えげれす通信、再び

20年ぶりに復活しました

【新】えげれす通信2023_vol04:古都すぎるダーラム編 (15/02/2023)

2/15(水)。
初めてゆっくりと過ごせた日でした。


これまでは、毎日、どこかへの移動があったけど、本日は、師匠邸で論文についての議論をした後、犬の散歩に一緒に行き、教会の用事を済ませに一緒に行った。本日のタスクはこれだけ。

 

ダーラム大学人類学学部は、僕のいたころの場所から移動したらしく、今の建物では、他の学部と同居しているらしい。そしてその他学部では、

 

「構内は犬禁止」

 

なんだそうだ。

 

我が師匠は、当時、研究室に犬を連れてきていた。「犬禁止」ではなかったからなのかどうなのか、そもそも大学において、犬は、「禁止されるべき対象」なのかどうか、少なくても日本人の感覚では、根本がよく飲みこめない。日本の大学で、研究室に犬を連れてくる教員ってのは、ちょっと想像がつかないw


しかし我が師匠は、敢えて嫌いな言葉を使って表現するならば、

 

フ ツ ー に連れてきていた

 

わけですな。

 

それと大事なことがもう一つある。

 

ワタクシ、幼少時代に、犬に軟禁されたオソロシイ経験があり、犬は怖いのです。

 

今は全然いなくいなったけど、学部のころ、大阪の街には、結構ないきおいで、野良犬がいた。彼らは、吠えるし、追いかけてくるし、ワタクシのトラウマを増幅させまくってくれた。


吠える犬ってのが一番怖いわけよ。犬は賢く、躾がなされれば、素晴らしい社会性を身につけられる、とは言うけれど、日本の犬はなかなか信用できなかった。だから、犬はなるべく避ける人生を歩んできた。

 

そのワタクシの師匠が、「フツーに犬を連れてくる人」だったわけだ。


これは困った。

 

ところが、えげれすの犬は、完璧な躾を受けていて、なんというか、信用がおけることが、徐々にわかってきた。吠える時は、理由があるわけで、なんというか、合理的行動をとっていることが次第にわかってきたのであった。僕の犬トラウマは、師匠の犬で、ある程度、克服された。

 

昔習った国語の教科書に、「日本の犬と英国の犬の対比」の話があって、えげれすの犬は躾が完璧だという知識が残っていたのも、トラウマ克服に一役買ったのかもしれない。

 

ところが、人類学学部が移動して、他学部と共用になった現在、他学部側が、

 

「犬禁止」

 

を打ち出した。それで現在は、犬を連れていけなくなったと言って、師匠はぼやいていた。

 

もう一度言わねばならんな。

 

・・・犬って、「持ち込み禁止されるべき対象」なのか??

 

ともかくも、現在は、かつての犬の次の犬が師匠邸にいる。彼女は実に実に社会性があり、理不尽なことは決してしないので、まったく信用できる娘である。


一言も吠えずに、じっとおとなしくソファーに座っているのだが、たまに、突然、吠えだす。なんだ?と思うと、玄関に人が来ていたりするわけだ。なんていうか、テレビで見る典型的パターンのやつだよね。

 

そして本日は、我が人生で初めて「犬の散歩」なるものに同道した。と、同時に、ダーラムのすばらしさを改めて知ることにもなった。

 

最初は、タダの道路を散歩していて、ていうか、「犬の散歩」って、そういうものだよなと思っていたら、急に横道に入った。えげれすには、そこら中にくまなく、「散歩道(public footpath)」というものが存在している。我々が入ったのも、どうやらその類のようだ。

 

急に散歩道

 

すると、さっきまで、通常の道路(というか住居地帯)だったのに、あら不思議、いつのまにか、何やら丘になっているぞ。
ん?すでになんだか山っぽいぞ。
え?あっけなく牧場の中に入ったぞ。

 

牧場によくある「cattle grid(家畜脱出防止格子)」

 

なんで、住宅地から速攻、牧場になるのよ。気を抜くと、奴ら(羊)がすぐにいるカラクリって、こういうことなのか!犬の散歩中に奴らに出くわす、とか、日本じゃありえないでしょ。まさにそれを実地で体感して、僕は深く納得してしまった。

 

さらに進むと、そこはなんだかすでにとっても丘陵地帯になっていて、片側には、なんだかすでにとっても崖みたいなのがあって、その眼下には、なんだかすでにとっても川がゆったりと流れていて、そこからの景色は、まったく素晴らしいものになっていた。中部以北のイングランドの特徴は、「丘」なわけで、まさしくそれを体感した。

 

すぐ羊
すぐに絶景

 

 

眼下に絶景

 

いや、日常的な「犬の散歩」と組み合わせるものじゃないでしょ。どちらも「わざわざモノ」でしょうが。

 

もう一つ、「犬の散歩」につきものの、知識としては知ってるけど、しかしながら経験したことはないものの一つが、

 

アレの処理

 

である。

 

昔、ヨークシャーあたりの丘陵を散歩したとき、奴らがうじゃうじゃいるその爆心地みたいなところを歩いたら、遠くから見るのと近くを歩くのとでは大きな違いがあることを知った。

 

遠くから見れば、ラブリーなんだけど、近くに行くと、アレだらけなんだな。足の踏み場がないとはこのことだ。百聞は一見に如かず、とはよく言ったものだ。

 

しかし、犬の場合は、そうはいかない。日本でも、その筋の世界では、いろいろと議論や問題があるらしいじゃないの。

 

犬が立ち止まり、師匠も立ち止まった。

 

今までだって、犬は何度も立ち止まってたんだけど、師匠は別に立ち止まらなかった。しかし「その時」は、驚くべき同期感で、彼らの行動が一致した。

 

むぅ。
そういうことなのね。

 

コトが終わると、師匠は袋を出してアレを入れた。うんうん、見たことないけど、聞いたことある。

 

しかし、次の刹那、師匠はその袋を道端に置いた!

