えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【旧】えげれす通信_vol23:転がる石 (16/06/1999)

週末は、英国フットボールの聖地「ウェンブリースタジアム」で、ローリングストーンズのコンサートがあったので行って来た。

 
僕は元々、コンサートの類には行かない方である。ましていわんや洋モノなど、考えたこともなかった。しかし、先般、大阪ドームでのストーンズコンサートに故あって行くことになり、それがなかなか良かった。それ以来、ストーンズは、えげれすのバンドということもあり、何となく、気にしていた。

 
特に、周囲の院生を中心にストーンズファンが多かったので、話を聞いたり、CDを借りたりしているうちに、興味が沸いてきた。

 
最初、ガンガンのロックだと思っていたけど、そういうわけでもない。鋲だらけの色髪にぃちゃんねぇちゃんが客層なのかと思っていたけど、そういうわけでもない。全く知らなかったとはいえ、実際に参加したことで、僕の偏見は、悉く矯正されていった。まさに百聞は一見に如かず、であった。

 
大阪ドームでのコンサートは、僕にとって初の洋モノである。数少ない僕のコンサート経験は、だいたいにおいて、谷村とかそのあたりで占められている。目の前にガイジンさんがいるのを不思議な感じで見ていたんだけど、いわば「老人たち(笑)」が、汗を流して、舞台を駆け抜ける姿に、感動を覚えた。中でも、独特の威光を放ってギターを弾くキースの姿は心に残った。

 
その、えげれすが誇るバンドが、何と、倫敦のウェンブリーでコンサートを開くという。

 
日本で喩えるなら、

 
美空ひばりが武道館に立つ(ちょっと違うか)。
ノモが藤井寺で先発する(なんか違うか)。
岸辺シローがルックルックに復活(全然違うか)。

 
兎に角、そのくらい(どのくらい?)のインパクトがある、彼らの今回の凱旋帰英。常に世界のツアーを継続している彼らなのだ。かくして、テレビでも、何度も特番が組まれ、えげれすでは相当の話題になっていた。

 
チケットは3週間前位に手配したんだけど、最初、売り切れと言われ、その後、大丈夫と言われた。その際のチケットは、「席」ではなく「スペース」のものだと言われた。しかし、なんとか確保はできた。

 
コンサート当日は、結構な寒空であった。ウェンブリーに向かう地下鉄メトロポリタン線には、それと分かる人々がたくさん乗っている。

 
ウェンブリーには、かねがね、行ってみたいと思っていた。フットボールの数々の大試合が開催された場所である。駅を降りると、まっすぐに、道が伸びている。おお、カッコイイぞ。

 
開園16:30。開始18:30。何でそんなに早く開けるのかな。とりあえず16:30過ぎに着いた。駅からの道は、人だらけ。警察が人員整理をしているんだけど、彼らは皆、騎馬警官である。

 
馬は、あらゆる通行人に体を撫でられるものの、それでいて、無関心を装っている。というよりも、いちいち反応せず、泰然自若の風情である。相当によくできた馬たちである。騎馬警官というのは、なるほど、こういうものなのか。重心が高いから、遠くまで見渡せるしね。

 
入口には既に、かなりの人間が並んでいる。僕は、ビールを買おうと出店を探したけど、アルコールは売っておらず、周りにはパブすら見当たらないのであった。

 
仕方がないので、その辺をうろつき、ぶらぶらしてから、18:00過ぎ、入場した。しかし中に入ってみると、ちゃんとビールを売っている。「アルコール禁止」かと思ったのに、そうではないみたい。

 
入口のところには、色々なものの禁止が書いてある。

 
ダーツ禁止

 
いやいや、そんなもん、誰がどこでどうやって、すんねん。

 
会場は、既に7分の入りである。矢張り思ったとおり、このチケットの席種は「自由席(しかし椅子はあった)」であり、しかも相当遠いところしか空いていなかった。しかし、でかい画面があるので、まぁ大丈夫でしょう。

 
アリーナの最後部には、ビールその他を売る「店」があり、パブと見間違えるほどの多くの人々が、パイントグラスを片手に、立って飲んでいる。えげれす人の「立ち」飲み好きは、今に始まったことじゃないけど、「あなたたち、コンサートに来ているってこと、理解していますか」と質したくなるほどに、パブと変わらない風景である。

 
18:30。小雨混じりの中、ゲストで前座のシェリルクロウが出てきた。ゲストっていうから、一寸出るだけかと思いきや、何と一時間も歌った。前座っていうから、コモノかと思いきや、まあまあの(いや、もっとか?)知名度の人が出てきた。この辺はさすがのストーンズさんってことかな。

 
その間、客席へ向かう通路(つまり外から入場してくる人たちが通る道)は、人が途切れない。また、各席から、例の「アリーナパブ」へ向かう人の波も、これまた全く途切れない。またまた、パブ前の「立ち飲み集団」も増える一方である。

 
・・・然し、シェリルクロウは、絶唱し続けている。

 
時間にルーズなえげれす人とはいえ、19:30になっても、まだ入場してくる人たちは、いったいどういう心境なのか。考えると可笑しくなる。悠々と入って来て、片手にはパイントグラス(笑)。

 
19:30過ぎになり、聴衆の関心を得たんだかどうなんだか、かなり微妙な、何だか可哀想なシェリルクロウが下がった。そしてそこから、セットの作りなおしが始まった。まだ、ストーンズは出て来ない。

 
20:00。照明が暗くなり、例のでかい画面が現れた。予定通りなのか、予定などないのか、わからないけど、兎に角始まったらしい。高緯度の倫敦、まだ外は全然明るい。

 
「4人がこちらに向かう映像」「廊下を横一列で、少し俯きながら歩いてくる白黒の映像」「エレベーターに乗るところの映像」「タバコを咥えて歩くキースの映像」、この映像中継は、物凄くカッコ良かった。観客は、盛りあがる盛りあがる。

 
ウェーブが起こるのと、彼らの登場は、ほぼ同時であった。僕は、歌の名前は知らないのだけど、聞いたことある曲でオープニング。始まったぞ。

 
大阪ドームのツアーと同じものなので、構成もほとんど同じだったけど、えげれすで見るのはさすがにコーフンする。普段はシャイなえげれす人たちが、結構絶叫していたのが可笑しかった。

 
ミックは相変わらず、舞台を駆け回り、キースは、キーホルダー(笑)を髪に一杯ぶら下げてゆっくり舞台を移動する。ロニーは、タバコを咥えつつ、カメラをからかう。チャーリーは、生真面目に、ひたすらドラムを叩く。年寄4人衆は、カッコ良いぞ。

 
最後のアンコールは、お決まりの「サティスファクション」。終わったのは、23:00近かった。

 
熱気覚めやらぬ中、ふと我に返って、例の「アリーナパブ」を見やると、店自体は既に閉まっているのに、パイントグラスをもった人たちが、依然、変わらない姿で、飲んでいた。

 
うーむ、矢張り、えげれす。