えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【旧】えげれす通信_vol20:ものまね歌合戦 (22/05/1999)

世の中、スターウォーズ話で盛りあがっていますが、実は一度も見たことが無い僕は、方々でUnbelievable!と言われて困っております。スタートレックなら得意なんだけどな。でも、これを機に、いっぺん見てみようかな。


今日は一日中部屋でテレビを見ていた。今は、何かの映画で、ウーピーゴールドバーグが歌っている。昼間は、FAカップ(天皇杯みたいなもん)の決勝戦を見ていた。


マンチェスターUTDが、ニューカッスルを2-0で下した。ニューカッスルは、ユニフォームが白黒の縦じまなので、何となく、現在2位(!)の阪神を思い出すのと、僕の好きな町であるダーラムの隣であるのと、そして、僕の好きな「Newcastle Brown Ale」というビールがこのチームのメインスポンサーであることと、そんなこんなで何となく好きなチームである。


片や、マンユーは、いわば巨人である。強過ぎる。しかし、そんだけ金をかければ、そりゃ強いわな、というところが、逆説的な「巨人との違い」ってところである。


今度の水曜には、Europeanカップという、こちらは欧州三大カップの一つの決勝戦があり、マンユーはそちらにも出る。こちらに関しては、えげれすのチームということでマンユーを応援するけど、えげれす国内のFAカップだと、「巨人」を応援するわけにはいかないのだ。しかしながら、顔と名前が一致する選手が一番多いのがマンユーであり、このあたり、僕のちっちゃい頃の巨人と同じで、どうにも複雑な気分である。


週末は、スポーツが沢山あるので色々と見たいものがある。例えば、今、あの、「クリケット」のワールドカップをやっている。「ワールドカップ」とはいえ、恐らく、クリケットをそんなに真剣にやっている国は、「えげれすとその仲間たち」くらいのものだろう。そんなに盛りあがらないのでは?と思っていたら、いやはや、毎日テレビ中継していて、客も山ほど入っている。要は、めちゃめちゃ盛り上がっている。


そうなると、これを機に、謎の競技「クリケット」のルールなどを覚えようと思うわけで、友達と、毎日、少しずつ、あーだこーだと言い合っていたら、えらいもので、おぼろげながら、全体像は掴めてきた。ここにきて、ダーツ、スヌーカー、と並ぶ「えげれす三大謎スポーツ」を制覇したことになる。えげれす人(と、そのお友達)以外には、妙に見えて、ルールも謎であり、結局何が彼らをそれほどまでに熱狂させしめるのか、やっぱり全然わからない「謎スポーツ」、であるが、せっかく暮らしているのだから、謎に浸りたい。


土曜日のテレビは、いつもなら、「ミスタービーン(再放送)」「You've been framed!」「Blind Date」「Stars in their eyes」と、お気に入りが続くのだが、なにしろこの国では、番組編成が無秩序である。毎週同じ時間に同じ番組をやるという秩序を守るのは、ニュースとソープオペラ(花王愛の劇場系)ぐらいのものである。他の多くの番組は、突然なくなったり、突然復活したり、突然他の曜日になったりする。


今日は、比較的動くことが無かった僕のお気に入りの上記4番組のうち、ビーンとブラインドデートが消えた。ワールドカップだとか、イレギュラーな中継ものが入ったために消えた、ならわかるのだが、その消えた時間枠で、訳分からん映画をやっている。矢張りえげれすのテレビ事情である。これが日本なら、直ちに「投書もの」になりそう。野球中継で時間が伸びたくらいで問題になるくらいだし。こちらのビデオで、「毎週何曜日の何時」などの予約設定項目は意味が無いのではないかと思う。


さてさて、ビーンは兎も角、まずは、「You've been framed!」。これは、視聴者から寄せられたおもしろ可笑しいビデオを流すというもので、まぁ、「さんまのからくりテレビ」みたいなものかな。


「ブラインドデート」は、「パンチDEデート」とほぼ一緒である。これについては、相当ネタがあるんだけど、書けないことも多い(笑)。


で、「Stars in their eyes」である。これは、5人の一般人が出てきて、有名歌手に似せて、歌う番組。ただし、日本の「物まね」みたいには、全然似ていない。見た目の「似せ」が重要らしく、歌い方の「似せ」は、そうでもないらしい。言ってみれば「出オチ」である。


