えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】えげれす通信2024_vol.10:Geordieおじさん、倫敦へ行く編 (20/02/2024)

大移動の日なので、久々に、「完全荷造り」をする。今回新しく新調した、Aceのトランクは既にパンパン、重量は27kgもある。帰国前に捨てるものもあるので、多少のスペースはまだあるけど、もはや、追加土産の余地はないなあ。

 

えげれすの街路は、舗装の癖に、タイル的な奴の継ぎはぎになっている。継目が滑らかではないので、トランクの車輪は激しくガタつく。ダーラムにはさらに、「石畳」という罰ゲームもある。

 

我がAceのトランクは、日本製の癖に、甚だ設計が悪い。「伸縮持ち手棒」の部分は作りが細く、なんとも頼りない。「伸縮ボタン」が把手部分にあるため、転がしている時に誤ってボタンを押してしまい、意図せずに「ガンッ」と伸縮してしまう。自分の後ろに置いて引っ張っていくと、「伸縮持ち手棒」の長さのバランスが悪く、靴に引っかかる。

 

「継ぎ接ぎ障害」「石畳トラップ」「伸縮ガンっ」の三重苦で、バス停迄の道のりで、ヘロヘロになってしまう。

 

朝のダーラム

 

本日は倫敦まで、えげれすを縦横無尽に走りまくるえげれす大手の、「National Expressのコーチ(長距離バス)」で移動する。ニューカッスル始発の倫敦行き。乗り場は「ダーラムバスターミナル」かと思って、昨日下見をしたら、そこではなかった。昔はここから出ていたのに、今は、Sutton Stのバス停らしい。

 

Sutton St!なんとここは、僕が、ダーラムに来た一年目に住んだところではないか!

 

多分、これらのどれかに住んでた

 

嘗ての我が家の向かいに、なんの変哲もないバス停がある。本当にここで良いの?倫敦行き長距離バスが、本当にここに停まるの?

 

「ポジティブ判断の根拠となりそうな情報」と「オレを不安にさせる情報」という、二つの状況が入り混じる。

 

【ポジティブ判断の根拠となりそうな情報】
・バス停の屋根に「National Express」のロゴシールがある
・バス停の壁に「倫敦行き435便(夜行)」の時刻表がある
・バス停の天井にある電光掲示板には「2/20の出発(本日の日付)」とあり、表示は毎日変わっているらしい(つまりコイツは、「息」をしている)
Google先生の地図でも、ここが乗り場になっている

 

しかし、細かく見ていくと、疑いたくなる状況もある。

 

【オレを不安にさせる情報】
・壁にある時刻表には「435便(夜行)」だけが掲載され、僕の乗る「425便(昼行)」は見当たらない
・電光掲示板には便名が表示されていない
・ネットで検索すると、このバス停は「North East Bound」となっている。バス停には「上り」「下り」がある。「North East Bound」は、「倫敦→ダーラム→ニューカッスル」、つまり「逆向き」なのではないか?(ただし、一方通行道路の多いえげれすでは、バス停のこの「上り下り問題」は、一筋縄ではいかない)

 

さらに不安は高まる。ふと、回送のローカルバスがバス停の目の前に来て、エンジンを停止させた。そして、何たることか、運転手のおっちゃんは、悠然と、朝飯を食い始めた!

 

結局、3台もの回送バスがバス停前に集積し、そこはたちまち、「おっちゃんたちの、盛大な朝飯会場」と化してしまった。「おっちゃんの朝飯パラダイス」自体に罪はないし、ゆっくりと喰って頂いて結構だけど、オレのコーチはどうなるんだ?何処に停まるんだ?停まるスペースはないぞ?コーチの発車時間が迫っているのに、場所を占領して、悠然と朝飯を喰っている場合か?!

 

やはり、ここではないのだろうか。いくらなんでも、長距離バスのバス停前に、長距離バスの発車時刻直前に、3台もの回送バスを連らせて、悠然と朝飯を喰う訳ないよな。

 

オレの不安が極限に達した刹那、倫敦行の「オレのコーチ」が忽然と姿を表した。そして、・・・あまりに呆気なく、「何か問題でも?」といった風情で、「4台目ポジション」に、サクッと停まった(笑)。

 

あゝ、えげれす
やっぱり、念を入れて「備え」ても、現実は「ナナメウエ」からやってくるぜ

 

ここ数日間は、師匠周辺の人びと、つまり、中流階級の人びととばかり話していたから、すっかり忘れていたけど、ここは「Geordie(Tyneside=タイン川流域の訛り)」の国であった。ほとんど別言語の趣である。コーチの運転手は素晴らしく、本当に「素晴らしく」、訛っている。ほぼ、何を言っているのかわからない。

 

僕は、事前に、座席を予約していた。何処の席でも良ければ予約の必要はない。しかし、一番前の、所謂「バスヲタ席」が良ければ、予約料金はかかるが、予約すれば、そこを確保できる。えげれすは日本と同じく、「右ハンドル」「左側通行」。コーチの座席配列は「2×2」の4列。ベスト席は、運転手が遮らない、左の一番前の「1A」である。しかしそこは「車椅子専用席」であり、予約はできない。すると残る「ベスト」は、右の一番前の「1D」である。僕はカネを払って、そこを予約していた。

 

乗り込むと、「1D」には、運転手の交代要員と思しきもう一人のGeordieおっちゃんが、シレっと、座っている。電車の時と違い、この場合は、そこを退いて頂かねばならぬ。

 

「すんません、僕の席、そこの1Dなんですが」
「オレ、今日は、咳が出るから、どっかそこらに座ってくれる?」

 

おいおい。乗務員が「客席」に座るんかい。日本の電車で、鉄道会社の社員が電車移動する時には、車内が空いていたとしても、座らずに、立っているよな。日本の長距離バスだと、乗務員専用の小部屋があったり、途中で乗務員交代があったりするよな。しかもオレは、この、ベストな「ヲタ席」をとるために、事前に入念なる準備をして、しかもカネを払っているんだぞ?