 

え?
ええ?
えええ?!

 

そういうこと、して良いの?
そういうこと、しないのが、えげれす人なんじゃないの?
なんだ、何かそういう回収公共サービスみたいなのがあるの?!

 

若干の不信と不安を持ちつつ、さらに道を進む。

 

てっぺんに着くと、そこにはベンチがあった。

 

この、「ちょっと良きところには、すぐにベンチ」というのも、えげれすの素晴らしいところである。公共とは何なのか。社会とは何なのか。この難しい問いも、えげれすで暮らせばすぐに、その答えがわかる。さすが、「社会の作り方レシピの考案者を輩出した国」だ。

 

師匠によると、ここは、かつて、貯水池(reservoir)だったらしい。川から水を引いて、水がめにしていたらしい。

 

かつての貯水池


そして、この場所から後ろを振り返ると、えげれす三大聖堂のひとつ、あの、ダーラム大聖堂(Durham Cathedral)の絶景が!
・・・うわ、これは予想外だったぞ。

 

 

すぐ聖堂~
すぐに絶景~

 

 

なんということでしょう!

 

いやあ、気を抜けないわ。。。

 

すると師匠と犬の動きが、再びシンクロし始めた。僕は何が起こるのかさっぱり予測がつかなかったのだが、犬は既に、何かを待ち構え、その臨戦態勢に入っている。今まではユルく歩いていたのに、この突然の変化はなんなんだ?

 

おお!
見たことあるやつ!

 

ひつじのショーン」のビッツァーを思い出した

 

ボールらしきものを投げる師匠と、投げる前から既にダッシュモードに入っており、投げる一瞬前の段階でダッシュを始める犬。この、「投げる一瞬前」というタイミングが絶妙だった。「投げたのを見てからダッシュ」じゃないんだね。「今から投げるのね」って、投げる前に感じて、予測のもとにダッシュをするのね。すげー、なんだこれ。

 

ひつじのショーンで犬のビッツァーが、普段は羊を世話するニンゲンの側として合理的に行動するのに、「投げるヤツ」を見た瞬間すぐにイヌの合理性を取り戻し、コーフンして臨戦態勢に入るシーンが時々出てくるが、まさにアレだった。
(因みに本日の議論のテーマは「合理性は唯一無二ではなく、社会や個人の文脈の中で、多様に存在するのではないか」というもの。今回は「出張」ですよ)

 

「ここで投げてください」というためだけにあるとしか思えない場所(笑)で、犬は思う存分、この「見たことあるやつ」を満喫していた。

 

大聖堂バックの「見たことあるやつ」
・・・これも絶景やないか

 

絶妙すぎる場所

 

すぐ「見たことあるやつ」~♪
すぐに絶景~♪
(字余り)

 

 

ていうか、このCMソングって、なんだっけ??チキンラーメン

 

帰り道、師匠は、例のブツ袋を回収した。なーんだ、帰りも通るから、ただ置いておいただけだったのね。

 

ところが、えげれすの懐の深さを見たのは次の瞬間だった。これまでもきっと何度も目にしてはいたんだろうけど、気に留めてはこなかったから記憶のストックには無いもの。この赤いポストは、「ブツ用箱」なんだって!そういうシステムが成立しているんだねえ。


さすが、公共性の国。
さすが、犬の国。
深く感服いたしました。

 

シャア専用ザク、みたいな、ブツ専用ポスト

 

帰宅後、次に、近所の教会の用事に同行した。なにやら、明日、近所の会合があるらしく、そのための準備に必要なものを運ばねばならないらしい。一応、そのように聞いたけど、僕は、なんとなく、「その辺にあるちょっとした教会」だと思っていた。

 

しかし、着いて、中に入ってみると、それは尋常じゃないシロモノだった。

 

裏口なので余計に「ちょっとした教会」っぽい

St. Oswald's Church。最初の教会主(Lord)は、西暦1150年だそうで、その名前が刻まれている。

 

イカツすぎる教会

 

おいおい、イイクニツクロウ、もとい、今は、イイハコツクロウの時代よりも古いじゃないの。なんでそんなイカツいシロモノが、その辺にサクッとあるんだよ。まあ、ダーラムは、エゲツない歴史的な町だから、それはそうなのかもしれないけど。でも、だとしても、「フツー」に登場しすぎでしょ。

 

 

すぐ古い~♪♪
すぐに古い~♪♪
(これだと字数が合うね)

 

 

というわけで、本日は、実にゆったりと、古都ダーラムを堪能しました。