格好とメークは、彼らが最初に登場し、一旦下がってから施されるらしい。再びステージに上がる時には、一応「それらしく」なっている。司会者の紳士は、最初に彼らを聴衆に紹介し、多少話をし、その後、彼らは、にこやかに、手を振りながら、舞台裏に、下がる。テレビだと、映像が編集されて直結しているけれども、そんなに一瞬で衣装を変えられる訳はないから、実際には、多少ブランクがあるんだろう。兎に角も、彼らは、再び笑顔で、ステージに登場するのである。


この辺の「身の処し方」は、いつも折々に思うけど、矢張り欧州人だなと思う。彼らには、「社交性」というものが、知らず知らずのうちに、身についているのだろう。日本人なら、ああいうさりげない笑顔というのは、出来ないに違いない。


そうやって、5人がそれぞれ歌い、最後に聴衆の投票によりチャンピオンが決まる。チャンピオンがその後チャンピオン大会に出てデビューが決まる、というような、まるで「のど自慢」系のルールがあるのかどうかは、まだ定かじゃない。ただし、今日の出演者の話を聞いていたら、一人が曰く、「ちっちゃい頃から出たいと思ってた」と言っていた。もしかすると、えげれす人の、「心の『のど自慢』」に当たるのかも。
 


今日の一人(NO.3)は、なかなかnice guy。客席には、可愛い女性もいて、彼曰く、

 


「僕が14、彼女が13のときに知り合ったんだ。1996年に結婚して、今では子供もいる」

 

と言っていたけど、歳は23らしい。割りとカッコイイ系。
 

「中学生で知り合った?!杉田かおる鶴見辰吾かい」
 

ブツブツ言いながら、僕は見ていた。
 

鶴見辰吾は牛乳を配達していたけど、奴は、羊でも追いかけていたにちがいない」
 

などと関係ないことを考えながら、何を歌うのかのクダリを聞いてみると、まさかの、
 

「フィルコリンズ」
 

ときた。この、カクテルみたいな名前の人は、勿論名前は知っているけど、顔がいまいち出て来ない。髭だよな?違ったかなぁ?
 

まぁ、日本で言うなら、さしづめ、
 

フランク永井
 

くらいの位置付けか。
 

シンゴは、愛想良く手を振りながら袖に消えた。・・・で、次の瞬間、衣装を変えて出てきたシンゴを見ると、
 

「おお。こんな奴おった」
 

と、瞬間的に深い謎の納得を与えるミテクレに変貌していた。そして奴は、衣装のみならず、髪型も似せさせられていた。
 

確かに、フィルコリンズはこんな奴なんだろう。実物の画像はさっぱり蘇らないけれども、それでも異様に納得できるようないでたちなんだけれども、謎の納得のコアは、ヤツの髪形、つまり「微妙ハゲ」なのであった。
 

ハゲシンゴは、ムーディーに、フィルコリンズの歌を歌う。フィルコリンズってムーディーな人なのね…。やっぱりフランク永井で合っているやん。
 

奴の歌は相当上手いんだけど、僕は、どうしても、髪を見てしまう。誰かに似てるとずっと考えていたんだけど、はたと気がついたぞ。
 

関西人以外は恐らく知らないと思うけど、吉本の若手漫才コンビの「中川家」の礼二にそっくりなのである。それも、礼二がよくやる「レッツゴー三匹」の逢坂じゅんの物まね姿にそっくりという、何だかとってもややこしい状況なのである。
 

「そういや、『じゅん』もキてるわな」
 

頭を注視しながら、僕はしみじみ思った。きっと「じゅん」氏も、遠くえげれすの地で、名前を思い出す留学生がいようとは、思いもつかないに違いない。
 

ハゲシンゴジュンは、ムーディーに、うっとりと歌う。僕はますます、画面に釘付けになる。しかし、改めて思ったのは、
 

「奴は…あまりに似合い過ぎる」
 

若干23歳。いくら結婚しているとはいえ、いくら子供もいるとはいえ、そして、いくら、えげれす人にはハゲが多いとはいえ、このシックリ感、なんぼなんでも早過ぎる。違和感ないのが違和感ありすぎる。きっと、何年後かに、この時の録画を見ながら彼らが食卓を囲み、

 

シンゴ「おとうちゃんはな、昔、テレビに出たことあんねんぞ。ほれ」
子供「髪の毛、今とおんなじ!」
嫁「Oh! God!!」
 

なんて微笑ましいんだ。
 

客席の投票によって、ハゲシンゴジュンは、チャンピオンに選ばれた。彼は、ハゲたまま、再び舞台に上がり、ハゲたままもう一度、ムーディーに、うっとりと、目を閉じて、歌った。
 

「ジュンでーす」
「チョウサクです」
「みなみはるおでございます」
(ハリセン)バン!
 

レッツゴー三匹を見たくなったぞ。