えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【旧】えげれす通信_vol24:男女の玄妙 (28/06/1999)

キースは、8月から大阪に住むことを希望しているえげれす人であり、その関係上、「関西弁&英語の交換レッスン」をしている人なのだが、毎回、結構なネタをくれる。

 
えげれす人の名前は、種類が少ない。「キース」っていうのは、

 
日本人の「太郎」
犬の「ポチ」
猫の「タマ」

 
くらいか、もうちょい下くらいのレベルだと思うんだが、ここへきて、ややこしい事実が明らかになった。

 
彼のファミリーネームは「リチャードソン」だそうだ。

 
我が人生に初めて登場した「キース」は、高校の教師である。その「第一キース」は、Native英語教師として我が高校に来ていた(ファミリーネーム不詳)。「第二キース」は、ローリングストーンズの「キース・リチャード」。「第三キース」が、うちの学部のトップである「キース・ジャクソン」。ちょっとずれるが、うちのCultural Studiesの先生は「マイケル・リチャードソン」。そして関西弁キースは「第四キース」であり、「キース・リチャードソン」だという。

 
マイケル・ジャクソン」も、そのうち現れるに違いない。

 
件の「関西弁キース」は、なかなかいい奴である。彼は、大のオリエンタルファンなんだけど、そのきっかけは、彼が初の外国旅行で香港に行った時のエピソードにあるという。彼の地でワインをこぼしたねぇちゃんが、ひどく恐縮したらしく、そのことにいたく感動したらしい。何とも憎めない奴である。彼曰く、

 
「English women never do like that」

 
うむ。確かにその通りには違いない。

 
その彼と、日英文化比較をするのが楽しみなんだけど、先日は、ちと重たい話題になった。

 
えげれすはご存知の通り、厳格な階級社会である。ただしインドみたいな明らかな階級差別はなく、労働者階級の人々も、自分の階級に自信を持っている、という。上を羨むでもなく(時には険悪になることもある)、それぞれが自立している感じ。昔はパブの入り口まで違っていたくらいだ。

 
ただし、「しゃべり」が決定的に異なるらしく、一度しゃべると、その人の階級が何なのか、すぐにわかられてしまうらしい。差別というほどのものでもないので、「バレたらまずい」という感じではないのだが、それはそれとして、「わかられて」はしまうらしい。ちなみに「しゃべり」には、大阪弁と東京言葉のような「訛り」の違いもあるため、階級別アクセントと、地域別訛りとが、合わせ技となって繰り出されるのが、えげれすの「しゃべり」事情らしい。

 
余談だけど、スコットランドイングランドの確執(しばしば一方的)も健在らしく、イングランド人がスコットランドの、特にパブに入るときには、しゃべると自分がイングランド人だと見破られるから、なるべくしゃべらないようにするらしい。

 
ある種の社会階層によっても、英語は区分される。「クイーンズイングリッシュ」「BBCイングリッシュ」「オックスブリッジイングリッシュ」などなど。

 
キースの兄貴が嫁(にしようとする女性)を家に連れてきたとき、彼女が、Working Classではなく、Middle Classだったことは問題になったらしい(彼の家は、Working Classである)。

 
彼は、

 
「彼女は、クイーンズイングリッシュをしゃべるのよ。ふっ。」

 
と自嘲気味に言っていた。曰く、スノビッシュなんだと。

 
更に、リチャードソン家の困難は続く。今度は妹が男性を連れてきたが、彼はBlackだった。これに反対をしたのは、彼の親父さん。家に、黒い血を入れたくないんだそうだ。

 
いやあ。重たい話だねえ。重たいけど、これが現実なんだよねえ。

 
実際、えげれすでは、アメリカほどには、色による差別は激しく無いと思うけれど、実は、潜んでるものも結構あるんだなということが分かった。気をつけてみると、社会的というか、公共性を持っているというか、そうしたところでは、必ずその配慮が為されているのがわかる。

 
例えば、スパイスガールズ然り、テレタビーズ(子供向けぬいぐるみ番組)然り。CMで、子供が何人かで出てくる場合然り。全てに、ブラックが配置されている。

 
そうではあるものの、家庭レベルでは、なかなか複雑なんだなと思った。僕が、

 
「もしキースが親父の立場で、娘が連れてきたオトコが、ブラックの場合と、ミドルクラスの場合では、どっちが厭か?」

 
と聞いたら、彼は物凄く考え込んでしまった。

 
また、今回は、「婚姻」の話から「男女」の話へと話題が移り、えげれすのカップルが「致す」ときには、ラブホというものが存在しないこの地で、どうしているのかという答えも導かれた。僕としては、非常に満足のいくミーティングであった(笑)。

 
日本のネタでは、酒場と言えばパブしかないこの国とは違うんだぞという事例を、結構詳しく解説して差し上げた。彼は酒飲みなので、かなり感動してくれた。しかも、僕と同じで、基本的に、クラブとか、音楽ガンガン系のところは嫌いらしく、ショットバーに興味をしめしていた。

 
玄妙なる英語表現の多くを学べるのがこの会合の良いところである。

 
「...But, English girl doesn't make sound.」

 
うむ。「・・・」の箇所は省略するけれども(笑)、噛めば噛むほど、味のある表現である。

 
今回は、重たい話始まりで、最後はかなりロークオリティ話に落ち着いたんだけど、キースは、日本の「混浴」話に、相当興奮していた。

 
では。