 

よく考えれば、1Aの車椅子専用席は空いている。ん?1Aも「どっかそこら」に入るのか?「理性」ではなく「反射」として、何らかの閃光が、脳髄を貫いた。「熟慮」ではなく「思いつき」で、物は試しと、僕は、Geordieおっちゃんに、聞いてみた。

 

「1Aでも良い?」
「どうぞどうぞ」

 

良いんかーい!えげれすのエエ加減さで、奇しくも、最善の「1A」に座ることができた。車椅子専用だから、足周りにめちゃくちゃ余裕がある。前に運転席がある「1D」とは違い、チョクで前が見える。ちなみに日本だと、規則を杓子定規に適用するため、たとえそこが空いていたとしても、車椅子専用席に座らせて貰えることは余りない(経験済)。

 

備えあれば憂いなし

 

もとい

 

備えても憂うが、憂いたとしても、ナントカナル

 

Darlington停車。次はLeeds。

 

Geordieおっちゃんは、セカンドベストな「1D」に座りつつも、イヤホンで音楽を聴き、スマホをいじり、ヲタの精神を逆撫でする。なんだか日本で見たことある、「プヨプヨ的なヤツを消すゲーム」をしている。待機中とはいえ、勤務中だよな(笑)。自衛官とか警察官とかの制服組がコンビニで買い物したり、駅員や車掌がスマホ見たりしただけで「通報案件」になる日本とは、なんと異なる状況だろうか。確かに今は待機中なんだから、別に寛いだって良いわな。いちいち目くじら立てることじゃないわな。

 

そんなこんなでLeedsに到着。LNERの鉄道は、Leedsは通らずYorkを通るが、高速道路のM1はLeedsを通る。

 

市内バスターミナルとコーチターミナルが繋がる、なかなかでかい施設である。30分の休憩。一旦、全員降ろされる。無人のバスは施錠される。11:35までに戻るように。訛りが酷く、聞き取りはギリギリだ。「カムバック」が「コムバック」になっている。

 

NEのコーチがずらっと並ぶ

 

目の前には屋外マーケットがあり、その奥には屋内マーケットがある。しばし散策、えげれすはだいたいそうだが、大したものは全く無し(アンティークマーケットの場合は、さにあらず)。

 

リーズのマーケット

 

時間になり、バスに乗る。「最初は、ニューカッスル、ダーラム、ダーリントンからのお客さん、どうぞ」と、リーズからのお客さんと分けて誘導する。なかなか細かいオペレーションをするやないの。

 

運転手の方のGeordieオヤジは、運転しながら、テイクアウェイの紅茶を飲んでいる。するとそのうち、片手でハンドルを握りながら、もう片方の手で、鞄をゴソゴソしている。何かなと思ったら、パンを出してきた!袋から取り出して喰い始めた!!終わったら今度は、チョコバーの包みを剥いて喰い始めた!!!

 

自由かよ

 

これ、日本だったら、「通報案件」では済まず、「NHK7時のニュース案件」やろ。

 

まあしかし、運転手だって人間だし、人間だから腹も減るし、腹が減ればパンも喰うわな。何もおかしくないわな。

 

南下してきたM1は、倫敦の北部環状A406とのジャンクションで終わる。A406を左折すると、懐かしいBrent Xの巨大モールが現れる。程なく、Golders Greenに停車、数人降りる。

 

Geordieコンビが、何やらしゃべっている。相変わらずさっぱり聞き取れないが、Oxford Stが、とか、Edgware Rdが、とか、言っているようだ。どうも、工事による通行規制と迂回路についての話らしい。「運転手オヤジ」は「1Dおっちゃん」に、その辺の状況を調べてくれと頼み、「1Dおっちゃん」はスマホで調べている。さっきゲームをしていた「彼のスマホ」で調べている。

 

いやいやいや
業務にオノレのスマホ使うんかい
ていうか、そういう情報って、本部から連絡あるんと違うんかい

 

なんというか、「自力感」「手づくり感」「プライベートドライブ感」が満載、てんこ盛りである。「北の国から」の五郎さんが、誰の手も借りずに小屋を建てる、くらいに、「手作り感」が溢れる道中である。しかしながら、同時にこの会社は、「えげれす最大のコーチ会社」でもあるのだ。その会社の「運行」でもある我がコーチは、Finchley Rd、St John's Woodを過ぎ、A41からA5025を経由してA5(Edgware rd)へ進入した。ここは、僕にとっての馴染みの道、嘗て住んでいたKilburn方面に連なる道である。当時よく乗っていた、バスの「16」「98」のルートでもある。Marble Archから、Park Laneの高級ホテル街を経て、Hyde Park Cornerをぐるっと回る。多分ここまでは、適切な迂回を果たしている。倫敦で、間違いない経路を辿れている。Geordieおっちゃんコンビよ、大都会倫敦で、チカラを見せつけているではないか。都会の雰囲気に飲まれず、ぐいぐいやれているではないか。16:02、Victoria Coach Stationに到着。

 

Edgware Rd駅

 

Victoria Coach Station

 

Victoria駅

 

Victoria線でFinsbury Parkへ。先週滞在したホテルにチェックインする。今日は移動だけだが、疲れた。明日は一日、倫敦周遊に充てる。