。

 
これが途上国ならば、クレームオヤジの面とロジカルヤクザの面の両方が必要となる。何故なら途上国では、こういう場合には、先ず間違いなく、精魂尽きた方が敗れ去るからである。僕はケニアの空港でそれを痛感した。「ヤカラでいること」は時として、社会的な意味をもつ。

 
パンパンここジャパン©︎レッド吉田。さて、どうなるか。僕はひとまず「握手会」に並んだ。進み方を見ると、10分くらいで順番が回ってきそうである(ドルヲタの方は多分一時間はかかる)。
順番が来たので、企画切符を見せて、とりあえず「どうしたら良いですか?」と聞く。駅員氏は「うーむ」と言うので、「こんな時だし、どれに乗っても良いですかね」と聞くと、「そうですね」と言う。「ちなみにのぞみでもひかりでも?」と言うと、「そうですね」と言う。

 
そうなのか(笑)

 
結局、予定のこだまより早く出発するのぞみに乗り、それは臨時だったのでやたらに空いており、広島には、予定時刻よりも早く着いた。

 
今回のdisruption は、僕は奇跡的に回避できたらしい。

 
今夜の宿は、なぜか「夕食無料」というサービスがある。しかし予定のこだまだと、その提供時間に間に合わない筈だった。のぞみのおかげで、無料夕食にも間に合った。…しかし、ごはんのおかわりにカネを取るって、謎のセコさじゃないか?これだけ小鉢とか付けて、しかも一食一食のサーブはおばちゃんの手作業でやってるのに。セルフにして、ごはん食べ放題の方が、経費減になると思うんだがなあ。

 
しかし、まあ、文句は言うまい。本日は上出来でしょう。